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5コイチ  作者: 稲田心楽
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2ページ目

 

 ホムペの(ファンの集い)から、質問コーナーに行き、『馬マスクは誰だ?』とコメントを残してくれた。愛が言うには、もんちゃんはかなりの更新不精らしい。だが、お礼のコメントと、次回のライブについて、すぐに更新されていたから少し期待していた。



「ん? 何これ?」


「どうしたん? もんちゃんから返信?」


「いや、違う。質問したら、すごい勢いでコメント来てさ」



 愛の携帯を奪い、射るようにコメントを見た。愛が馬マスクに触れるまで、全くその件についての質問はなかったのに、凄い勢いで増えていった。



「みんな気になってたんかな?」


「めっちゃ上手いからな。普通気になるやろ」


「確かにいつもよりノリノリやった。本物より良かったかも」


「いや、そのノリはあの馬マスクと、ドラムのチャラそうな彼が生み出してるから」



 愛に携帯を返した。胸の中が、得体の知れた焦りに包まれた。彼らの演奏を目の当たりにして、このままじっとしていられなかった。今すぐ会いたい──会っても何を伝えていいかわからないけど、とにかく馬マスクとドラムの彼に会いたかった。



「どうする? 年末ライブ? 心、一緒に行こうや」


「行こっ! 今すぐ行こう!」


「いや、今すぐは無理やろ。年末まで待てよ」



 少し食い気味に返事をした。気持ちは今すぐ会いに行きたいが、ブログでしか情報が手に入らないし、ましてや、あの馬マスクの正体を今すぐ知る事など不可能だ。プロなのか、アマチュアなのか、もんちゃんの回答コメントの更新を待つしかない。



 質問コーナーの反響は、当然といえば当然だろう。本物のメンバーが一人混ざっているのだから。さらに、本家を軽く凌ぐドラムの幸太がいて、正確無比な音程と、本物そっくりなボーカルのもんちゃん。音速のファンからすれば、CDよりも上のクオリティを生で体験したはずだ。



 ファンの耳を馬鹿にしてはいけない──おそらく、彼等は制作者よりもその楽曲を聴き込んでいる。そして、愛しているかもしれない。だから、すこしのズレも敏感に察知する。完成されたCDが基準なのだから。



 CDは商品である──そのレベルに引き上げる為、人によっては大幅に手は加えられている。ピッチの補正や、リズムの安定度等々。それを毎日のように繰り返し聴いているのだから、生演奏となれば、その差を明確に感じてしまうのは、自明の理であろう。良い方にも悪い方にも。


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