表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
19/202

17:バンキッシュ・フォン・キャスタインは優秀です

 バンキッシュ・フォン・キャスタインがリヴェンの元へと辿り着いたのは彼女の判断力と彼女の持つスキルが成し得た業である。


 ユララ・マックス・ドゥ・ラインハルトが率いる遺物を身体と接合した人間達の部隊の二人と合流し、魔力発生源である隠者の森へと入り、隠密行動で発生源近くである廃品回収隠者の集落を一つ一つ回っていく。

 ユララ隊の一人が元王国軍の教官であったガラルド・ヴェンジェンスが率いる集落に異変があると気づいた。


 ガラルド・ヴェンジェンスが率いる集落にはヨーグジャ部族の長であるドズ・ズールが集落を制圧していた。

 バンキッシュ含め、ユララ隊の二人は息を潜めて事の成り行きを見守る。


 ドズはリヴェンと言う男を探している様子であり、その所在をガラルドに訊ねていた。

 ガラルドは知らないとの一点張りであった。

 この集落にはイリヤという少女がいるようなのだが、その少女は見当たらずに、ドズはそのことについても訊ねていた。

 そこで老婆の表情が変わったのをバンキッシュとドズは見逃さなかった。


 ドズは入念に訊ねた後に何も行動を起こさずに集落を後にした。

 リヴェンの住処は泉の近くにある洞穴らしいが、そんな洞穴は見つかりもしなかったらしい。


 ドズの言い分から考えるにリヴェンという男が求めている魔力発生源と思われる。

 ヨーグジャ部族の動向を追うよりも、この男を追うのが先決であった。

 その男が国外へ廃品回収隠者の少女を連れて逃げるなんて考えられない。しかして王国内へと侵入するのも考えにくかった。まだ隠者の森にいる可能性も捨てられない。


 バンキッシュは集落へと侵入し、老婆以外に誰にも気づかれずに、老婆から口実手段を問わず、イリヤとリヴェンの話を聞き出した。

 イリヤという少女はどこで見つけたのか、めかし込んだピンクの服とリボンのついた帽子を着用して出掛けた。手荷物は無し。ならば王国内が妥当だろうと踏んだ。


 隠者の森から一番近い検問所で異質な魔力反応を見つけた。

 バンキッシュは自分が持つスキル逸嗅覚で相手の形や病気や魔遺物の情報までもをにおいで判別することが出来る。

 強力な魔遺物を使えば魔力がそこに残ることが多い。その魔力をスキルで吸い、判別し、特定した。

 どうやって王国内へと侵入したのかは知らないが、バンキッシュは彼らの追跡をする。

 郊外を歩きで移動し、目抜き通りの地図を確認しているあたり、王国へと来るのは初めて。噴水広場でまた異質な魔力があり、そこから酒場へと歩きで移動。

 そこではたりと臭いは消えた。少女を連れて日が落ちた郊外を移動するとは思えないので、近場の宿屋を探す。滞在しているであろう宿屋の周りには男の魔力が充満しており、見つけるには時間を要さなかった。

 宿屋の店主に事情をかいつまんで説明し、イリヤとリヴェンが宿泊している部屋に入る。部屋にはイリヤと思われる少女が一人で寝ていた。リヴェンはいない。

 ここからは歩いて探すよりも、ここへ帰ってくるであろう男を待つことにした。


 そして接敵した。


 二人が去った場に遅れてやってきたバンキッシュは目抜き通りで白目を向いて倒れて酔っ払いや物音を聞いて外へと出てきた近所の住人に囲まれているユララ隊の部隊員を尻目に噴水広場へと足を踏み入れる。


 割れた地面を見つけて、そこに残っている魔力を嗅ぐ。

 先刻とは違う鼻腔を刺激するようなチクりとした臭いと、甘さの後に喉がギュッと閉まるかのような苦い味がした。こんなにも複雑な魔力を嗅いだのは人生で初めてだったバンキッシュは表情を曇らせる。


 あの男は体に魔遺物を取り入れたと言っていた。

 しかもそれが一国を揺るがす兵器並みの魔力を保有している。私の弾丸を素で受けきって笑顔で立ち上がり、ユララ隊を一撃で仕留めているあたり、低級な遺物人間とは違う。

 それに他国の遺物人間だとは考えにくい。あの男の背中にはポッカリと穴があった。魔遺物の力か何かで隠していたようだが、付けている眼鏡型魔遺物の力で、不自然さは見抜けていた。

 遺物人間を使用しているのは中央遺物協会の援助を受けている国。その国の中でも先進国である国。考えられる国は二つだが、その二つの遺物人間とは似ても似つかない容姿。


 ではあの男は何なのか?男の言うとおりであれば自分の身体に魔遺物を取り込んだ狂人である。

 男の力が未知数な上に放置するのは不味い。既に騒ぎとなった時点で騎士団と軍に男の事を話さねばならない。そうすれば隠者の森が出所であることがバレる。

 それも不味い。今度こそ王を説得することが出来なくなる。

 そうなれば結果私が責任を取らされる。貴族階級の剥奪はおろか国外追放もあり得る。親はどうでもいいが、弟や妹が路頭に迷うのは御免だ。

 糞みたいな国に、糞みたいな親に、糞みたいな柵。それらを弟や妹達に実感させない為にここまでやってきた。これまでも、これからも私が受けてきた屈辱や雪辱を弟と妹に味合わせない為にも失敗できない。

 ならば私が今すぐにやることは一つ。私の身体がどうなろうとも、あの男を捕らえるまで。


 バンキッシュは騎士団の制服の重要ポケットに入っていた外側に棘があしらわれた指輪型魔遺物を右手の中指に付けた。弟と妹と過ごした楽しい記憶を瞼の奥で焼きつけながら、魔遺物を起動した。


感想、評価等々お待ちしております。生きる糧になります。

ブックマークして頂けると幸せを感じます。

何卒宜しくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ