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102:入城

 昨夜同様にミストルティアナの頭を軽く叩いて撫でてやる。

 結局不安を抱かせたまま俺達は王都へとやってきた。


 俺がユララ隊と戦った噴水広場は壊れたままで補修されていなかった。


 貴族達が住まう区画に入っても人通りは少ない。

 貴族のような人間よりも使用人だと思われる人間の方が通りにいる。

 貴族たちもどの派閥についているかで命を狙われる危険があるからか?


 王城前にやってくると、馬車は一旦止まった。

 どうやらもう一度荷物検査をされるようだ。


 前の馬車から数人の王国兵士と騎士団が入り混じって点検している。

 俺はパミュラの莫大な魔力が抑えられているか確認する為に馬車を降りた。


「やっはー、元気そうだね」


「君も元気そうで残念だよ」


 降りた直後に出待ちしていたのはユララ・マックス・ドゥ・ラインハルトであった。

 いつ見ても奇抜な服だな。


「うわー心の底からの言葉だーユララちゃん☆傷ついちゃう」


 拳を握って顎の下においてくねくねと身体を揺らすユララを見て、続けて残念な者を見る目で見続ける。

 首の皺をうまいこと化粧で隠していても俺には年齢が筒抜けだからね。

 それ相応の振舞いをしろとは言わないが、趣味はひけらかさない方がいい。


「何のようなの?」


「魔王様❤はユララちゃん☆にどの派閥に付いて欲しいかな?」


 つけまつげを瞬かせて上目遣いで問われる。

 俺に用事とは探りを入れる事か。

 どうせ殆ど決まっているくせに俺の出方を探って、どう関わろうか考えようとしている。

 どうやって俺を絶望に堕とすか、どうやってイリヤを貶めるか。

 ユララの頭の中はそんな陰険な事で一杯だろう。


「迷っているならどこにもつかないでいいんじゃない?」


「わぁ、連れないなぁ。

 ねぇねぇどこがいいかな?

 カレイズ君○?キュレイズ君○?シーマちゃん〇?ユーフォリビアちゃん〇?

 ねぇどこどこ?」


「・・・敢えて言うなら」


「言うなら?言うなら?」


「イリヤかな」


「・・・・・・・・・・・・・・・」


 ユララは固まる。

 外部からかき回されるくらいならば内部からかき回された方がマシだ。

 身内の事情で一番処罰し易いからね。

 仮にもユララは騎士団の重鎮であり、ドレイズ王と関りがあった人間。

 それがイリヤの側についたら力関係がまたも変わるはずだ。

 ユララはそんなのを望まない。


「どうしたの?俺の提案は不満だった?」


「んーん。それも結局ありなのかなって考えてたの」


 ユララは真剣な表情でそう答えた。

 読み間違えたか?いやユララも一度ならず何度も考えている。

 今の言葉がその証だ。

 読み間違えたとしたら、それはユララがどこの派閥につくのかを本当に迷っているということだろう。


「困ったにゃ~ユララちゃん☆は困ったにゃ~」


 腕を組んで首を右へ左へと傾げる。

 その間に俺達の馬車の荷物が検査される。騎士団と兵士が魔力測定器をかざして荷物をチェックしている。

 危険物と言えるのはパミュラの眷属ヴィヴィアンか。


 パミュラの甲冑とヴィヴィアンは魔力を抑える機能が備わっているようで、無害な魔遺物を装える。


 しかし自身で制御できないのでアマネが近くにいないといけないのだ。

 そのアマネが昨日飲み過ぎで二日酔いになっているから心配なのだ。


「あれ、気になる?」


「まぁ魔遺物には興味があるね」


「そっかそっかぁ!魔王様❤もユララちゃん☆と同じか、おっと、触れるのはご法度だね」


 嬉しくて肩を叩こうとした瞬間にバンキッシュとミストルティアナとパミュラから殺気が放たれて直前で止まる。

 二人は勿論なのだが、パミュラは俺を現在の魔王と思っているようで、不用意に近づく者、触れる者に敵意を向けるようになっている。


「暇だったらユララちゃん☆の研究室においでよ、ユララちゃん☆特製の試作物を見せてあげるよ」


「暇があったらね」


「意地悪だな~そんなにユララちゃん☆の事が嫌い?


「嫌いだよ」


「それって好きな子の気を引くためだよね?おませさんだなぁ。

 それじゃあユララちゃん☆準備があるから退散退散~」


「で?結局どうするのさ」


「ひ・み・つ」


 鬱陶しいと思わされたら負けな気がするので笑顔で見送ってやる。


 ユララは検査をそっちのけで王城へと戻っていった。


「やはり彼女は警戒しないといけませんね」


「警戒はするけど、し過ぎも注意ね」


 検査に引っ掛かった小さな荷物の説明をしていたモンドが仕事を終えて話しかけてきた。

 どうやらアマネを介抱してうまい事凌いでくれたようだ。


「そもそもこんな大勢がいる場であんな話をする意味が・・・」


「こんな大勢がいるからこそ仕掛けてきたんじゃないかな?

 王国兵士に騎士団。その中にも派閥が合って、ユララ自身はまだどこにも身を置いていない。

 彼女が俺達と関りがあるという情報だけで、更にイリヤが警戒される」


「なるほど、尋ねる振りをして場を乱しているのですね。食えない人ですね」


「振りかどうか知らないけどね」


 全馬車の検査が終わり、前の馬車が動き出したのをみて俺とモンドは馬車へと戻って入城するのであった。


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