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第3話 チート野郎をぶちのめせ

ふと釣りがしたくなる今日この頃です。

 

 朝、目がさめる。


 どうやらそのまま寝落ちしていたようだ。


 耳に突っ込んであったままのイヤホンを外して先ほどから寝起きの眼には強すぎる光を放つ部屋の電気を消す。


 何やらロクでもない夢を見ていた気がする。


 確か天使を名乗る口の悪いロリ娘と話していたんだっけ、


 夢でまでそんなものを見てしまうなんてヤキが回ったな、そんなことを思いつつも体を起こす。



 ーースパァンっ!!



 朝からオレの部屋に快音が鳴り響いた、



 顔面がヒリヒリする、普通に痛い。



 視界が何やら紙のようなもので遮られて前がよく見えないが前方から声がした。



「てめえ誰がロリだぁ、次言ったらドタマかち割っぞ!!」



 そんな関西でもごく一部の地域の人々のみが完璧に扱うことのできるエリート言語を話す少女の声、



 オレの寝起きの頭からスーっと血の気が引いていく、



 あいつだ、あいつがいる。



「エリザじゃ、ボゲェ!!」



 ハリセンが今度はオレの脳天に直撃するのを実感しながら目の前をおそるおそる見る。



 ーー夢じゃなかったのか、



「当たり前だ。」


 そう言うとエリザは部屋の隅に置いてあったカバンをオレの元へ放り投げる。



 てか、当たり前のようにオレの脳内の思考を読み取るなよ、そんなことを思いながら既に自分がシワだらけの制服を着ていることに気づく。



 もう着替えるのも面倒だし昨日と同じ制服でいいや、そう考えカバンを持って下に降りる、



 父さんも母さん既に仕事に行ってしまったらしい、時計を見ると学校まではチャリで20分くらいだからまだ余裕がある。


 オレは朝ドラをつけてテレビから流れてくる昔訛りの会話を聞き流しながら食パンを袋から出してそのまま齧る。



「ふむ、今のパンもなかなかにウメエな。」



 声のする方を見るとエリザが宙にフヨフヨと浮きながらそんなことをのたまう。



「おまえ食ってもいないのに味とかわかんの?」


「まあな、厳密にはおまえの味覚をちょっとばかり貰って味わってる。」


 なるほど、道理でさっきからパンの味がしないわけだ。なんか口の中に食感だけが残ってまるで食べている気がしない。


 ただ確実に自分の腹に今食べたパンは収まった感覚はするので不問にする。


 こんなことで朝から脳みその容量を使いたくない。



「ところで昨日おまえが言ってた仕事ってのは何すんの?オレ学校行くんだけど。」


 夢の中の記憶をふと思い出してエリザに尋ねる。



「安心しろ、すぐお前に働いてもらうつもりはない。今日は私も様子見ってところだ。」



 それを聞いてオレは安心すると家のドアノブに手をかけた。




 ****************************



 ーーガススッ


 建付けの悪いドアを重心を後ろに傾けながら開けて席に着く、


 その直後に始業のチャイムが鳴る、通学してはや2年が経った今では秒単位の感覚でオレは始業ギリギリに着席する時間感覚を身に着けた。


 いつものことだがクラスで学校に来るのが最も遅いのはオレだ、オレは担任が出欠をとるのに間に合うギリギリの時間までは家でゴロゴロしていたい派の人間なのでな。


 朝早くにきて予習したり友達と喋ったりしないのかって?


 朝からはマジでキツイ、



「ホントにカスだなコイツ。」



 そんな声がどこからか聞こえてきたが無視する。



 朝のホームルームで担任が今日は思ったよりも寒いので体調に注意してくださいとかなんとか言ってるのを聞き流しながらふと思う。



 学校は一言でいえば暇つぶしだ。家にずっといてネットの海に沈んだり一日中オンラインで将棋やっててもいいが、やはり飽きるのだ、



 それではつまらない。



 相容れなくても気に食わなくても新しい価値観を知ることができると思えば学校にいる人々はそれなりには許容できるし毎日似たような光景を繰り返すがそれなりには面白い。


 ああ、そういやこんな理由で高校行ってたんだ、


 ふと自分で納得するとそろそろ1限が始まる。

 そして大体いつも国語からオレの高校の授業は始まる。今日もそうだ。



 一日が終わったらなんも思い出せない授業を耳に入れ板書をとっていく。


 そういやさっきからエリザ、自称天使の姿が見えないがどこ行ったんだろう、





 ーー別になんもした記憶はないけど放課後になった。



 しいて言うなら英語の時間に林先生に起こされたことくらいか。


 あとは休み時間に適当にいつもの群れの中に混ざって話をきいて適当に合わせたくらい。オレのクラスは女子の母数が圧倒的に多いので自然と少数派の男子が集まる。


 ちなみに俺含めて群れの数は7人でオレ以外に全員が彼女がいたことがあるというこの虚しさ、クラスのカースト上位にいる女子どもからも群れの中でオレが一番ダサいと陰で言われる始末だ。


 そしてその集団の中にはユウタもいる、オレ以外全員がサッカー部のキャプテンだったり陸上部の部長だったりで一言で言い表すならマジモンの陽キャたちだ。



 今日もつくりなれて最早、自分の人格の一部となった陽キャの仮面をかぶって1日やり過ごした。



 話や価値観は合わないので基本は合槌打ってばかりだが、会話に入っていて

 やはり、上手いな、そう思う。


 会話の主導権握って話す奴らは相手がどう返してくるのかまで計算に入れて話をふっているのだ。だから相手の返答に合わせて機敏にオチをつけられる。


 最初に会話の流れを作って相手が自分のフリを返しやすい下地もちゃんと作っておくというおまけつきだ。


 つくづくかなわないなと思う。


 なんか今日も既に疲れた、オレは迷わずチャリ置き場へ直行してチャリのカギを鍵穴にぶっさす。


 部活?知らん、帰ってAV見てダラダラして寝る。




 全速力でオレがチャリを漕いでいると



「やべえな、エゲつないのいたわ。」



 さっきまで存在を忘れていたエリザが地面から上半身だけ出してオレのチャリに並走しながら現れる。前から家の近くの別の高校の生徒が乗るチャリをすり抜けて舌打ちをしているふてぶてしさだ。


 どんなホラーだよ、というのは言わない。いちいち気にしていたら負けな気がするから。


 目の前にちょうど信号があったので青だったがチャリを止めてエリザの話を聞くことにする。


「で、どいつがエゲつなかったの?」


「まあツラかせや。」


 そう言ってエルザは地面から上半身しか出していなかった10才くらいの小さな少女の体を宙に浮かすとオレの頭に腕を透過させて突っ込んだ。


 何やら宙に浮いた少女の手がオレの頭に突き刺さっているかのような光景を眺めていると瞬間、今日の学校での記憶が雪崩のようにオレの脳内に押し寄せてきた。



 ーー数秒後



「ハッ、こんなの笑うしかないわ。」



 オレはちょうど点滅しだした青信号をまえにそう呟いた。














読んでいただきありがとうございます。感想・評価いただけると嬉しいです。

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