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116モモ

「や、やめなさいよ。私を誰だと思っているの、私は第四王女のカナビナ・デブレ・ラ・メラディシアンよ!」


 カナビナの部屋には護衛であった王国兵士が倒れ伏していて、それよりも奥にある自室へと逃げ込んだカナビナを追い込んだ人物、暗殺ギルドの一員モモが抜刀してカナビナに向けていた。


「・・・そう」


 興味無さそうに呟く。


「そうって、貴女分かっているの!?

 分かってこんな行いを!

 だったら見逃しなさい、私はシーマおば様が王になった暁にはそれなりの地位を用意してもらっているの、ここで貴女が私を見逃せば良い条件で手を取り合えますわ」


 冷や汗を流しながらも必死に自分が生き残ろうとする手段を、身振り手振りを交えて講じるカナビナ。

 心の底ではわかっていたのに、どうにかして助かりたい一心で言葉を繋いでいてく。


「手、ね」


「? え、私の手が、手があああああ!」


 いつの間にかカナビナの手は両手とも斬り落とされていて、気づいた時には自室のカーペットを血で汚していた。


「これでは良い条件で手は取り合えない」


 冷たく張り付いたような表情を変えずに、そんな冗談を言う。


「いやああああああ、どうして、痛い!こんな仕打ち!あぁ!あぁ!!!」


「姉妹でもここまで違うのは滑稽ね」


 またもカナビナが気づかないうちにカナビナの首が飛び、噴水のように切り口から血が噴き出した。


 返り血を浴びることなくモモは振り返って戻り、カナビナの部屋に入る為の扉の前にいる人物と対面する。


「さて、次はあなた?あれの護衛にはみえないけど」


 モモの前に対峙するのはスラッとした体形でどんな服でも着こなし、ジャッカルの仮面をしたバンキッシュである。


「私は確認しに来ただけです。

 貴女が本当に貴女なのかを。

 貴女は本当にモモ・フォン・キャスタインなのですか?」


 バンキッシュは昨晩イリヤ派閥の人物達のニオイを嗅いで未来予知を発動させていた。

 全員が全員に具体的な内容を言えば未来が大きく変わるのを恐れて、適度な警告をリヴェン達に伝えていた。

 おかげで今のところ被害は最小限で済んでいる。


 未来予知は自分の未来は見えないのが欠点である。


 その中でリヴェンの予知の中に出てきた、このモモと言う人物が、自分の妹であるモモ・フォン・キャスタインに酷似しているのを見つけ、移動先を予測して、ここへやってきていた。


「・・・私はただのモモ。それ以外の事は知らないし、知る必要さえもない」


 モモは記憶喪失状態であり、暗殺ギルドに入った経緯からしか自身を知る術を知らない。

 本人もそれでいいと思っているし、過去を思い出すことを忌み嫌っている。

 過去と繋がりがあるかは知らないが、お嬢様や王族や貴族、高貴を彷彿とさせる言葉が感情を昂らせる材料であった。


「モモ、私の顔を、姉の顔を覚えていないのですか?」


 ジャッカルの面を外すのは気が触れてしまっていると自分でも思ったが、どうしてもバンキッシュは確認して、やるべきことがあった。

 だから面を外して素顔を見せた。


 その素顔を見てモモの瞳がきゅっと縮まった。


「っ・・・知らない。お前など知らない。

 ――なのにこうも感情を逆なでられるのは何故だ」


 忌み嫌うワードを言われた訳でもないのに、バンキッシュの顔を見るだけで同じ気分になる。

 自分を少し成長させたような顔に容姿、姉なるもの、姉であろうもの。

 その存在が頭の中に現れては消える。


 過去の記憶が掘り起こされようとしている。


「それは貴女が私を恨んでいるからでしょう。

 私はモモ、貴女を無理がある訓練へと向かわせてしまった。

 どうしても融通が利かずに、貴方達をその訓練へと」


「黙れ!!!」


 冷静で冷徹が売りであったモモが声を荒げてバンキッシュの言葉を止めた。


 まるで頭の中を弄られているような感覚が続き、おかしくなる前に静止させた。

 これ以上は駄目だとモモは悟った。


「モモ・・・」


「それ以上騒ぐな、頭に響く・・・鬱陶しい何もかも、お前の存在そのものが鬱陶しい。

 だから殺す。

 だからこそ殺す。

 私の前で騒ぐ者は何者であろうと、殺す」


 モモは抜刀した刀を向けて、バンキッシュを暗殺すると決意した。


「・・・私の死に場所は・・・」


 バンキッシュは大きく息を吸って目を瞑った。


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