181:浅からぬ因縁
ワタ=シィとリヴェンの対峙よりも日にちは戻り、場所はエルゴンへと移り変わる。
「おいおいおい、なんだなんだぁ!めっちゃ祭りじゃねぇかよ!」
三日かけてエルゴンへとやってきたカイとガストは巨人、大蛇、巨鳥、大蛸、龍達をエルゴンに入れまいと前線で戦闘しているギルド員達の中に紛れていた。
「祭りではないでしょう、命の危機ですよ」
「ビビってんのか?これくらい日常茶飯事だろう?」
「こんな日常あってたまりますか」
運命操作で飛んでくる岩や石を避けつつ辟易しながらガストは言う。
「どうするんですか?成り行きで戦闘に参加していますが、あの神獣達を蹴散らす術でもあるんですか?」
「まぁこのままならジリ貧で終わりが来るな。
キュプレイナが本気を出せば一体くらい止めれそうだが、それは後がなくなる。
他の奴らには足を止めてもらって、俺とお前でなんとかする!」
四本腕を背中から生やして岩を壊し、近くにいるギルド員を守りながらカイは力強く言った。
「ピリッと来たぜ。ちょっと飛んでくる」
「は?何を意味を分からないことを」
人が飛ぶなんてありえない話、お笑い種だ。
だがカイは脚に力を入れて垂直に跳び上がった。しかもそれは普通の人間の垂直跳びとは桁外れの跳躍。一気に空高くへと飛び上がり、地上から見れば豆粒ほどの高さまで行ってしまった。
ガストは鼻で笑うしかなかった。
カイが飛んだ先には白龍がおり、白龍は目の前に現れた適性存在に向かって、体内の炎袋から作られた炎を吐いた。
カイは炎を掴み、体を捻って炎の勢いと跳躍の勢いで白龍の背中に乗った。
「よぉ、何やってんだよ」
背中に乗っているのは変わらない眼鏡をかけたシークォと、丸い体と不健康な表情が特徴的なタカラダ•ハジメが乗っていた。
「何をやっているって?移動中だよ」
カイの問いに答えたのはシークォだ。
「ん、お前がシークォか。んでハジメ、お前やっぱスゲーな。俺の精霊達でさえ本性に気づかなかったぞ」
「お前達が自分たちのことしか考えられない馬鹿で良かったよ。一番の懸念はお前達だったからな」
「おいおいおい、久しぶりの再会なのに随分な言い草だな。
やっぱりお前にとって人間は使い捨ての生き物か?普遍神オーレ」
「あぁ、お前達人間は吐いて棄てる程いる。稀有な存在等この世にはいない」
カイは頭をポリポリと掻いて後ろにいる精霊から当てられた怒気を逃していく。
勇者、魔法使い、錬金術師、神官。これらが怒っている。
世界を救う為に魔神の使徒であった魔王を倒し、天神の使徒であった征服王をいなしたのにも関わらず、天命を全うすれば理の糧とされてしまい、一生現世に縛り付けられた。
道具であった。ずっとずっと普遍神オーレの道具として扱われていた。
程よく使われ、体良く捨てられた。
だからこそ理を破壊して、このオーレに使われる世界を終わらせたい。
勇者一行の最後の英雄譚である。
「ん、よっしゃ、胸糞も悪くなったし、これ以上話すこともないだろうから、やるか」
そう言うと、シークォは興味なさそうに前を向いて、前にあったモニター類の魔遺物を弄り出す。
「やる気がない風を装っても俺はやるぞ」
踵を上げて白龍の背中の骨をへし折れる力で落とし込もうとした。
その瞬間にシークォとカイの間に黒い空間が現れた。
その黒い空間から、赤い籠手が現れる。次に真紅の胴が現れて、奇抜な兜をかぶった者が出現した。全身を黒い空間から抜け出すと、黒い空間は消えた。
甲冑の者は甲冑の奥にあるギラついた目でカイを見て、シークォとオーレを見てから、辺りをぐるりと見回してから自分が置かれた状況を理解する。
「うむ。貴様等とはやりあえんな。てなことで、貴様が俺の相手をしろ」
たったそれだけ。それだけの言葉でカイは臨戦態勢をとる。
いつものお気楽な態度は一切なし。背後の精霊が騒いでいる。
こいつはただの鎧武者じゃない。
正装に身を包んだ。戦衣装を着た鬼。なぜ今まで生きているのかが疑問な男。
征服王、織田信長だ。
「いいなお前。いいものを持っているな。お前のそれ頂くぜ」
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