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144:制裁宣言

「あ、主?何を?」 


 俺の宣言に戸惑っていたのはシンクロウだった。


「と、まあ、宣言はしたが、箔がつくのはまた後の話だろう。

 いいかいシンクロウ、今日から俺は魔王だ。魔王様と呼んでくれても構わない」


「は、はあ分りました、我が魔王」


 突然の宣言を理解してはくれないようであった。


「お前が魔王なのは理解した。

 だからなんだと言うのだ?我が国に仇なすとでも言うのか?」


「それいいね。

 魔王といえば征服だ。信長も征服王と呼ばれていたよね。第六天魔王とかも有名だ。

 ……この辺りの土地は元々魔族が支配していたようだし、大義名分は充分かな」


「歴史上ではな、今は我が国だ。

 お前が我が国を征服しようというならば、今ここで処す」


 抜いていた刀を向け、馬上からでも凄みが俺とシンクロウを射抜いた。

 まるで金縛りにあったように筋肉が硬直する。これ程の威圧ができる人間はそうそういない。伊達に魔族並みに長生きしているだけはある。


「俺は君の案に乗っかっただけだよ。

 俺は征服するよりも、敬服される方が好きだからね」


「ではお前は一体何がしたいのだ。次はないぞ」


 人間関係は簡潔と言いながらお喋りに長く付き合ってくれていたので、信定は悪い奴ではないか、頭が回らない馬鹿のどちらかに分類される。


 さて、これからは信定を、織田家を、日出国を引き込もうと思う。その為にはさっき失った俺の従者が必要である。


 魔遺物を口に含んで飲み込む。

 うん、寒気が身体中に駆け巡ったから、ボォクが受肉した身体で間違いない。


 信定の部下が騒めいている。

 信定も信千代から聞かされているのだろうが、生で見る魔遺物を呑む人間を見て表情を少し強張らせていた。


 ネロ、いるんだろう?


 問いかけても返事はなかった。


「それが答えだな?」


「黙っていて」


 そんな訳がない。未来で会うと言っていたのだから。ブラックジョークも程々にしないとウケが悪い。


『再起動中』


 頭の中で低い男性の声がした。


「聞こえた?」


 シンクロウへと指を指すと首を振った。


『再起動中………再起動には魔遺物が不足しています。魔遺物を取り込んでください』


 機械的な声。当初のネロの声が述べている。

 魔遺物を取り込む?確かにこの身体は仮の身体だ。俺のスキルを所持しているとしても、生成している身体の材料となっている魔遺物とスキルは所持していない。


 魔力不足ではなく魔遺物不足となると、ネロも身体を欲している。


 やはり、やることは変わらないようだ。


「君達は大量の魔遺物を欲していたね。あぁ探り合いとかじゃなくて、これは取引の話ね」


「我が魔王!」


「ハイ、主君を諫めるのも従者の役目だけど今じゃないよ」


 シンクロウに口出しはさせない。止めると言うことは否定的であるのだから。

 これは俺のゲーム。俺がプレイヤーだ。決定権は俺にある。


「だとしたらなんだ?」


「君達が中央遺物協会、またはバルディリス連邦から貿易を始めたのは有名だね。成り行きは俺から始まった訳だしね。

 ……現在俺は負傷している。その負傷を治すには魔遺物が必要な訳なんだよ。大量に。

 庇護下にいる場所の魔遺物を全て取り込むと、その場所が色々と傾いちゃうんだよね」


「我々が取り寄せている魔遺物が欲しいと。

 なら正式な手続きを設けてから来るのだな」


「違う。

 まぁ見方を変えれば正解だけど。

 俺は魔王だ」


「それはさっき聞いた」


「宣言したけど、どういう方針かは言っていなかったね。

 俺はこの世の魔族を救う。魔族は勇者に敗北した。それから見つかれば魔遺物にされる危険と隣り合わせで三百年陰で暮らしてきた。

 その暮らしを終わらせる」


「終わらせる?何処かで国を作るのか?どこにだ?

 世界は、人類は魔族を欲するぞ。魔遺物を求めるぞ。そうすれば」


「戦争だよ」


「戦だな」


「……手始めに魔族の生殺与奪を支配している国にこれまでの制裁を加えようと思うんだよ」


「バルディリス連邦か」


「そう。人の住む世界に魔遺物を輸出し続ける国。

 魔王が見過ごす訳ないだろう?」


 続けろと、信定が顎で指示する。いけ好かないが続けよう。


「制裁を加えると言っても、既に抜け殻となった同胞に魂を込めることもできない。

 そこは仕方ない。折り合いをつけよう。

 だがそれ以前の、原初の同胞の痛みは伴ってもらわないと均衡が取れないね。

 賠償金?魔遺物?物では釣り合わない。彼等彼女等は名を消された。世界の記憶からだ。だから釣り合いを取るためにバルディリス連邦を消す。存在を、名前を、消す」


「それは我々にも宣戦布告しているのだな?」


「宣戦布告?何を言ってるんだい、お誘いだよ、お誘い。

 俺はバルディリス連邦の存在を消す。

 目的は制裁だ。魔遺物の生成や土地は二の次でね。

 俺一人で美味しい思いをしていいけど、丁度目の前に友達の身内がいる。分かちあえる心を持った寛大な魔王様からのお誘いさ。

 どうだい?征服王の息子さん」


「俺達が誘いに乗る理由はないと思えるがな」


 仰る通りだ。リスクの方が高い。


「まあ誘いに乗らなかったら俺はそこを盤石にして、君の提案を実現させるだけだよ」


 バルディリス連邦を魔族の都市にしたのならば、次は最も大きな国に敵意を向ける。

 日出国へと、矛を向ける。


 ついさっき瞬間移動の類を見せたのは、俺という存在がどこにでも現れることができると印象付ける為。

 突然現れて重要な場所を破壊だけして去るとの、戦争において最高に非道なゲリラ作戦が容易に実行できる。

 最低だと言われようが、俺はやる。目的のためなら手段は選ばない。


 目を少し伏せて、信定はそれや、国の行末を想像しているのだろう。


「いいだろう」


 目を伏せていたが、ゆっくりと俺を見据えた。後ろで部下達がまた騒いでいる。


「魔王リヴェン•ゾディアックの提案を受けよう。一週間後にまた来い。その時は賓客として迎え入れよう。

 だから今は直ぐにでも失せろ」


 おぉ、マジでキレる寸前ってやつだ。

 提案を受け入れてくれた。仮にこの場を凌ぐ嘘だとしてもどちらでもいい。津々浦々筒抜けの情報を流せたし。


「そうさせてもらうよ。帰ろうかシンクロウ」


「全く、其方と言う人はボォク様よりも扱いが難しいですよ」


「取り扱い説明書読むかい?」


「何冊あるんですか……信定、くれぐれも間違わぬよう」


「まだ師匠気取りか、早く失せろ。俺の気が変わらんうちにな」


「それじゃあ、また一週間後に、ここで」

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