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143:絶対宣言

「知り合い?」


 縫い針が打ち込まれている場所を探しながらシンクロウに尋ねる。


「えぇ、百年来の知り合いですよ」 


「百年?彼は魔族が何かか?んーちょっと待って自分で考える」


 額を叩いて考える振りをする。

 上半身に打ち込まれた縫い針は取れた。話を繋げて時間を稼ぐか。


「信長のスキルか。確か寿命が延びるスキルがあったね」


「流石は我が主」


「慧眼と褒めてやりたいが、日出では大衆認知されている。

 して、そのシンクロウが主と言うからにはお前がボォクか?」


「自己紹介をするなら君からだよ。俺は礼儀礼節には厳しいんだ」


「俺は織田信定だ。この日出を総ている総督だ」


「俺はこんな姿になっているけど、リヴェン・ゾディアックだ。

 ここの並木が綺麗だと聞いてね、遠足に来たんだ。あ、ピクニックでもいいかな」


 信定は俺の名前を聞いたにも関わらず反応が薄かった。

 事前に来ることが分かっていたか、感知した時点で俺だと断定していたか。二つに一つではないが、どちらかが有力な説だろう。 


「確かにこの秋花峠は我が国でも景観が褒められる場所、行楽に訪れる者も数少なくはない。

 が、ここは俺が統括する尾原の織田家直轄の所有地。ここに入れるのは俺の許しを得た者と、不逞な輩だけだ。

 お前は言わずともどちらに値しているかは分かるだろう?」


「不逞な輩なんてどこにいるんだろう。ねぇシンクロウ。

 君が百年来の知り合いならば、主の俺が不逞な輩なんて、あるはずがないよね」


「そうですね」

 

 曖昧な言葉で茶を濁された。


 やっと縫い針が俺の分だけは取れた。このままシンクロウを転移鵡方で移動させてもいいが、相手が武力を使用してくるまでは腹の探り合いをしてもいいだろう。上手く転べば、今後の役に立つかもしれない。


「餓鬼の屁理屈、和尚の説法と肩を並べるくらいつまらんな。眠くなる。

 俺はのらりくらりが好きだが、それは世の在り方である。

 人間関係の在り方は簡潔である。お前が敵であるか、ないか。だ。」


 俺とシークォのかけ合いがもう一度行われているようだった。


 信定は信長の合理性を強く引き継いでいる。取り入るならば俺が信定に対して、日出に対して有用な者であると証明すればいい。

 そうして気に留められたならば、手は結べるだろう。


「修行中に船を漕いだら肩を叩かれるんだよ」


 俺は転移鵡方で移動して信定の肩を軽く叩いた。隻眼が俺を捉える前に既に腕が刀を抜刀し首筋を狙った一撃を交わして、元の場所へと戻る。 


 一瞬の出来事だったので部下達は反応できていなかった。唯一木の中にいる奴だけが反応していた。

 木の中にいたのか、気づかなかった。


「修行不足だね。禅道を極めた方がいいよ」


「生憎、茶器を集めるのは趣味じゃないんでな」


「心の持ち用の話さ。さて、そちらの質問ばかりに答えているのは平等に欠けるとは思わないかい?」


 お前が勝手に領地に入ってきている不審者たからだろうと言わんばかりの部下の目線が痛いが、見えない聞こえない気にしない。


 信定が何か言葉を返すのを待つ気はなく。


「だからこうしよう、互いに質問して答える。相互関係円満だね。

 君はもう質問して俺は答えたから、俺からね。どうして俺がここにいると分かった?」


 俺の提案を受け入れる必要がないのに、部下が息を飲んで信定の返答を待っている。部下の反応を見る限り、信定は提案を飲む可能性があると見える。

 それと、部下はおいそれと主君には口出しはしないようで。


 信定は口を開いた。


「お前の魔力反応を追っていた訳ではないからだ。次は俺だな。お前は何を求めてここへやって来た」


「コレ」


 手に待っている魔遺物を見せる。


「魔力反応はシークォ。シークォ=ニャンダワ=キャトルルカのものである。シークォは日出で生きていたのか?」


 これだけ早く辿り着けたのはシークォを追っていたからであろう。


「日出はシークォの魔遺物を所持していた。

 シークォは確実に死んでいた。 

 お前はシークォの仲間か?」


「違う。証明するには身を潜めている国に帰らなければいけない。

 あくまで目的はコレ」


 シークォは蘇ったってことでいいかのか。どうやってだ?魔遺物になってから肉体を取り戻せることが可能なのか?

 そうじゃないとしたら………俺と、同じか………。


 とりあえず現状導き出せる結論はこれか。


「質問は終わりか?」


「俺は魔王になる」


「何?」


「片耳も失ってないでしょ」


「お前はその方書きを失っただろう」


「歴史に詳しいんだね」


「そこの烏から嫌と言うほど習ったからな」


 シンクロウと信定の関係は後で聞くとして。


「シンクロウでも知らないことはあるんだよ。俺はリーチファルト•ゾディアックが逝った時に、本人から魔王を襲名した。

 この三百年魔王の籍は空いていたな」


 あの時ユララに告げた時とは違う。これは俺の在り方を突きつけるためであり、俺の生き様を見せつけるためである。


 どいつにも、こいつにも突き付けてやるのだ。


 俺がここにいる理由を。


 この世界で成し遂げる矜恃を。


「ここで宣言しよう。かの魔王の所縁の地で高らかにだ!俺が現代の魔王だ。魔王リヴェン•ゾディアックだ」

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