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148:天幕

「やぁ首脳会談の続きといこうか」


 出された期限から一週間。俺は日出へと来ていた。

 風の噂ではイリヤがグランべライザーを振り回しかねない勢いで俺を探しているらしいが、知らぬ存ぜぬを貫き通す。


 俺の前には前回とは違い、普段着なのか和装姿の信定一人だけが歩いてやって来た。


「貴君の提案を受け入れる」


「単刀直入だね。じゃあ俺はすぐにでも取り掛かるけど君達はどうするのかな?」


「既に軍は送ってある。早く行かねば我々が制圧してしまうかもな」


「………そう来るとは考えが及ばなかったね。

 確かに俺はお誘いをしただけ、これは契約でも何でもない。

 まさか俺がそこまで信用されているとは思いもしなかったよ」


「全面的に貴君を支持しよう。

 だからこそ支援の為に軍を送っておいた。丁度良いだろう?」


「怖いくらいにね」


 全面的に支持をする。

 つまりはこの進軍には俺と言う存在がいないと事が始まらないとみた。


 俺に全責任を押し付けるつもりで既に進軍した。

 恐らく進軍理由は俺がバルディリス連邦を襲う可能性が十分にあるから、との報を日出と繋がりがあるバルディリス連邦の権力のある者――大方あの科学者だろうが、そいつ経由で警鐘を鳴らす。

 助太刀のために軍を手前まで送り込む口実。

 そこから俺が現れれば共に進軍。

 現れなくても進軍。末恐ろしいね。


「総大将は我が弟、信久だ。

 ガタイが良く好んで獣の毛皮を羽織っており、酒を水と間違う程に飲んでいるから分かりやすいとは思う。

 信久はこの場所に待機している。人相書きはいるか?」


 袖口から簡易的な地図型魔遺物を取り出し、開いて、赤く光る場所を指差す。


「いらない。名前さえ教えて貰えばなんとかなる」


 そう言って地図の場所を映像に映し出す。

 俺を形成している魔遺物のなかにあった転移鵡方の補助となるスキルである。

 これで実質魔遺物の地図さえあれば、どこへでもいけるようにはなった。が、場所が様変わりしていると移動はできない。

 

 ネロはまだ起きない。


 まだ魔遺物が足りない。


 バルディリス連邦を消すのは建前。

 本当は不当に魔遺物が欲しいだけなのだろう。素直ではないな。


「何か言った?」


「信久は気性が俺よりも荒いから、態度には気を付けたほうがいい。

 この前も新入りの武官を斬ったからな」


「じゃあ大丈夫だ。俺は斬られても復活する」


 そう言うと鼻で笑われた。


 だって安い脅しなんだもの、身体の痛みを恐れてお喋りをしないなんて勿体ない。


「貴君一人か?」


「シンクロウをお望みかい?積もる話でもあったのか残念だけど彼は別行動さ」


 シンクロウはボォクが俺の身体に封印されて神官という役職が果たせなくなった時、勇者一行と戦い傷ついた身体を日出国で湯治している最中に信長軍と合流してから、戦争で功績をあげて将軍にまで上り詰め、信千代が生まれるまで日出で過ごしていたらしい。

 その際に信定の剣の師匠として師事していた。


「ない。あいつ程の背信者と話すことなどない」


 ここ日出はワタ=シィを信仰する地域。

 ボォクの神官であることを隠してワタ=シィの駒であった信長に加担していたシンクロウは背信者と言われてもおかしくはない。


 オーレを信仰するルドウィン教があるように、ワタ=シィを信仰する天畔教といのもある。

 因みにボォクを信仰しているのは魔術教会。ボォク曰く、ボォクの力が弱まったせいと、新たな理が追加されたせいで人は魔術を使えなく、使わなくなったとのこと。


 シンクロウと信定の間にはそれ以外にもある。


 シンクロウが日出を出ていくのを薄々感じていた信定は父である信長に報告した。

 無論、離反者を許さない信長がシンクロウを処罰対処に認定した。

 シンクロウは自分の副官であった人間を囮として城に居座らせ、城ごと爆破して、副官と居城と民を犠牲にして追手を巻いた。


 こんなことをしておいて背信者とだけ言っているあたり、信定はシンクロウの事を心からは嫌っていないのだろう。


「それじゃあ俺は行くよ。手柄を横取りされてもつまらないしね」


「ああ、良い結果になる事を祈っている」


「お互いにね」


 賓客との扱いかどうかと聞かれたら、部下がおらず、武器を構えてないだけ。

 俺の考える賓客扱いではない。


 うまい料理も、楽しい芸事も、一人で愉しむのはいかがなものかと。


 移動して目の前に現れたのは蟹料理に春巻きに魚の造りが置かれたテーブルの料理を半裸のスタイルの良い女性に食べさせてもらいながら、片手にジョッキを持ち酒を飲んでいる髭がモサモサでガタイが良く、ミニ巨人属との印象。


 どうやら、ここは大将の天幕のようだ。うまく移動はできたな。


 そんな酒池肉林を現した男、織田家五男信久は、突然目の前に現れた俺に対して驚きもせず、ジョッキで俺を指す。


「思ってたより良い男だな。みろ、滾ったぞ」


 そう言って視線を股間に誘導させた。酒のおかげか、俺のおかげか、見事に天幕を張っている。


 死の危険とはまた違った身の危険を久しぶりに感じた瞬間であった。


 斬られてもいいから対話したくない相手だな。

 初見の印象がユララの次に苦手かもしれない。


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