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第4話 シャバからの帰還

高校時代を思い出してメンタルが削られる・・( ;∀;)

 オーラ、そういう表現が適切だろうか。


 今日オレが見た光景の中にいた人々の周りには全員が薄い光の膜みたいなもので覆われていた。多少の光の大きさや色には個人差があるが大したものではない。



 ーー唯一の例外を除いて、


 ユウタだ、あの勉強できてバスケ部の実質のトップで彼女までいるリア充を煮詰めて飽和させたようなあの野郎。エリザがエゲツないと言ったのも頷ける。


 一言で言うとバカみたいにデカい光が全身をとりまいている。あろうことかその膨大な光がなにやらヒトの形をかたどっている始末だ。


「あれ何なの?」


 思わずそんな言葉が口から出た。よくはわからんがコイツがとんでもないチートスペックを持っていることは存分に伝わった。


 エリザがすでにオレが立ち止まってから何回目になるかわからない信号の入れ替わりを見ながら答える。


「あれはな、自信、他人からの信頼、その他のいろんなプラスの要素が混ざり合って顕現した個人の持つエネルギーだ。あれが生きる力やお前らでいうところの運命ってやつに影響してくる。」


「ハッ、なんだそれ。」


 "個体値から違うんだよ、テメーとユウタでは。"ポ〇モンでいうところのそんなセリフを言われた気分だ。


 暗にエリザは今、積み重ねてきたもの、歩んできた人生にあいつとおまえでは差がありすぎると明言しやがった。


 ふざけんな、オレだって努力したさ。わりと自分にとって居心地のいい生活を送るために。


 家でダラダラと寝転がりながらスマホ触ったりマンガ読んだりするために、部活の休む回数をそれとなく増やしていって"オレが休んでも誰も気にしなくなる状況"をつくりだそうとした。


 そんなんだったらサッサと部活やめちまえって?


 毎日は嫌だけどたまに来て軽く運動したかったんだよ!!


 それだけじゃあない、オレは"ゆるーくダラダラした部活"を実現し、なあなあで楽しくバスケがしたかっただけなのにユウタの野郎がやる気があって入部当初からオレよりもすでにバスケがうまかった後輩たちを巻き込んでガチでやるヤツ以外はお断りのチームをつくり上げやがった。


 当然だが陰ながら、ユウタの政策に対してディスったり反抗まがいのことはやった。まあ反抗勢力の全員がユウタと敵対することを恐れて保身に走ったが。



 ・・・よく考えたらゴミみてーな野郎だな、オレ。



 なるほど、この光の正体が人間としての成功者てきな要素に関係していることはよくわかった。


 で、おれのオーラはどんなもんだったかって?


「その辺に群れている知性を持たない畜生どもと同レベル。スズメやアリと同じ。」


 エリザの野郎がそう付け足しやがった。


「まあ、ハナからテメーに正のオーラの素質なんかは全く期待しちゃいねー、それよりも見ろ。」


 そう言ってエリザが見せたのは先程見せた光景と似通っていた。ただ、決定的に違う点があった。


 こんどのクラスの奴らを覆う薄い光はさっきの光とは真逆、まさに負のオーラ、そう形容するにふさわしいジメジメしてそれでいてネバネバしてそうな暗色の粘膜のような光だった。


 そのなかでも異彩を放つほどの負のオーラを纏っている奴がいた。生ごみを腐らせに腐らせたかのような存在感、こいつとはマジで関わりたくない、そう思わしめるポテンシャルだ。

 まさに生きながらに負のオーラを垂れ流しにしているような奴がいた。




 誰なんだ、そいつは・・・




 ーーオレでしたがなにか?





 すげー、素直に自分の負のオーラに感動するレベルだわ。なるほど、クラスの陽キャ共になじめねー訳だわ。


 確かにこれほどの負のオーラがあれば何かしらやれそうな気がする、そんな気がしてきたわ。実際にエリザもオレのこのゴミを煮詰めて積み重ねたようなオーラを目にしてオレに近づいたのだろう。


 そうなるとストンと頭の中のピースがはまった。



 仕事、そうエリザは昨日いっていた。そしてモンスターをハントするとも。何となく今の映像を見せられることで察しがついたが、あえてオレはエリザへと確認のために尋ねる。



「エリザ、要するにユウタの正のエネルギーを弱体化させたいわけか。」




 ふぅーー、そう吐息を漏らすとエリザは答える。



「その通りだ。強大すぎる正のエネルギーは周りの人間も巻き込んで増大していっちまう。ただ問題なのはその正のエネルギーの増大の陰には本来、人に備わっているはずの負のエネルギーが元の持ち主から別の人間になだれ込むことだ。


 ーー風呂に例えるとわかりやすいな、


 熱い湯は浴槽のどんどん上のほうに集まるが冷たい水は底のほうにどんどん溜まっていくだろう。それと一緒で、正のエネルギーが偏れば偏っていくほど負のエネルギーも偏っていく。



 そうして負のエネルギーが一人の人間に集中して生み出される存在自体がマイナスの生物、"廃人"が生み出されるんだ。」



 なるほど、要するにコイツが言っていることは最悪の負け犬である廃人を生み出さないために勝者を潰したいってとこか。


 しかしその理屈だと負け犬、もとい廃人はどうやって処分するのか、それに害を直接的に他者に与えそうなのは間違いなく廃人のほうなのに勝ち組である陽キャを潰すのはおかしくないか。



 ふとした疑問がオレの頭をもたげる。


 エリザがそんなオレの思考を読み取って答える。


「そこなんだよ、私たち管理者も最初は次から次へとうじゃうじゃ出てくる廃人を叩き潰してた。でも潰しても潰してもキリがない。そこで廃人がなんで生まれてくるのかに目を付けたやつがいた、効果は絶大だったよ。強力な陽キャを少し潰すだけでそいつの担当の地区の廃人の発生率は激減した。


 ま、要するに人間のエネルギーバランスを管理するのに陽キャを駆逐するほうが私ら管理者は楽なんだわ。」



「ただの怠慢ヤロー共じゃねーか。」



 ・・・っ、この野郎シカトしやがった。




「修行すっぞ」




 は?

 今の話は終わりだといわんばかりの強引な話題のとばし方でエリザはそう言う。



「テメーの廃人としてのチカラを今から完全に目覚めさせる。」



 こうして、よくわからんままにチャリで家に帰るなりオレは意識を失った。

















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