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105:顔合わせ

 イリヤといつもの調子で話を終えてから部屋をとった全員がイリヤと話したいようで俺と交代する。

 俺は次に話をしなければいけない相手がいる部屋へと向かう。


 イリヤが用意した部屋の一つにキュプレイナとガラルドだけがいた。

 他の部屋を先に荷物を入れてここを後回しにしているようだった。


「イリヤとはちゃんと話せたか?」


「あまりにも考えが温かったからこっぴどく叱っておいたよ。教育係が悪いね」


「お前がいてくれて良かったよ」


「そりゃどうも。お礼と言ってはなんだけど、やってもらいたいことがあるんだよ。

 キュプレイナからは話は聞いた?」


「丁度話していたところだ。

 お前ら本当に会いに行くつもりなのか?あいつの本性は残虐だぞ」


「ガラルド氏の言葉は信じています。

 私も自分の気持ちをしっかりと留めておきたいのです」


 キュプレイナが言うと、ガラルドが煽ったな?と目で言ってくる。

 何にもしてないのジェスチャーで答えておく。


「お前も行くのか?」


「そりゃあ勿論。

 俺はユーフォリビアの表も裏も知らないからね。

 一番の敵になり得る人物の情報を口頭だけでしか知らないって戦いとしては終わっているでしょう?」


「お前が行くと荒れるのが確定しているだろう・・・。

 絶対に不利なることは言うなよ。絶対だぞ」


「不利になることは言わないよ」


「だといいんだがな。明日にでも用意してやろう」


「そんなに早くできていいの?」


「もう序列は決まっているようなものだからな。

 お前達もその順で挨拶周りしてもらいたい。

 第一はハトハルだな。ついでにカレイズが付いてくるが気にするな。

 次にキュレイズ。事前に行くことは伝えているから、この二人は今日の内に回ってくれ」


「今日の内ってもう昼も過ぎたんだけど」


「そう思ったのなら行動しかあるまいな。

 行こうかリヴェン氏。ではガラルド氏失礼します」


「おう。ちゃんとそいつに手枷と首輪つけといてくれ。

 お前も絶対に不利になることは言うなよ!」


「はいはい」


 そこまで念を押さなくてもいいではないか。


 ハトハルの部屋は城の上層の玉座がある広間の近くにあり、魔王城で言うとリーチファルトが使っていた私用の倉庫になる。


 続けてヘクトルに案内されてハトハルの部屋までやってくる。

 部屋の前にはハトハルの息のかかった騎士団員がいて(ヘクトル談)睨まれる。

 睨まれたので笑顔で手を振り返しても表情は変わらなかった。


 ヘクトルが俺達の事を伝えると、仏頂面の騎士団員は部屋の中へと連絡を取って何度か会話をしてから扉が開いた。


 元々は倉庫でも人が住まえば改良されており、同じなのは広さだけであった。


 豪華なドレスが入ったドレス棚に高い金を出したであろうアクセサリーがあちらこちらに飾られていた。

 中央には大変質の良い高木から作られた丸テーブルがあり、その上にはマカロンやらクッキーやら甘めの菓子と、湯気の立つ紅茶が入ったティーカップとティーポットが置かれている。

 それらを食すのはイリヤが座っていた椅子よりも豪華で大きな椅子に座っているふくよかな体をしたハトハル・デブレ・ラ・メラディシアン。


 厚めの化粧をして女性になったドレイズ王。と、バンキッシュが言っていた。

 同じ肥やしを得た者は似るとは言うが、瓜二つと言ってもいいらしい。

 聞いた時は俺には判別をしようがなかったが、ハトハルの背後に飾られているドレイズとハトハルが描かれている夫婦画を見る限りは似ている。


 カレイズは見当たらない。変わりにお付きの兵団員が一人いるだけだった。


 ・・・奥に人の気配がするからカレイズはこの部屋の中にはいるな。


「お前達があの小娘の下についた者達だね」


 指が膨らみ過ぎて取れなくなったのではないかと思うほど指輪はぎっちりと嵌っており、笑いそうになってしまう。


「お久しぶりですハトハル王妃。

 この度はご愁傷さまでごございます。さぞお力落としの事でございましょう。謹んでお悔やみ申し上げます」


 キュプレイナがそう言ってもふんと鼻息を鳴らすだけだった。

 そりゃあ元々ハトハル側につく予定だった人物にそんな謹みの言葉を言われても腹が立つだけだろうな。


「ささやかながらの贈り物でございます・・・聡明であられたドレイズ王が生前好まれていた品です」


 懐から取り出した梱包された小さい箱を兵団員が受け取り、箱の上に手をかざして回す。

 どうやら指に着けている魔遺物で中の物を判断しているようだった。

 危険物ではないのを確認し終えて、ハトハルへと渡す。


 梱包を適当に破り裂いて中身を取り出す。

 中身は香木であった。

 ハトハルが好きそうなものを送るのではなく、あえてドレイズの好物であったものを送る。

 しかしそれをハトハルが喜んだ様子はなかった。


「で?お前は何をしているんだい?」


 部屋のあちらこちらにある宝石を見ていたのでやっと問いただされた。


「宝石を見ているだけだよ」


「お前に価値が分かるってのかい?」


「とりあえずこの棚にあるのはタンザナイト、パイライト、ペリドット、ウレキサイト、アゲット、ガーネットだね。

 どれも研磨が優れている一品だ。今の王妃様に似合うのはこれかなぁ」


 ペリドットのイヤリングを触ろうとすると、兵士に手を掴まれそうになったので手を止めた。


「嫌味かい?」


「嫌味なんて言っても美味しくないよ。

 因みに俺に似合うのはこれだね」


 巨大なウレキサイトの置物を指差す。


「安物って意味だね」


「そうとった方が心にゆとりが持てるね。

 あとはそうだね。その中指につけている指輪の宝石を今度送るよ」


 ペリドットの宝石言葉は夫婦の幸福である。

 嫌味と取られても仕方ないが、ドレイズ王との間に幸福があったのかを問うているのだ。


 そのためにウレキサイトを自分だと指した。

 ウレキサイトの宝石言葉は見通す心。ハトハル自身の心は見通しているぞ、と。


 ハトハルの中指に付いてる指輪の宝石はシリマナイト。

 宝石言葉は警告や厄除け。俺が意味しているのは宣戦布告に近い意味合い。

 ハトハルはただ宝石が好きなだけじゃなくて、好きだからこそ知識を持っている。おかげで意味は通じたらしい。


「そうかい。お前の事は覚えておくよ。ちゃんと今度持ってくるんだよ」


「質の良いのを用意させてもらうよ」


 そう言うとキュプレイナが挨拶をして部屋を後にする。部屋を出る前に踵を返して戻り、


「あぁ、そうそう。第一ご子息によろしくって言っておいて」


 と言って部屋を出た。

 ハトハルは口元だけで不敵に笑っていた。


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