95:王位継承権
いつになく心の中がざわざわする。
何でだろうか?
ここ最近のことを思い返してみる。
都内で一悶着あった。
隠者の森で更に一悶着あった。
そして王の崩御からの王位継承の開始。
これらの連続で心の中がざわざわしているのだろうか?
王位継承権は争奪になるだろうな。
遺書もないし遺言もない。
暗殺されたので、従来通りとはいかない。
王子王女が王位継承式までに生存していることが大事なのだ。
つまりは生存競争の通過点。
そう、王位継承生存競争。
こんな血みどろに塗れた事になるのは前王ドレイズ・デブレ・ラ・メラディシアンが後継者を決めていないから。
そんな王位継承権がある人達を紹介しましょう。
まずはドレイズ王の弟、キュレイズ・デブレ・ラ・メラディシアン。
弟と言ってもドレイズ王が長男ならキュレイズは七男。
歳の差は十七。兄弟と言うよりは親と子みたいな感じ。
ドレイズ王生前は仲が良く無かったし、無茶な難題を押しつけられたりして王都には在中できていなかった。
可哀そうな王国騎士団団長である。
強い正義感を持っているが、上の立場には逆らえない小心者。
国民からの人望はそこそこある。
そもそも王国民はドレイズ政権のせいで疲弊していて、それを改善しなかったキュレイズには呆れていたりしている。
板挟みで可哀そうだ。
彼を支持するのは王国騎士団。
と言っても騎士団内にも派閥があるから、全員って訳ではない。
次。
ドレイズ王の妹シーマ・デブレ・ラ・メラディシアン。
彼女は三女である。ドレイズとは仲が良く、身体の関係もあった。
王国民からの評判は良く無い。
ドレイズと共に甘い蜜を吸っているのを表立ってやっていたせいでもある。
傲慢で我儘な女になったドレイズと言われている。
彼女を支持する団体はギルド商会だったのだが、まぁ後に語りましょう。
次ね。
ドレイズ王の長女、ユーフォリビア・デブレ・ラ・メラディシアン。
あのドレイズ王から生まれたとは思えない程誠実で謙虚な娘。
特徴的な黒髪に優しそうに微笑むのは母親似なのだろう。
彼女を支持するのは中央遺物協会。
現代っ子って事もあって魔遺物に精通している。
博物館の運営や、隠者の森を庇っていたりしていることもあり、国民からは好かれている。
次です。
ドレイズ王の四女カナビナ・デブレ・ラ・メラディシアン。
特に言うことは無いかな。
姑息で卑怯で卑屈とかかな。国民からの期待値も薄い。
王位継承権はあるけど、シーマの使いっぱしりだから興味がない。
次々。
ドレイズ王の長男、カレイズ・デブレ・ラ・メラディシアン。
男にほとほと興味がなく、長男という事でドレイズ王に酷く扱われた過去がある。
現在はキュレイズと同等程の強さを持つので、跡取りに認めてやっても良いと言われ好待遇。
王国兵団の兵団長をやっていて人望も厚い。
兵団は一般市民が多いから国民の人望も厚い。
しかし幼少期に母親に甘やかされたのでマザコン。
そして次。
ドレイズ王の次男、ジライズ・デブレ・ラ・メラディシアン。
カレイズとは双子であり、同じ境遇で生きてきた。
彼もまた兵団長だが、口下手で他人に厳しい。
自分にも厳しいので人付き合いがうまくいっていない。
王位継承権は殆ど放棄して兄の手助けをしようとしている。
次がなんと、今回のダークホースである人。
死人だったし、歴史から消されていた十七王女イリヤ・グラベル・メラディシアン。
デブレじゃないのはドレイズ王の子ではなく、クレイズ前王がどこかの没落貴族の妾が孕んだ隠し子であるから。
突然現れた王位継承者に内情は混乱していた。
付きの者があのガラルド・ヴェンジェンスであり、継承紋を持っているから認められ、最初に施行した政策は犯罪者への恩赦。
これにより無実の罪で捕まっていた人間が解放されて、イリヤに指示を集めた。
ガラルドの片割れのダントが考えたと思っている。
彼女に助けられた・・・というよりもリヴェン・ゾディアックに助けられたのがギルド商会で、ギルド商会はイリヤを支持するようだ。
これが王位継承の力配分を大きく動かした。
全員がイリヤの存在を脅威に思ったはず。
荒れます。
この王位継承生存競争は荒れます。
前回はドレイズ王がスキルを使って沢山の兄弟姉妹を毒殺したようだけど、今回はそれよりももっと直接的になる。
だからか。
だからざわついているのかな。
あと四人王位継承権を持つ人間はいるけど、しょーじき興味ない。
だって大きな力も後ろ盾もいない雑魚だから。早々に死ぬと断言できる。
はぁ~、ユララちゃん☆はどこに就けばいいのかな?
カレイズ君とは母の温もりを求められて関りがあるし、キュレイズ君とは騎士団繋がりだし、シーマちゃんとはお菓子も食べたりするし、ユーフォリビアちゃんには魔遺物を譲ってもらっているしな。
あ、イリヤちゃんのところに着くのが一番楽しいのかな?
うーん、でもそれだと大勝して詰まらなくなりそう。
あぁ。
あぁ、興奮するな。
王城内、王国内が血生臭くなる時期だ。
その匂いはユララちゃん☆にとってはとても甘美で身を捻じれさせてくれる。
王様×を殺す依頼を受けてよかったよ。
流石にスキルを行使されそうになった時は焦ったけど、殺せた。
どうして?何故?みたいな顔がたまらなかった。
信じていたものに裏切られた時の人間の絶望的な顔が好物だ。
あ、そっかぁ、そうすればいいんだ。
さぁさぁとんとんと混沌を振りまいて行こう。
ユララ・マックス・ドゥ・ラインハルトは三日月のような目と口で笑いながら、過ぎ去った過去を捨ててドレイズ王の私室を後にするのであった。
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