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163:一時避難

「あぁ!リヴェン様!おかえりなさいまし!皆さん揃ってましてよ」


 事前に決めていた一時避難所はツィグバーツカ家であり、玄関前でそわそわとしていたミストルティアナが俺を見つけて駆け寄ってきた。

 走ってきた俺が一番遅い到着になったらしい。


「出迎えありがとうミストルティアナ。ボォクをよろしく」


 納品者ラックマンというスキルで自分の影の中に自分の持ち物を大きめのナップザックくらいの異空間に入れられる。

 そこからボォクを取り出してミストルティアナに渡す。


 最初は物扱いに不服そうだったが、最近はタクシー代わりと割きってくれている。


「蛇娘はひんやりしてて気持ち良いのー」


「ありがとうございますボォク様。転ばないように手を繋ぎましょうね」


 ボォクは信者であるミストルティアナの事を大事にしていて、ミストルティアナも信者なのでボォクを大事にしている。

 まぁネロの身体だからってのもあるのだけど。


 ツィグバーツカ家の中に入り客室まで行くと、ギルドゾディアックエイジの全員が揃っていたが、空気が重苦しかった。


 それもそのはず、イリヤがバンキッシュの胸の中で泣いていて、イリヤの頭を撫でて慰めていた。


 この悲しみようはガラルドが死んだか。それは、確かに堪えるだろうな。


「リ、リヴェンさん。ガラ爺が、ダントが」


「今は泣くといいよ」


 イリヤの頭を撫でてやり、客室のソファーへと座る。

 誰もが俺が話を切り出すのを待っている。


「さて、玉座を取り戻すのは後でいいとして、ユララことワタ=シィが天理教を使って世界の人間を巻き込んできた。

 シークォも動いているようだよ。ウィンとウォンはシークォの情報はあるかい?」


 簡易椅子に兄弟仲良く分けて座っているウィンとウォンに訊く。


「シークォの直接的な情報はないなぁ。

 ただ生き残ってる魔族間で今まで見ていなかった魔族からの接触があったらしいで」


 生き残った魔族はウィン達やラヴィアンだけでなく、豚人族や牛人族やエルフ族を確認していて、彼等に俺の存在を明かすと友好的に付き合ってくれていた。

 ただ戦闘には参加する気はない。特にエルフ族は戦闘を好まないので情報だけをくれる。


「接触?具体的には?」


「巨人族の女や。

 そいつが生き残った魔族に魔族の縁である土地、バランベラサスを奪還を手伝ってくれる仲間を募っていたようやで」


 バランベラサスは魔族発祥の地と言われる諸島の名前。

 今はカマランという日出の従国の土地だったか。


 巨人族の女ねぇ。

 バランベラサスに特別大事な物があるとは思えないが、行ってみる価値はあるか。


「エルフ族も最近巨人族の王を見たと言っていました。

 巨人族の王って亡くなったって話ですよね?」


 俺に紅茶を差し出しながらモンドは言う。


「ありがとう。俺が知ってる中ではね。どうなのシンクロウ?」


 紅茶を受け取ってから、入口の横で姿勢良く立っているシンクロウに訊ねてから口をつける。


「えぇ巨人の王は死んだとされています。

 真実を知るのは魔王リーチファルトだけですね。

 もしも蘇った、もしくは生存していたならば、かの王はオレ達側には付かないでしょう」


 シンクロウでさえも生きているかどうかは定かではないか。

 肉人のような魔遺物がある時点で巨人族の生き残りがいてもおかしくはないな。


「付くとしたらオーレ側かな」


 巨人族はルドウィン教の信仰者しかいないときく。

 だからワタ=シィ側につくことも、ボォク側につくこともない。


「騎士団やギルドの報告ですと魔物や巨獣も活発になっていますから、それも何かの予兆なのでしょうか?」


 甲冑は大きすぎて場所を取るので、頭だけをガストに持たれながらパミュラが言った。

 パミュラとカイからの報告で魔物の被害や巨獣の被害が頻繁に起こっているのを知っている。


「一応それの見解としては、世界に漂う自然の魔力が濃くなっていて、魔物達が強化されて活発になったとの見解だ。

 俺もボォクも自然発生する魔力を糧とすることができるから魔力が濃くなったのが分かる」


 魔結晶に蓄積された魔力よりも純粋な魔力を摂取できるスキルを得たので、濃度が低くない限りは魔力は尽きないだろう。


「魔物の活発化に天理教の暴動に巨人族の復活ですか。

 これら全てに神が絡んでいると」


 壁にもたれているガストが纏める。


「少なくてその三つだよ。カイ達は理の在処を見つけられたのかな?」


「いんや、さっぱりだ。

 グランベル達に訊いても自分達と同じ気配しか感じない…まあ進展なしってことだな」


 俺の対面に座るカイは親指を立てる。

 そんなカイをみて心に湧いた言葉を発する。


「何か隠してないよね?」


「何で隠さなきゃいけないんだよ。俺はお前に全面的に協力してるぜ?な、アマネ!」


「何で私に振るんですか!私は人の心読めませんよ!空気は読めますけどね!」


 自虐をするも、誰もツッコミを入れないので恥ずかしさで顔を赤らめて魔遺物の改良をする振りで下を向くアマネ。


「何となくだよ。何も隠していないなら、それでいいよ」


 勇者が嫌いすぎて直感的にカイに懐疑心を感じているだけかもしれないが、俺の直感は当たると自負している。


「してお主らどうするのじゃ?

 ワタ=シィの企みをどう瓦解させるつもりじゃ?

 余が手伝ってやらんこともないがの」


「先ずは外がどう動くかを待つ。それから俺達は動くよ」


 足早に動いてもイリヤがこの状態では全体の士気に関わる。

 根回しは既に終わっているし、準備期間は俺達も終わっているのだ。


 反撃はイリヤが落ち着いてからだ。


 三日程で落ち着くかと思うが、ゲーム開始までに傷心が治らなかったら無理やりにでも治すしかないな。

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