157:始まりから終わりまで
「リヴェン•ゾディアック❤あぁワタシは君のことが好きだ。
好きで好きで堪らない。
こうして君と刃を突き合わせ、銃弾を食らいあい、拳と拳で語りあう。
魔力を吸収しあってエンゲージする。ワタシ達は愛し合っている。そうは思わない?」
ユララはそう恍惚な表情で問いかけてくる。
「お生憎だけど、俺はここで君と戯れあっているつもりは一切ない」
「ワタシはここから一切逃さないよ。
君はあの場所へは辿り着けない。
目的も果たせない。
無為無策に終わるのさ。
ここで終わるまでずっとワタシと戦い続けるの。
だから、立ち上がって続けようよ。永遠の殺し合いを」
カイが仲間に加わってからは世界の情勢が大きく動いた。
まずはバルディリス連邦の解散を受け、バルディリス連邦は同時にバルディリス連邦を侵略していた日出国の領地になった。
中央遺物協会も力を失い、基本的な権力は日出へと受け継がれた。
信定に会いにいったが、信久を吹き飛ばしたせいで日出国では指名手配犯となっていたので会えずじまい。
信久はそんな事では怒らない人間だと思うので程良く出禁にされたのだ。
中央遺物協会の力が弱まった事で息を潜めていた団体が表立って活動するようになってきた。
それがワタ=シィを信仰している天畔教。
天畔教は魔遺物もスキルも受け入れる。何人も受け入れる。
門が広い宗教――まぁ狭き入り口の宗教の方が少ないけども…。
しかし問題があり、一度入信すれば抜けることはできない。
嫌がらせや脅迫をされる訳ではなく、抜けようと思うことができなくなる。
一度足を踏み入れれば、気が付けば全身ずっぽりと入っている。典型的なことになる。
体験してきたけど冷やかして、天畔教のスーダン大司教とやらを敵に回して帰ってきた。
天から見守ってくれているワタ=シィの為に身も心も捧げ、ワタ=シィの為に尽くして今世も来世も保証される……のだと。
天畔教の人間はスキル持ちが多い。
それはワタ=シィの加護を受けているからである。との触れ前があったりもする。
実際にキュプレイナの持っているスキルはワタ=シィから授かったと本人も言っていたので、あながち嘘ではない。
天畔教の教会がどこの地域にも小さくあったのが大通りに移動してきたり、明らかな信者が大々的に活動するようになってきた。
ボォクはバルディリス連邦はオーレの信仰心で作られたような物だから、それが消えてワタ=シィの信仰心が上回ったと言っていた。
世界の信仰心は確かオーレが六でワタ=シィが四だったか。今では逆になっていそうだ。
天畔教が活発になるのと同時にルドウィン教会も動きが大きくなってきた。
お互いに信者の取り合いをしているようだ。
そこに自国が口を挟める道理もなく。日出国以外では宗教戦争が始まるのでは?と噂される始末。
メラディシアン王国でもその兆候が見られている。
ユララのクーデターのおかげで騎士団員と兵士の人員不足に悩まさられている中、ガラルドがとった政策が隠者の森にいる人間を王国に引き込むことだった。
無論国民は猛反対に猛抗議。
そこにイリヤが献身的な街頭での説明と、自分の出自を明かして説得したおかげで、それなりに収束して、まず選定した人員が王国内に迎えられ、職を得た。
ガラルド達が隠者の森の顔役でもあったおかけで廃品回収隠者を制御し、王都民との軋轢はそこまで生まれなかった。
ドズの集落は中央遺物協会の庇護下ではなくなり、個人の集落……言うならば国となり、あの場所に居住まうようだ。魔物の侵攻を事前に食い止める措置ともなるので、王国側からは敵意なしと判断され健在である。
反乱を起こそうにも、俺と言う脅威がいるので起こせまい。
理。
世界の何処かに存在する理探しは難航していた。
カイが勇者の言葉を代弁して話してくれるも、進展はない。
糞勇者と話せるようだが、話したくないし声も聞きたくない。
何なら逆上して精霊を潰してしまうかもしれない。
勇者がオーレにしてやられたと言えども、リーチファルトを屠った現実は変わらない。
お前は大往生して死後魂が取り残されたが、俺達魔族は常に取り残される形になっている。
全てはお前のせいだ。
だからお互いに謝りもしないし和解もしない。
カイの目的を知ってから、勇者が現れている際の空気は最悪だ。
そんな俺は魔遺物を沢山食べたがネロが復活することはなかった。
魔力はほぼ受肉したボォクと繋がったおかげで無尽蔵にあり、使えるスキルは昔のように千を超えた。それなのにネロは復活しない。
どうすれば復活するか身体に訊いても魔遺物不足と言われるだけ。
だからまだ魔遺物を食べている。同じスキルであったとしても食べている。三食間食全て完食している。
仲間達、主にシンクロウとモンドがボォクの身体を持ってきてくれる。
残されたボォクの身体は一つとなった。
ボォクの身体が全て揃えば俺は晴れて魔遺物から神へと昇格するらしい。
そうなればゲームで勝つことは容易く、たかが人間では手も足も出ない……らしい。
所詮はボォクの戯言だが、自分の力が高まっていくのに気付かないほど鈍感ではない。
巨大な魔物である巨獣も動かずに指だけで屠ることができる。
神というか、化物だと言うのが日々進化していく身体を検診するアマネの感想であった。
こうして日々を消費してゲーム開始まで残り一週間を切ったのであった。
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