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159:ワタ=シィ

 ワタ=シィとは天から人々を眺め、献身的に祈り続ければスキルと魔術の素養を分け与える神である。その触前の他には滋養強壮、厄除け、安産、疫病からの平癒などがある。そこのところは神なのであろう。


 神であるからこそ、人からの信仰心は沢山持っており、人になったとしても信仰心を集めていた。


 ユララは俺に正体を明かした。

 今の今まで明かさなかったのに、だ。

 それが意味するところは正体を明かしても今後の行動に支障がないとの自信の現れ。

 こいつもこいつで策を練ってゲームに勝とうとしている。力任せなボォクとは違う。


「ワタシがリヴェンの介添神だったら、絶対に勝つ自信があったよ」


「なんじゃ?貴様が選んだ駒は弱いのかの?じゃったら楽勝じゃな!

 前回みたいに途中参加等狡い真似はしとらんじゃろうな」


「前回遅れたのは故意じゃないって言った。

 ワタシだってこのゲームを楽しみにしてるんだから。

 だってボォクやオーレが負けた時の屈辱的なあの顔を見られるんだから。今回も見せてもらうよ」


 ユララ、いやワタ=シィは挑発気味に笑う。


「万年負けとる奴が何を言っておるか。

 貴様はまた最初に負けてちっぽけな信仰心だけを保持しておれ」


 ボォクも負けじと煽るも、ワタ=シィには効いていないようであった。

 素体のユララが舌戦が得意なのだからボォクの勝ちようがないな。


「今日は挨拶だけかい?」


「そうだね。もう終わったよ。

 君達とオーレ達に挨拶をしている間にね。さてはてリヴェン、君に訊ねたい」


 終わった?他の出現しているワタ=シィが何かを話したのか?

 現状では知る術はない……か。余り良い予感はしない。


「何かな?」


「君は人を殺せるかい?」


 簡単な質問であった。だから戸惑うことなく答えてやる。


「必要であれば殺せる」


 法に触れなければ、ではなく。

 殺すことが必要と感じた時には人を殺せる。

 現に俺が指揮していた時は必要犠牲に団体に必要のない人間を犠牲者にしていた。

 団体内の目のつく場所で人を罵る奴。なまじ力があるせいで勝手に突出して味方の損害を出す奴。必要であれば殺した。


 そうすることで場を安定させていた。


 この行為はシークォにはバレていた。

 だから陰の魔王なんて異名が広げられたのかもしれない。


「必要であれば……じゃあ必要のない殺しはしないんだね」


「そうだな。それが俺だ」


 人は必要に迫られれば殺人を厭わない。

 歴史が証明してきている。殺せなかった人は殺されている。

 使いたくない言葉だが、それが普通だ。


「うん。想像通りだ。

 最後に。あの王女様。イリヤの前でも人殺しができるかな?」


 ワタ=シィの言葉の真意を導き出す。

 大切な人間の前で尊厳を失えるか。

 愚問であった。


「あぁ、殺せる」


 即答。これも想像通りだと言わんばかりに名一杯口角を釣り上げた。


「それでこそ相対相当できる人間だ」


 ワタ=シィが言い終わると消えてしまった。

 伝えたいことと聞きたいことだけして消えたな。


「なんじゃあやつ。何がやりたかったのじゃ?」


「宣戦布告。

 あとは、そうだね、自分が一番優位に立っているぞと両陣営に知らしめる為だ」


「なしてそうなる?」


「俺とボォクはユララの一件で力を出しているからバレている可能性は大いにあったから俺に当てをつけるのはわかるけど、オーレ側のことも把握していた」


「演技かもしれんぞ?あやつも狡猾じゃからの」


「俺はそういうのを見抜くのが得意だ」


「なんちゅう自信じゃて」


「ま、保険をかけるつもりはないが、相手も同じような性格だった場合は見抜く確率は下がるけどね」


「意思薄弱じゃの!」


 使い方が違うくないか?


 ともかく外にいたアマネにもう一度通信をかけて外のワタ=シィは何を言っていたのかを訊いてみるか。


「ええっと、なんでしょう現状確認でしょうか?だったら私は危機的状況に陥っていますよ!?」


「何があったか教えてくれるかな?俺達はただ挨拶されただけなんだ」


「えっ!あれを聞いていないんですか!?

 ちょっと待ってくださいね。話している時間がないかも――うわっ!こっち見た!こっち来た!ガストさん担いでください!私自慢ではないですが体力は無いですよ!」


「自慢にならないことを威張りながら命令しないでもらいたい!」


 悪態をつきながらもガストはアマネを担いで走り出す。

 一瞬だけ大量の人間に追われているように見えたが、外で何を発信したんだ。


「ユララ。あーワタ=シィは自身が神であることを明かしました。

 王国民はそんな与太話を信じる訳はありませんよね。

 ですがワタ=シィは信奉者全員に一つスキルと魔力増強を施しました。

 私にはありませんが、信者の人達が確認の為に使用し始めましたので真実味が帯びました。

 そこまではいいんですよ!そこからです。ワタ=シィは信者、天畔教の人に指示を出しました。

 残り五日で宗教戦争が開幕する。

 オーレ、ボォク、ワタ=シィを信仰する人間達の宗教戦争が。

 それに負ければあなた達に授けた力は失われる。

 それに勝つには異教徒を改心させるか、人道に反する人殺をするしかない。

 ワタシは改心も人殺しも是ともしないが、非ともしない。

 ワタシに委ねても良いし、自分の心に委ねても良い。

 ワタシも天から見ているだけではなく、この地で共に戦う。

 全てはワタシの子供達次第。

 では五日後に始まる戦争で合間見えましょう。

 と言って消えました!それからですよ。何を思ったか信者の人達私を追ってくるんですよ!

 私がルドウィン教のシスターだからですよね!

 改心して良いですか!はいっ!駄目ですね!寒気しました!」


 民衆の心を掌握したのではなく、民意に語りかけて、便利な世の中魔遺物中心の世界から便利なスキル中心の世界に戻すつもりか。


 だが普通なら反発しないか?人殺しの主格であったユララが言っても説得力がないだろう。

 そこまで盲信しているのか?天畔教のどっぷり浸かっている信者はそうだが、一般的な信者までもが行動を起こすのが早すぎる。

 洗脳しているとは思えないが……あぁ最近の世界の宗教間の状況や、ひりついた雰囲気はこれの布石か。


「ガスト、カイと合流してアマネを守ってくれ、もしも二人で守りきれないようだったら連絡してくれれば飛んで行く」


「ですって!守ってくださいね!守ってくださいね!あ!お父さんも守ってくださいね!ぎゃあ!石投げないで!石投げていいのは投げられる覚悟がある人だけですよ!」


 後ろからくる人々を説き伏せながら再び通信は切れてしまう。


 俺が今すべきことは情報を集めることだろうが、それは後々に聞けばいい。


「主が望んでおったことが現実になったの」


「そうだね。あとはオーレとも話せたらいいんだけど」


「ワタ=シィの駒は誰か分かったのかの?」


「肉体を持っているなら本人か、暗殺ギルドの誰かなんじゃない?

 天畔教の大司教は…なんか好きそうじゃなさそうだった」


「お主の好みでは?」


「ユララの好みじゃあなさそうだったってこと」


「そうかのぉ?

 して、どうするのじゃ?先手を打たれてもうたが。お主には勝つ算段があるのじゃろ?」


 斜に構えた物言いだな。

 ボォクの菓子を全部取り上げて、何かいいたそうにしている口に取り上げた菓子を口一杯に詰め込んでやった。


「まぁね。先手を打たれたし、こちらも駒を動かすとしよう」


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