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117:極大魔術

 ワワは散った。


 散るはずだった。


 拳と拳のぶつかり合い。

 矮小なワワの拳は巨大なリェンゲルスの拳の前には力の差は歴然としていた。

 はずだった。


「な、に!」


 先に驚きの声を上げたのはリェンゲルスである。


 目の前のワワの隣に同じようにして拳を突き出す人物がいるのだから。

 その拳を突き出す正拳突きは洗礼されていて、美しかった。

 突いた拳が光っているようにも見えた。本当は突いた瞬間は見えない速さなので、光って見えたのは爆発する瞬間だからである。


 物凄い爆発がリェンゲルスの拳を破壊し尽くす。

 そんな爆発に巻き込まれたはずのワワと爆発を発生させた主は無事であった。


「こりゃあ、また珍しい奴が現れたもんだな」


 リェンゲルスの前にいたのは老齢を少しも外見に見せないハクザ・ウォーカーであった。


「な、なんで?」


 ワワは放心した状態で問いかけた。目の前に幻覚がいると思ってしまっていた。


「リューベルト君のお見舞いに来たのですよ。

 まさかこんな事態に関わるとは思いもしませんでしたね」


 幻覚であろうものは輪郭もあり、言葉もしっかりと返してきた。

 正真正銘本物のハクザ・ウォーカー。

 ワワは死の間際から救ってもらった事と、泣き叫びたくなる程の恐怖が胸の奥から込み上げてくるのを堪えて、冷静に言葉を選ぼうとする。


「貴方の正拳突き、良かったですよ」


 魔術教会から逃げた。

 魔術と向き合えずに、武道へと転身した。

 そんな身になったとしても、憧れであったハクザ・ウォーカーから称賛の言葉を言われてしまった。ワワの感情のダムが決壊しそうになった。


 テラス席にいたメメメとワクゥは突然のハクザの登場に席を立って援護しに行こうとするも、ふわりと風が吹いて、目の前に女が現れる。


「あら、どこいかはるの?ウチと遊びましょう」


 ハクザに付いて行くと面白いことがあるのを予期したキヤナ・アウトバーンである。


「あ、そうそう。魔物さんらはラリリンちゃんが遊んでるらしいよ。

 そこのお嬢さん」


 メメメが持つスキルを見抜いているかの如くキヤナは言う。

 本当はどちらかが魔物を召喚、もしかは操っているのを、当たりをつけてカマをかけてメメメとワクゥの反応を見ている。


 キヤナの言葉に反応を両方しない。


「おい!お前等やれるよなぁ!」


 リェンゲルスが叫ぶと、二人は頷いた。


「じゃあ勝負再開だな」


 リェンゲルスはハクザとワワに向き直った。

 向き直った先にはワワとハクザとウィンがいて、リェンゲルスにとっては一人増えている形になっていた。


「誰だぁ?てめぇ」


「ワワの代理や、ワワはもう戦えへんからな、嘘ちゃうで、詐欺師ちゃうしな」


 ワワの身体はウィン達の音楽を聴いてオーバーフロー寸前であった。

 ここから身体を癒すためのヒーリング効果がある音楽を聴くには、ここで引かないといけなかった。


 バンキッシュに言われて他の援護が辿り着くまで耐えに耐えたヴィーゼル兄弟は、ようやく戦闘に参加できた。


 予知で助かると分かっていても友人が傷つていく姿を黙って見ているのがこれ程までに胸が締め付けられ辛いものかと思い知った。

 それは怒りの糧となり、力になる。

 耐えに耐えたウィンは自身にかけたバフを現状最高のものに仕上げた。


 ウォンがワワを抱えて介抱する。


「ウィン・ヴィーゼルや。お前のタマを貰う。往生せぇや!」


 ウィンが叫んで突進するのと同時に頭の上に影が出来る。

 何かしらの攻撃だと思ってウィンは足を止めたが、リェンゲルスも含めて全員がその影を見上げていた。


 いきなり雲が出来たわけでもなく、何か物体が現れた訳でもない。

 全員の頭上に現れたのは魔術の術式であった。


 その術式は王都全域に及び、強大な魔力を帯びていた。


 ウィンもハクザもキヤナも強大な魔力に反応する。

 反応しないのは暗殺ギルドの三人。


「案外早かったな。遊びはここまでだな!」


 リェンゲルスが爆発で壊れた拳を再生させて、地面を思いっきり殴り、壊した地面の土や石をハクザとウィン、キヤナに目掛けて飛ばす。

 一番前にいたウィンは腕をクロスさせて耐え、ハクザは飛んでくる石を全て爆発で壊す。

 キヤナも背後から飛んできた石を焼き溶かしていた。


 その煙に乗じてリェンゲルスは身体を萎め、メメメとワクゥも気配を極力断って逃げた。


 煙を爆風と熱風で晴らした時には既に三人の姿は無かった。


 煙に乗じての攻撃かと暫く警戒したが、殺気もなく気配も完全になくなったことにより、注意するのは真上にある術式になった。


「な、なんなんや、あれ?」


 上空に出来上がった術式に驚きの声を上げるウィン。


「・・・君も魔術が使えるようですね」


「せ、せやけど」


「あれは魔術教会の中でも秘匿にされている術式です。

 あれが発動されれば、そうですね、この都は半壊し、尋常ない死人が出るでしょう」


「なんやて、じゃあ直ぐに止めなあかんやん!」


「無理ですね。

 発動する前ならば術者を殺せばなんとかなりましたが、術式が展開された時点で出来なくなりました」


「こんな馬鹿でかい魔力と術式一人じゃ無理やろ・・・」


 秘匿にされていると言いながらも、少しだけヒントを与えて、ハクザはウィンに理解させる。


 この術式は大多数の魔術師が命を賭して魔力を消費し大本の術者へと送り、発動する魔術。

 術式が発動した時点で大多数の魔術師が命を失い、魔力を送り終えたという証。

 止める段階は既に終わり、どう防衛手段を取るかの段階へと変わっていた。


「彼らや魔物は目くらましで、目的はこの術式だったのでしょう。

 大本の術者は王城にいるようですね」


「・・・せやったらわいらはどうしたらええんや?」


「魔術教会を避難所にしましょう。

 そこで防衛魔術を張ります。貴方も手伝ってもらいますよ?」


「ええで、避難民集める為に、わいらにええ考えがある」


 王城まで行くのに間に合わないので、ハクザ達は防衛することを選んだ。

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