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転*妖魔召喚

 魔法使えたらいいのに!え、魔法は駄目なの?

  ーーー 元のカラオケルーム ---


 「魔法も有りなの?」

 「な訳ないよ。あれは、1度すっきりしたいから反則でもって云う君の希望に応えただけだよ。」

 「何それ。問題はあるけど、有りみたいな期待だけさせてさあ。」

 「それも嘘じゃないよ。魔法は無理でも、妖力を借りることは可能なんだ。」

 「じゃあ、どうしてそれ試させてくれないのさ。」

 「妖力の再現は、バーチャルでは出来ないんだよ。だから、代わりに魔法で試させたんだ。」

 「じゃあ、その妖力で本番させてよ。」

 「だから、それには問題があるんだよ。」

 「どんな?」

 「地獄から召喚しなくちゃならないんだ。」

 「何を召喚するの?」

 「妖魔だよ。妖力を使う魔物なんだ。」

 「まじで?」 まあ、クロノスの存在で既に慣れてるんだけど。

 「まじだよ。」

 「で、そいつが何故問題あるの?」

 「君は、僕のありがたみに慣れ過ぎなんだよ。僕みたいに無償でこんなことしてくれる者なんて、他にはいないよ。」 それもそうだ。

 「ごめんなさい、調子乗り過ぎてました。」

 「いや、そんなことじゃないんだ。現実は、普通見返りを求められるってこと。」

 「妖魔の見返りって、怖いの?」

 「そりゃ、妖魔だからね。生易しくはないと思うよ。」

 「どんなこと要求されるの?」

 「さあね?それが分からないのが問題なんだ。」 正直怖かった。けど、それよりも何とかしたい気持ちが上回った。麗香さんの持ってる桁外れの強さに対抗するのにも、虐めたことの呪いの罰から逃れるのにも、普通の力で何とか出来るとは思えなかった。だから、もうこれしかないんだ。

 「それでも、やらせて下さい。」

 「分かった。」 私の心の中が読めるみたいなこと云ってたなあ。決意が分かってるせいか、あっさり承諾された。それから、召喚する為の魔法陣の図面と注意事項と便利グッズ袋をもらった。これで、とんでもないパワーが、私の味方になるんだ。

 「それと、くれぐれも云っとくけど、これから君がやることは、バーチャルではない本物のパラレルワールドになるんだ。相手に与えるダメージを考えずにやれば、とんでもない結果を引き起こすかもしれないよ。さっき君にすっきりさせたのは、ガス抜きみたいなもの。あれがもし現実なら、彼女は生死の境をさ迷って、命を取り留めても、局所的感電火傷の後遺症で普通の社会生活が出来なくなる。ま、元々の現実でも死んでるから、いいのかもしれないけどね。」

 「いや、よくないよ。やったのが私だからね。」

 「分かってれば、いいんだよ。ま、よかったじゃないか。バーチャルの仕返しをバーチャルで出来たのだからさ。」

 「まあね。」

 「戻す時点は、さっきの電話の時点でいいね?」

 「あ、はい。」 他に考え付かなかった。

 「それと最後だけど、妖魔と交わす契約は慎重にすること。」

 「最後って?」

 「君を過去に戻したら、もう僕は用済みなんだ。グッドラック!」

 「え、ちょっと待って!」 話をどんどん進めたと思ったら、又も一瞬にして周囲の景色が変わった。って、ここどこ?薄暗い森の中?さっきと同じじゃなかったの?その頃持ってた携帯で日時を確かめると、確かに、麗香さんに命令させて佐伯さんとこに電話かけたのと同じ時点に違いなかった。でも、場所が全然違うじゃん!?住宅も意外と近くにある。町の中の森なのかな?そこで、クロノスの注意事項を思い出した。『召喚する時は、魔法陣を描くところから、決して人に見られてはならない。』だったな。でも、こんな暗くて、足元は落ち葉だらけの場所でどうやって魔法陣を描くんだ?と思いつつ、まだ中身を見る間もなかった便利グッズ袋を見た。大きさは学校に持ってく鞄より少しだけ小さいだけだが、それにしても随分軽い白の布製の無地袋だ。その口部分を縛った紐をほどいて中を見ると、幾重にも折りたたまれている様な薄い物があった。紙でも布でもない変わった肌触りだ。どうやって使うんだろうと思いつつ、とりあえず袋から出してみた。と、いきなり勝手に広がって、あっという間にドーム状に周りを覆った。しかも、中は照明もないのに明るいし、下は一瞬に掃除されてて地面が露わになってた。半径は、3メートルくらいあるので充分だ。流石便利グッズだと感心しつつ、なら当然あれもあるだろうと、更に袋の中を覗いたら、やっぱりあった。地面に描いたり消したり出来る特製ライトペンだ。しかも、円や直線を綺麗に描ける機能まで付いてる優れものだ。だけど、これで簡単に描けるぞと思ったのは少し甘く、クロノスのよこした図面は再現が難しかった。図面とにらめっこしながらやっと描けたと思って、早速召喚呪文を唱えてみるが、何も起こらない。❝図面や呪文に間違えがあれば、召喚は出来ない❞ だから、どこが間違っているのか目を凝らして照らし合わせてみては。描き直し再挑戦を幾度となく繰り返した。そして、もう10回は超えてるぞと思いながらも気を取り直して集中して呪文を唱えてみると、ついに魔法陣の真ん中から煙がシューと沸いて出た。いざとなると、どんな怖いのが出てくるのか心臓がバクバクしたけど、煙の中から現れたのは、万葉集?クロノス繋がりでギリシャ神話みたいな魔物を想像してたけど、これどう見ても平安貴族じゃん。しかも、クロノスに負けてない超イケメンだ。

 「そなたが私を蘇らせてくれたのか?」 つかつかと寄って来て一礼した後、微笑みながら静かで優しい口調で訊いて来た。

 「あ、はい。」 緊張したあ!

 「しかも、食いちぎられた腕や脚が元通りとは、何とありがたい。」 え、それって私より酷い目に遭ってたんじゃん。

 「あの、貴方は妖魔ではないのですか?」

 「確かに妖魔ではあるが、元々人間なのだ。又この姿で呼び戻してくれるとは、重ね重ねかたじけない。」と、深々と頭を下げた。既に凄く感謝されてる。ってことは、こっちのお願いを聞いてくれて、後は何も要求されずに済むかも?と、心の中でほくそ笑みながら、一方で気になる時間を、そっと携帯で確かめた。あーやっぱり夜になってる。便利グッズのドームのせいで外の様子が分からないが、元の世界では今頃麗香さん達が、佐伯さんの家の近くで暴走を始める頃だ。その前に麗香さんの命令で佐伯さんとこへ電話する私がこっちに居て、果たしてどう歴史が変わってるか分からない。けど、普通に予想すれば、葉月に代わりにかけさせて、暴走は予定通りやると思った。

 「私は、綾乃と云います。貴方のお名前は?」

 「私は、里真さとざねと申します。」

 「里真様、早速お願いがあるんですが、聞いてもらえませんか?」

 「どの様なことですか?」

 「友達がいけないことをするのを止めたいのです。」

 「いけないこととは?」

 「同じクラスの子を虐めて、今夜はその子の家の近くで暴走して、大きな音たてて嫌がらせするんです。」

 「それはいけませんね。早速止めさせに行きましょう。場所は分かりますか?」

 「豊島区なんだけど、詳しい住所は分からないの。」

 「東京ですね。すぐに飛びましょう。私にしっかり掴まって下さい。」

 「飛ぶって?え、ここは東京じゃないの?」と云いながらも、云われるままに彼にしがみついた。すると彼もしっかり私を袋ごと抱き抱えてくれて、次の瞬間ドームを吹き飛ばす様に夜空に舞い上がった。

 「京都ですよ。知らずに居たのですか?」 京都!うわ、まじで街の夜景が広がって行く。凄い!

 「何か、不思議な力であそこに居たんです。」 彼の胸元で、風圧に耐えながら何とか云えた。

 「なるほど、何となく分かりました。では今は、東へ急ぎましょう。」 え、納得するのか?ま、いいけど、それにしても凄いスピードだ。修学旅行で見たことのある京都タワーがあっという間に、目の前から後ろへと遠ざかって行く。新幹線よりも遥かに速い!

 「その友達は、悪いことばかりして、友達にもやらせて、だけど友達だから・・」 凄い風圧だったけど、必死で訴えた。

 「辛いでしょう?無理に話さなくても大丈夫、綾乃様のお気持ち分かりましたよ。悔い改めさせて、お友達を守りますよ。もちろん、虐められてるお友達もね。」 妖魔と云うから凄く怖い魔物を想像していたけど、凄く優しそうないい人じゃん。決心して良かった。もう安心しちゃって、飛んでる最中に、彼の胸の中で眠ってしまった。気が付いたのは、麗香さんらの暴走の音でだ。

 「綾乃様、この人達で間違いないですか?」 麗香さんが属してる族の旗印だ。間違いない。

 「はい、でも怪我とかさせないで!」

 「ご安心下さい。承知しておりますよ。」 そう云うと、彼は私を近くのマンションの屋上に下し、すぐに地上に降りて行った。上からのぞき込んでみると、6階か7階くらいの高さだ。彼はというと、オートバイの集団の真っただ中に飛び込んだ様に見えた。そして、このマンションの少しだけ離れたところでその集団が旋回し始めた。❝囲まれてる!❞ そう思った次の瞬間、何か様子がおかしい?そこで、便利グッズ袋の中を探った。あった!望遠レンズ?直径15センチくらいのレンズに手持ちが付いた、手鏡の様な虫眼鏡みたいだ。そのレンズ越しに見てみると、凄く大きく見える。更に目との距離で調整して焦点を合わせてみると、すぐ目の前の様にはっきり見えた。えぇ!?みんな、バイクから下りて土下座してる!一体、何があったんだろう?と思っていると、その視界から彼が消えて、間もなく、

 「もう、大丈夫ですよ。」 すぐ後ろから声がした。

 「一体どうしたの?」 すぐに駆け寄った。

 「少し怖いものをご覧して頂いただけですよ。それと、綾乃様のお友達には、少し才能があったので、励ましてあげました。」

 「才能って?」

 「琉球発祥の武道をされているでしょう?」

 「空手って、沖縄で出来たんだっけ?それにしてもよくそんなことまで?」 流石妖魔だ。

 「動きや匂いで分かるんですよ。綾乃様のお友達だということも、綾乃様の匂いが染み付いてましたからねえ。」って、私はそんなに臭うのか?

 「ありがとうございます。」 麗香さん以外の人にこんなに頭下げたのは初めてくらい、素直にお礼を云った。そ、そしたら、

 「では、今度は私から綾乃様にお願いがあるのですが、聞いて頂けますか?」 来たあ!

 ご愛読頂き、ありがとうございました。<(_ _)>

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