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第2話 このリア充がっ!!

近くのスーパーで5本で120円のバナナを買った。値下げって素敵ですよね。

 羽をはやした口の悪い少女はニッコリ笑っておれにそう告げる。


 どうやらオレには陽キャを陰キャに変える才能があるようだ。


 ということは学校のクラスに一人はいる自然にそいつの周りに人が集まってみんなを団結させたり体育祭とか文化祭で輝きまくる()()()()を教室の空気と同化して休み時間はずっと机に突っ伏して過ごす好ましい人物に変えられるというのか、


 最高じゃないか!!


 てかこのクソガキ、いやマジモンの天使さまがオレの前に現れた幸運に感謝する。


 そうと決まれば力の使い方を聞いてみる、


「で、どうやってその能力使うの?」

「まあそう急ぐな、ものには順序ってもんがある。」


 そう言って天使から渡されたものは藁人形だった。よく呪いとかで使われるアレだ。


「これでテメエの詳しいオーラの性質をみる、この人形をクソむかつく奴だと思ってすぐに浮かんだ感情を思いっきり込めろ、念じるだけでいいから。」


 そうして少女が投げてよこしやがったわら人形をまじまじと見つめる。


 思い浮かべるのは当然やつだ、オレの帰り道に彼女はべらせて出没しやがったアイツだ。勉強もできてスポーツもできてことある毎にあいつのやること為すことに巻き込もうとしてきたアイツ。


 部活おわって部室でダラダラそれぞれ好き勝手にソシャゲしてたら、みんなで人狼しよーぜとか言い出してパ〇ドラしながら片手間でやっていたら、それが気にくわなかったのか負けたやつは罰ゲームとして学年のSNSのグループに下ネタの書き込みを強要させる(実際にやらせた)あの外道、


 自分の意向にそぐわない人間は情け容赦なくあらゆる手法で叩き潰し常に集団の真ん中にいるあの鬼畜、自分が話したいときは他人の会話も何のためらいもなくブチ切るエゴの塊。



 思い返すだけでも全身に悪寒がはしる、ユウタだ・・・。


 自然と手に握る力が強まってイヤな汗がにじんでくる。ふと握った手に視線をうつすと先程渡された藁人形に変化が起きていた、いや、変化というよりもこれは・・・


「人形の跡形もなく溶かしちまうたあ、きっしょいな。」


 少女がかるく引きながらオレの手の中を見る。


 ・・・っ、確かにこれは控えめに言っても気持ち悪い。手にこびりついて取れないアラ〇ックヤマトみたいなネバネバな感触があるのだ。こんなんが自分のオーラの性質なのだとしたら笑えない。



「まあ、見た感じおまえのは陰だな。」


 そうして少女はオレのオーラの性質についていろいろと教えてくれた。




 ーー陰と陽、



 この世界には2通りのチカラがあるらしい。



 陰のチカラ、それは無条件で他人や周囲のモノにマイナスの影響を与える、いわばデバフの能力。




 一方で陽のチカラ、これは陰のチカラと対象的に周囲の人やモノにプラスの影響を与える、つまりはバフのスキルというわけだ。



 その中でもオレは前者のチカラの性質を持っているらしい、まさに陰キャってやつだろうか。



 そしてこの陰のチカラと陽のチカラはどちらも互いに反発しながらも絶妙に人やモノの魂のバランスを取っている、



 例えるならば、強酸と強アルカリ、それらが互いにその性質を打ち消しあって人の肌を溶かさない快適でバランスのとれた世の中を実現させている。



 しかしどちらかの性質が急激に弱まったり強くなったりすると話は変わってくる。



 具体的には片方の強くなったチカラが暴走してこの人間の魂の均衡を保つエネルギーバランスを破壊してしまうということになる。


人間の核ともいえるもの、それが魂である。その魂が壊れたり歪みきってしまった人の末路は悲惨だそうだ。




ーー廃人




そう呼ばれる人々はもう何が正しくて何が間違っているのか分からない、生きているだけで苦痛、そんな状態に常に陥ってしまい異常な言動をひたすら訳も分からず繰り返してしまう屍になるそうだ。


近頃のニュースで流されているメンヘラ眼鏡が彼氏を愛しすぎて殺害した事件や下校中の幼稚園児を50歳の無職の男性が無差別に死傷させていった事件も廃人、そう成り果てた人々によってなされたそうだ。


 だからもしこの世界での陰と陽のパワーバランスが崩れてしまうと天災、そう形容するくらいでは足りないほどの廃人が溢れかえりおびただしい数の人災がを現実世界を襲う結果になるそうだ。





「ま、その世界のパワーバランスの崩壊を食い止めて廃人の発生を阻止するためにお上から派遣されたのが私ってわけだ。」




 天使がまな板のような胸をストンっと張ってそう言った。



 ・・なかなかどうして目の前のこいつが言うと真実味を帯びてくるな、


 そこでオレは一つ聞いてみることにした。


「じゃあ、お前は天国から遣わされた天使ってところなのか?」


「まぁ、間違っちゃあいねぇな、」


 少女は鷹揚に頷くとそう言った。


 そしてまたもや何処からか少女はハリセンを出してオレの頭をシバいてきた。



「てかお前いい加減に私の名前聞けや、リアルでもどうせそんなだから友達できねーんだよ。」



 ーっつ、痛いとこ突いて来やがる。だが一理あるな。



「すまん、悪かった。名前はなんていうんだ?」



 "オマエ"とか言っちゃうとまたハリセンで上下関係うんぬんとかで両手をハリセンで消し飛ばされるかもしれないのでここは下手に出る。



 すると少女は待ってましたとばかりに口を開いた、


「わたしは常世の管理者、アリザだ。」


「オレは部活やめたい高校生、山下 (のぼる)だ。」





 こうして2人の物語が幕を開けたーー







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