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158:ワタシ

「何じゃって?」


 残り一週間を切った昼下がり、王国の俺の部屋として割り当てられた部屋の高級ソファーに寝転びながら、同じ部屋で茶菓子を貪り食うボォクは俺の質問に対して言葉を返した。


「だから、オーレとワタ=シィとは連絡は取れるのかって訊いたんだけど」


「主は何を言っとるんじゃ。

 今回は駒を探すところから始まると言っとろうに。

 介添神同士で連絡を取り合ったら駒が何かバレてしまうではないか」


「ボォクが駒になっているのをオーレとワタ=シィは予想できると思う?」


「……まぁ主に免じて、甘んじてなっとるからの。

 あ奴らは予想もしとらん……と、思う」


「曖昧だね。何年の付き合いなのさ。

 長く付き合う程お互いを理解するものじゃないかい?」


「オーレとワタ=シィはの、権能のせいか人間を軽視と問題視しておる。

 じゃが外の世界から連れてきた者は手籠にしおるの。

 余も主を手塩にかけて最強にしてやるつもりじゃったのじゃがな!」


「まずは人身掌握術でも覚えるといいよ。連絡は取れないのかな?」


「取れん事もないが、そもそも取ってどうするのじゃ?」


「どうするって、ちょっと世間話をするだけだよ」


「世間話のお。じゃったら…」


 ボォクが何か案を出そうとした時に、甲高い電子音のようなものが俺の服の中から鳴る。


 服の中から連絡手段として常に起動している通信型の魔遺物を取り出して、映像を映し出す。


「た、大変ですよ!至る所にあの女が現れて宣戦布告してますよ!」


 通信を開始して早々に通信相手のアマネが慌ただしく画面に顔一杯を映し出している叫んでいた。 確か実家に帰っていたはずだが。


「ほら!見てください!」


 諭す前にアマネは画面から離れて、その現状を見せてくれた。


 村の噴水広場に実態が薄い女、ユララ•マックス•ドゥ•ラインハルトが立っていた。

 が、それが一人ではなく、宿屋の前や商店の前やら屋根のええやらと、アマネの言う通りに至る所にいた。


「今さっき急に出現したんですよ!魔遺物の反応はないんでスキルか何かと思われます!

 私死にませんよね!大丈夫ですよね!」


「カイとガストが付いてるでしょ」


 アマネの護衛としてカイとガストを付けたので滅多なことがない限りアマネは危機に陥らないだろう。


「カイさんはふらっとどこかに行っちゃいますし!

 ガストさんはいてもユララさんには敵わないでしょ!助けてくださいリヴェンさん!

 いだっ!どこから小石が!触りました!?操作しましたねガストさん!」


「貸しなさい……変わって私です。

 このユララはもちろん実態ではありませんので危害はありません。

 こちらは私とカイさんがいるので問題ありません。問題なのはそちらでしょうね」


 ガストが無理矢理通信魔遺物を奪って問題提起してくれた。


「そうだね。またこの現象が終わったら連絡するよ」


 そう言って通信を切る。

 ガストは通信中の俺の視線先を見て注意した。

 ユララが現れたのはアマネの村だけではない。この王国にも現れている。

 俺の目の前にもいるのだ。


 通信中に現れたので発生に遅れがあるな。


「ボォク、これはスキルかい?」


「スキルよりも戒律じゃの」


「戒律?そのままの意味でいいの?」


「ある意味そのままじゃな。

 戒律は可視化した遵守じゃ。

 札じゃったり、指じゃっりする。

 自分の信仰心を消費して使う魔術と考えてよいかの。

 余もこの世界の全てを把握しておらんが戒律を見るのは実に三百年ぶりじゃの」


 自分の信仰心を消費するとなると、殆どの人間が使えないだろう。

 受肉した神にしか許されない術と考えておこう。


「主も見ておるじゃろ。あの浄瑠璃のなんちゃらが戒律じゃ」


「ベリオルを殺す術か。でもあの女は人間に感じたけど」


 五百年前のあの場で浄瑠璃の楔を持っていた女は到底神とは思えなかった。


「あ、それ私だよ。

 いやー不死鬼を殺すのは肩が凝ったね。

 どいつもこいつも生半可な術では死なないんだもの。

 だから戒律で少しづつ少しづつ殺していったんだ」


 目の前にいるユララが俺とボォクの話に割り込んできた。

 その事にめくじらを立てたのは珍しくボォクであった。


「うっさいのぉ。今は余が話しとるじゃろうが、ヌケサクは黙っておれ」


「はっはーん。まだそんな態度とっているんだ。

 あれだけ信仰心を奪われても性格は変わらないんだね」


「余は主らとは格が違うからの。

 して何用じゃ?まさか挨拶をしにきた訳じゃなかろうに、お主は人を後ろから刺す奴じゃろ?

 実際に最近そうやっとるではないか」


 ボォクはまるで旧知の仲のようにユララと話している。


 判断材料はある。

 戒律は基本的に神にしか使えない。

 五百年前の話に出てくるのを自分だと証言する。

 ボォクの存在や現状を知っており、ゲームの存在を間接的に示唆している。


「ボォク、挨拶は大事だよ。

 見た目を置いての人間のコミュニケーションの始まりだよ。

 だからワタシはね。この世界の人間に挨拶するのさ。

 今はここの個人だけに語りかけているけども、もうちょっとしたら世界に挨拶するから。

 ヌケサクのワタシの言っている意味分かるかな?」


 ユララがボォクを挑発する。ボォクは考えを巡らせてハッとする。


「狡猾さはオーレを超えるの」


「君に褒められても嬉しくない。そうだよね、リヴェン」


 俺へと話を振ったユララは今まで会ってきた、会話してきたユララとは思えなかった。

 最初にボォクと会った時の気迫を感じる。気圧されそうになる。


「ユララ。

 いやこれは肉体を持った名前か。

 挨拶が大事ってなら、俺に問いかける前に挨拶しなよ。そっちは初対面だろう?」


 そういうと、面食らうことなくユララは嬉しそうに笑った。


「ユララ•マックス•ドゥ•ラインハルトは肉体の名前。

 改めてよろしくねリヴェン。

 ワタシがワタ=シィだよ」


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