第一の夜
どこからか秒針の音が聴こえる。
規則正しく重々しい音が。
微睡みの中ゆっくりと瞼を開くとそこは見慣れない部屋。
一人暮らしのアパートに置いているベッドとは似ても似つかぬ天蓋付きのベッドは、ぱっと見でもキングサイズはあろうかという大きさで訳もわからず起き上がってみる。
部屋を見回してみてもやはりここは自分の部屋では無いと確信するばかりの豪華な部屋だった。
大きな扉だけでなく窓枠にまで細かな装飾が施され、クローゼットや机といった家具も壁紙、絨毯と全てが高級そうに見える。
ここは一体どこなのだ……?
寝起きの霞がかかったような頭が次第に明瞭になるにつれ、部屋の違和感に気付いた。
部屋が全てモノクロなのだ。
部屋だけでは無い。窓から見える外の景色、空も木々もモノクロ。
自分自身でさえもモノクロになっている。
……どういうことだ?
恐る恐るベッドから降りることにした。
モノクロの床に足の裏をぺとり…とつけてみるとそこは呆気ない程特別な感覚は無く、温度も特に感じないただの床だった。
ここは思っているより安全なのかもしれない…。
そう思い立ち上がると扉へ向かいドアノブを回してみる。
カチャリ…と小さな音を立てドアノブは簡単に回り扉は開かれた。
扉から頭だけ出して覗いて見るがそこは案の定というのか……やはりモノクロの廊下が続いていた。
見る限り随分と大きな屋敷のようで廊下の先は暗闇になっている。
人影は無い。
暗闇へ本能的な恐怖を覚えつつ誰か居ないか、ここはどこなのか…その答えを探すべく扉を大きく開いて廊下へと歩みを進めた。