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『三つの部族について思いつく限りを記す』 ~~ガ族もしくはグ族と呼ばれる民について小項~~

『三つの部族について思いつく限りを記す』


 本来は最大の部族であるパ族について記さねばならぬが注意事項の多いグ族から行うことを容赦されたし。

 三つの部族について容姿的な特徴は既に述べた。


 中でもガ族についてはゆめゆめ注意されたし。

 特筆すべき理由を以下に記す。


 彼らは食人部族である。

 特に日本人の肉を好む。


 彼らは裸族である。

 きわめて魅力的な体を誇って隠さず、上品な顔立ちも相まって遠く異国の地にてモデルとして活躍する者も多くいる。

 彼らの『呪紋』や化粧技術は煽情的な身体を強調するを是とする。

 男女ともに日本人、欧米人から見て魅力的な容姿を誇っている。


 なお、本文で時々『グ族』と表記しているがこれは意図的なものである。

 正確には『ガ』と『グ』に近い発音である。

 言語学的には『ガ』族が近く、彼らの発音的には『グ』族が近い。

 ただしはっきりと『グ』族と呼ぶと彼ら彼女らの逆鱗に触れることになるので注意されたし。いにしえの時代では『ィエルパ』と呼ばれていたらしいが語源は不明である。



 女子おなごには注意されたし。上は豊満かつゆるぎなき高峰を震わせ、中は強靭かつしなやかな腹部をもって誘い、大きな臀部としなやかで長い脚部、長く強靭な腕と肩を持ち優れた魅力と身体能力と驚くべき執念を持って想い人を島の果てまで追い詰める。男子も体格が大きすぎるきらいはあるが女性を上位とする社会ゆえ日本女子にとって魅力的なふるまいをみせる。


 彼らは男女ともに体格面でほぼ遜色がない。

 ボディビルダアを思わせる体型だがしなやかさもあり平均的な日本男子では彼女らの餌食でしかない。

 その上背は約180センチほどである。男子は勤めて彼女たちと関わることを避けよ。



 彼ら三部族は女系社会であるがガ族のそれは極端である。


 ガ族の未婚の男はすべて生まれながらに『ポ』(ねずみ。もっとも小さな恵み。無職。海に出られぬもの。勇気なきものなどの意味を持つ)であり、個別の名前すら与えられない。

 他部族は所謂カナヅチ、泳げぬ男などを『ポ』におくが当然一代限りで彼らの感覚では差別とか身分とかいったものではなく『ポ』は『ポ』である。


 彼女らは他民族を含む男性をすべて一括して『ポ』と呼ぶ。あるいは複数形として『ポポ』と呼ぶ。


 もし彼女らが汝を『ポポポ』と呼ぶ場合、家族、即ち勇気を認めた男である。

 ポポポは他部族からの憎名をもって己の名誉ある名とし、妻に通うことを認められる。

 ポポポになりたい男は武勲を示し、彼女に微笑みかけることで通婚の申し込みとする。


 これを『ニコポ』と呼ぶ。

 もし『ガッ』と返事されたら全力で逃げること。

 そして『スパァン』と激しく打たれるのでこれを回避すること。

 それが叶わぬ場合は『バグ』と呼ばれ囚われの身となる。

 こうしてポポポは家に囚われ女に囚われ家庭を得る。


 故にガ族の女は家庭で最も勇敢で強靭な戦士たれと教育される。

 家事労働はガ族において男性もしくは別部族より『迎えた』女の仕事である。

 狩も男性の仕事である。戦いも先陣を切るのは男性である。


 では女性は何をするのかと言うと訓練をするか育児を女性だけの集団で分担して行うか、あるいは寝ている。

 寝ているということは平和な証である。


 妻が寝れば皆が寝る。



 理想的な敵との戦い。

 もしくは無限の睡眠と子宝に恵まれる。

 これをもって喜びとする。


 女性が積極的に家事や狩りや漁をする場合、または若い娘が家事や狩りや漁の練習をする姿が散見されるがこれは家長の特権を振るっているもしくは好きな男性がいるという証になる。


 これが異民族ならもっと厄介だ。特に日本人は家の名である『名字』、家の位置を意味する『屋号』。血族を意味する『名字』、陛下の一族から与えられた役職である『姓』を名のってもいいが親から与えられた『名』を名のってはいけない。

 彼女らの愛情は蟷螂のそれに等しい。その両の鎌に囚われぬようゆめゆめ注意されたし。



 理由はよくわからぬが、彼女らにとって我が国の民は勇敢で公正なる戦士の部族らしい。


 自分を例として考えるに明らかなる誤解なのだが彼女らはそう信じているので、鼠の皮をかぶりたくないならばどこぞの怪しげな娯楽小説をうのみにして渡航するような愚行を絶対に犯さないよう注意してほしい。


 彼らは我が国の男を極めて貧相貧弱な体に反して『戦略拠点以外を焼かぬ』『家屋から奪わぬ』『女を犯さぬ』『非戦闘員を殺さぬ』を是とする勇敢で公正な戦士と見なしている。それはある意味合っているのだが単純な退廃趣味活動オタクの結果好きなことに専念してしまって魅力的かつ極めて危険な彼女らに接するを避けるだけと説明しても理解されない模様だ。


 彼ら彼女らは特殊かつ豊富な顔料を使いこなす化粧の達人だ。

 老人が若者に若者が老人にと化けてみせる。その美貌を醜くするのもその逆も自在だ。

 これを要所に塗って、あるいは線として引いて身の飾りとする。こまったことに装飾品すら身に付けない。

 特殊な例としてはある場合において音を出さないように特別な靴や山において皮膚を切らないよう衣装を着ることはあるにはある。だがめったにない。


 彼もしくは彼女たちは自分たちが魅力的なことを知っている。

 男たちは部族内で『ポ』であっても他部族にとってはあまり関係がなく等しく男として迎えられるのを知っているので武勲を磨くことに余念がない。また相手が日本人ならば自分で日本名を申請することは法制度上可能である。そのほか日本式学校などでは便宜上日本名を自分たちで勝手に名乗っているがこれには古老も女たちもあえて何も言わない。ノブナガ、ヒデヨシ、イエヤス、マレスケ、イマムラ、ウシジマなどの彼らにとって『長い名前』が人気である。


 彼らはすさまじい戦闘民族である。

 海賊行為を是とし、激しく敵と戦う。

 農耕や漁業は基本行わないし狩も基本行わない。

 鼠皮の仮面はこの時恐怖の印となる。


 奪ってくるのが名誉であるが女子の貞操を同意なく奪うことは是としない。

 ただし侵略者に対してはその限りではなく殲滅を是とする。


 彼らは強く良き敵こそ最大の友と信じている。

 よってまれに敵対者を見逃すことがある。次に戦うときは更に良き戦いを期待してのことなので注意されたい。

 戦いに勝利した場合、殺すに惜しい友と認めた時は彼もしくは彼女の身体の一部を口に入れる。

 近年は血や唾液のみにとどめることも増えたようだが『腕をもぐ』『足を食いちぎる』『目玉を目の前で食む』などの凶行はめずらしい事ではない。


 彼ら彼女らは良き恨みと憎しみが友情を育むと本気で信じている。

 彼らの最大の娯楽は戦いであり、次点が寝る事である。これは男女の営みも含む。

 もっとも彼らの男女の営みは我々のように拙速なものではなくお互い協力しあい愛情を確認しあい数週間をかけてゆうくり高めあうものである。せっかちな御仁にはお勧めしがたい。


 近年は彼らに『プ』(犬)ということはお勧めできない。

 これは彼ら言うところの『糞戦争』(グ・ゴ)において我ら軍の者たちが行った独断が原因となっている。

 迫りくる敵軍に対して断固戦闘を挑まんとする彼ら戦士たちに侮蔑の言葉を投げかける機転を見せ、島民全てを島から逃がした守備隊たちは出立する彼らの脱出舟に向けて浜にて『ニコニコ笑って手を振っていた』。


 以降、帝国軍では派遣先及び現地の風俗風習等についての講義の時間を設けることになっている。


 とにもかくにも彼らはこのことを借りと見なし、未だにその恩と恨みを返せていないと積極的に治安維持に協力的な態度を見せるようになり、その態度が日本人の『プ』であると他の二部族から揶揄されるようになったのである。もっとも5000年前はさておき今の三部族に犬を飼う習慣はないので日本人の使う言葉から学んだものと思われる。


 租借地を貸してくれたのもかつての『糞戦争』でともに戦えなかった悔しさと婚姻を結ぶべきはずだった勇ましき男たち(※ほぼ全滅した)への礼の一環に過ぎない。

 彼らは恩を返す義理堅い戦士の一族である。その憎愛は一括されたものであり境などはない。

 くれぐれも彼ら彼女らの義憤に触れないように現地では自重した行動を取ってほしい。

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