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119:昼の魔神

 掻きあげた長い髪の毛を後頭部で括りポニーテイルを作り、踏みつけていたコンパクトを俺の方へ蹴った。


「あげるわ、欲しかったんでしょ?」


 その言い方や振舞いは粗暴になり、元々の人格であるユーフォリビアは消えたか、閉じ込められたかのどちらかだろう。


「これはどうも、ありがとう」


 俺はコンパクトを拾い上げると長いスカートの裾が目に入った。

 ユーフォリビアとは思えない程に機敏な動きで俺の頭へと蹴りをくらわせる。

 人格が変わったからと言って身体能力が劇的に変化するかと言われれば、そうである場合もあれば、そうでない場合もある。人格と共に肉体も変化する例もあるのだ。


 しかし目の前にいるユーフォリビアは肉体的な変化は見受けられない。


 蹴りを受けると俺は庭園へと飛ばされる。


 蹴りの威力がおかしい。

 魔術師程に鍛えられた肉体でもない、強化効果を使った形跡もない。

 だが俺程に人間離れした肉体に対して吹き飛ばせる脚力。異常である。


「鋼鉄よりも硬いわね、その頭何で出来ているのかしら」


「愛と勇気が八十パーセントで残り二十が恨みさ」


「果てしなくどうでもいいわね」


「君はユーフォリビアでいいのかな?自己紹介必要?」


「要らないわよ、全て見ていたから。

 ・・・そうね、私もユーフォリビアよ。ただ姓を背負っているのはあいつの方だけど。

 それよりもユララ、もうすこしマシな起こし方無かったわけ?頭がガンガンするわ」


「だってー過度なストレス与えないと出してくれなくなっちゃったんだもん。

 五年前よりも気力共に成長したんだよね。事情は分かっているよね?」


「分かっているわ。それで?どう殺すの?」


「んっんー、そろそろかな?」


 腕時計を着けていないのに腕時計を見る動作をしてからユララは天を見上げた。


 それと同時に巨大な魔力反応を王都全域に観測し、目測でも巨大な術式が上空に展開された。


 この術式は他の器官から魔力を得て、この膨大な術式を展開している大魔術。

 これの用途は大量殺戮か大量破壊かだ。どちらも同じか・・・。


 この術式を魔法使いに使われて主要な砦が置かれた町が壊滅した。

 それ以来この術式を使えなくする魔術を編み出して封印してきた。

 今回はその魔術を使える人数と知識が無いので対処はできない。


「へぇ、店じまいするのね」


「そう。だから迎えに来たんだよ」


「じゃあわたしはやり残したことをしてこようかしら」


 ユーフォリビアはまるで俺とシンクロウを脅威と思ってもおらずに部屋から出て行こうとする。

 守る必要もないが、イリヤのところへ行かれると面倒なので足止めすることにする。


「あー魔王様❤足止めとかは止めておいた方が良いよ。

 ユーフォリビアちゃん◎とは相性がかなり悪いからね。

 そこのカラス君〇なら足止めできるかもね」


「ユララ、スキルや力の事は話すのはやめなよ。

 ただでさえ魔王であって狡猾なのだから、対処されたらたまらないわ」


「いいじゃんヒントくらい。

 ま、これが発動した時点で魔王様❤は私達を足止めするよりも、これからどう逃げるかを考えないといけないから、邪魔している時間はないよね」


「それはお前達にも言えるだろう?」


「逃げ場を確保しているよ。

 それにユララちゃん☆は今回はサポート役だからね」


 つまりユララが足止め役をかって出るという事だ。

 ただでさえ鬱陶しいのに足止めにまで回られるとかったるい。


「俺はイリヤにさえ手を出さなければ邪魔はしない」


「イリヤ?あぁあの子ね。

 あの子には手を出さないわ。まぁこの術式から無事でいられるかは分からないわね」


「保証が無い」


「嘘をついているように見えるのかしら?

 それとも言葉にしなければ理解できない程お利口さんではないのかしら」


 ユーフォリビアからは嘘をついている雰囲気はない。

 しかしこちらのユーフォリビアは目や表情、それに脈や筋肉で読み取るのが難しい。

 そこらの一般人ではない。どこかで訓練したか、身につけた。


「君が思うほどに俺は利口じゃないのかもね」


「行かせてもらうわ。ユララも足止めはしなくていいらしいわよ」


 皮肉を言いあう時間も惜しいのかユーフォリビアは部屋から出ていく。

 まぁ言う通りに嘘は言っていないので行かせても問題はないだろう。

 ユララ達が言う通りに俺達はこの発動された術式をどう対処するのかを考えた方がいい。


「なんかやけにあっさりだなぁ。

 ユララちゃん☆も挨拶回りしてから、ここを去ることにするよ。またね魔王様❤」


 そう言ってユララは庭園へと入って姿と気配を消した。


 またね。か。

 右手にコンパクトを持っていたコンパクトを飲み込む。


「よろしいんです?」


「よろしいんです。

 さっきの一撃をあれに撃って消すって考えがあるんだけど、やっぱりおススメはされないよね」


 飲み込んだ後に薬湯のような味が何故か口の中に広がった。


「止めさせて頂きます。

 ボォク様がいれば何とかなるかもしれませんが、まだ太陽は真上ですからね」


「余を呼んだかの?」


 俺とシンクロウの間にネロの身体に意識を移したボォクが現れていた。

 俺もシンクロウも感知できていなくて少しだけ驚いた。


「なんで夜じゃないのに出ているのさ」


「なんじゃ?夜じゃなければ余は表舞台に立ってはいかんのかの?」


「そういう話・・・・もしかして今ので力が更についたから?」


「ざっつらいとじゃ。

 じゃから余が追加されたスキルを使ってここに移動してきたのじゃ」


「同期していないけど?」


「有線より無線の方がいいかと思ってあっぷでぇとしておいたのじゃ」


 有線にも有線の良さがあるのだが、まぁこの場合は無線なのがありがたい。

 それにしてもこのボォク・・・どこかモダン的な思考をしているな。まぁいい。


「で?なんじゃ?余があの魔術術式を破壊すれば良いのか?主でもできろうに」


「リヴェン様が撃ってしまいますとゲームに支障が起こるかと、なので最強無敵のボォク様が撃った方が良いかとオレは恐れながら進言いたします。

 それに、目立てますよ?」


「・・・なるほどの、余がこれを破壊することによって民草の信仰を余ががっぽがっぽと掻っ攫っていくという事かの・・・

 シンクロウお主・・・天才じゃな!

 ならば致し方ないの!余が手伝ってやろう!

 今回だけじゃよ!一回ポッキリじゃよ!」


 シンクロウのボォクの扱いは長年付き合ってきたからこその扱い方なのだろう。

 俺も見習って調子を上げさせておくか。


「ボォクの凄さが見られるなんて光栄だなぁ。

 具体的にはどうする気なの?」


「じゃろじゃろ?

 まぁ余にかかれば大魔術を打ち消すなぞ赤子の手をひねるくらい簡単じゃよ。

 具体的にと言われると、そうじゃな、お主が使う技となんら変わらぬ。

 一点に魔力を集中し、放つ。それだけじゃ」


 魔術の術式は展開時、基本的に展開されている術式を上回れば打ち消すことができる。

 基本的にはそうなっているが、大魔術に対しては大魔術で打ち消すのが、俺達が導き出した一つの答えだった。


 それとは違う力業だけで打ち破ろうというのだ。


「準備は出来たのじゃ、余を城の一番高いところに連れて行くのじゃシンクロウ」


「了解しました」


 シンクロウに連れられてボォクは城の一番高いところ、キープへと向かった。


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