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第4話 過去語と恋人と記憶の欠片

どうもSOUJIです!

出すの遅れてすみません。

その代わり、今回はいつもの2倍以上の量ですので。

いや~なんか書いてたら止まらなくなりました。

今回は叶恋をメインにした話です。

叶恋の過去とは…どんな物語なんでしょうか。

それでは第4話お楽しみください!

「…湊斗。」

小さな声で呟く。今日は湊斗と一緒に帰れた。

それだけで私は幸せになる。



【ねーねー、叶恋。なんで、湊斗と付き合ってんの?】

この質問は今まで何回聞いたことだろうか。

私は思わずため息をつく。何でってそりゃあ――



(決まってるじゃん――)

湊斗といると、笑顔になれる。

一緒にいると、楽しいから。



でも、1番大切なことは、

湊斗といると、素直になれる。自分らしくいられる。



学校で、家で、街で、一人でいても私じゃない気がする。



湊斗がいるから、私でいられるんだ。



それじゃあ、なんで湊斗なのか。

これは私だけが知る物語。

湊斗の過去と私の過去。

私にとって、辛い記憶。

眠れなかった、学校に行くのが辛かった、1度は自殺さえ考えた。

でも、そんな辛い場所から私を助けてくれたヒーローがいた。

辛いことを楽しく、絶望を希望に、涙を笑顔に。

私を救い、私を変えてくれた。私だけのヒーロー。

――それじゃあ、始めよう。

そのヒーローと私の物語を。




あれは今から6年前…

「キモイんだよ、ブス女が!」

ある少年が怒声のような声をあげる。

次の瞬間、甲高い破裂音と共に左頬に痛みが走る。

私は1歩後ずさった。

(痛い、痛い、誰か助けてよ。ねえ、誰か…)

そんな私の悲痛な願いは誰にも届かない。

それどころか――

誰も私を見ていない!?

なんで、誰も気が付かないの?

なん――

直後に私に同様の痛みが走る。

(痛い、痛い、なんで、私が…)

そして、クラスメートの表情を見る。

その目には、嫌悪、非情、冷血―――

様々な表情が映っていた。

(ああ、そうか。この人たちは私を…)

ただの玩具のようにしか見ていないんだな。

ただただ、殴られ、私のことを思ってくれないのなら、

この人たちのそばにいることはできない。

そう思った私は、教室を出て駆け出した――――



たどり着いた先は体育館倉庫。

なぜ、こんなところに来たのか。

私ですら、わからなかった。

でも、きっと…

今は1人の時間がほしかったのだと思う。

誰にも邪魔されない、孤独を。

誰もいないという安心を。

欲したのだと思う。

そして――



私は心を落ち着かせるように、

少しだけ、泣いた。でも――

「…あれ、なんで、涙が止まらないんだろ…」

(悲しいのかな。)

いや、そんなはずはない。

ただ、悲しいだけなら涙は止まる。

けど、止まらない。

私に深い傷を残した。

心という目に見えることのないものに。

そして、私は睡魔に襲われ、いつの間にか眠りについた。

それから何日か経ったある日、私の運命は大きく変わることになる。



その少年は突然にやってきた。

普通なら学期の初めに来る転校生が、5月にやってきたのだ。

(なんで、こんな時期に。)

そんな疑問とは裏腹に私は少し期待していた。

でも、その少年は私の期待とはかけ外れた人物だった。



少し長めのウルフカットに、目は純黒の黒。

表情は軽く、緊張などしていないようだった。

そして、黒板に男子にしてはとても美しい字で、

「藤井湊斗」

と書いた。

そのあと、くるりと向き直り、私たちのほうを向きながら。

「藤井湊斗といいます。まだまだこの町には慣れていないので皆仲良くしてください。」

と澄んだ声で言った。



朝の会が終わり、休み時間になったときには湊斗の周りに人だかりができていた。

(どんな人なんだろう。私も話しかけてみようかな――)

できなかった。

直感的に恐れた。湊斗ではなく、クラスメートをだ。

また、自分がまた、あんな目に遭うのではないか。

そう思うと怖くて仕方がなかった。

教室から出ようとすると、クラスメートと目が合った。

湊斗もこっちを見ている。

(ああ、この人もクラスメートと変わらないようになるな。)

しかし、その直感は外れることになる。

湊斗こそが私を救ってくれる「ヒーロー」だったのだ。



ある日、私に対する「いじめ」がまた、始まった。

もう、私には悲しみの感情や助けを求める感情が沸き起こることはなかった。

あまりにも辛いものだったから、心が壊れてしまったのかもしれない。

私にあるのは、痛みと絶望だった。

(もし、このまま「いじめ」が続くのなら――)

私が生きている意味など、あるのだろうか。

この、私が必要とされない世界で、

「…存在し続ける意味があるのだろうか。」



私は無意識に体育館倉庫によく来ていた。

なぜ?悲しむため?

私にはもう悲しみという感情すら、残っていないのに?

訳が分からない。なぜ?なぜ?

…もういい。こんな世界なら、

「…死んでしまったほうが楽じゃないか。」

そう1人で呟く。

もう、死への恐怖はなかった。

むしろ、そのほうが楽になれる。

だから、もうわたしは――



その時だった。体育館倉庫の扉がいきなり開かれた。

そこにいたのは――

「…湊斗くん?」

湊斗だった。


「どうしてこんなところに…」


「それは、こっちの言うこと。」


私は意味が分からなかった。

私がここにいる理由?そんなもの――


「…何もないけど。」


「…何もないのにこんなところに来るわけ?

 小4の女子が?」


確かにそうだ。つまり、私は自分ですら理解していないのだ。

ここにいる理由。ここに居続ける理由。

そのすべてがわからないのだから。


「…質問はそれだけ?終わったなら、どっか行ってよ。」


「いーや、まだあるよ。」

「お前学校来てて楽しい?」


「…楽しいよ。」


「本当に?」


「…うん。」


「へー。」


なんなんだこの男子は。

私に何かあるのか?


「じゃあさ、なんで俺の顔見てくれないわけ?」


「…」


答えられなかった。わからない。

いや、本当はわかっている。ただ――


「…言えない。」


「…そうか。」


「じゃあ、質問を変える。

 お前はいじめから助けて欲しくないの?」

「この状況を変えたくないの?」


その瞬間、冷たく凍った私の心に何かが落ちた。

でも――


「…助けなんて、…いらないよ。」

「…私はこのままでいい。」


そうだ。これでよかったんだ。

私のせいで他人が傷つくことはない。

湊斗くんに迷惑をかけたくない。


「…そう。」

「じゃあ、最後の質問。

 なんで今――




 泣いてるの?」


「…え。」

なんで、涙が…

もう、慣れたはずなのに…

私はこのままでいい。いいんだよ。

本当にこのままで――


「もう1回聞くよ。お前は…、叶恋は本当に―――



 このままでいいの?」


本当にいいって、そう言おうとした。

刹那、私の口はまるで別人のもののように、

言葉を発することができなかった。

なんで、なんで?

私は本当に――


「…」


「…そうか、それが叶恋の判断だね?」


なんで、何も言わなくても理解したようにしたのだろう。

だが、不思議とそんなことは気にならなかった。


「…明日もここにきて。少し話したいことがあるから。」


湊斗が体育館倉庫の戸に手をかけ、出ていこうとした瞬間。

「あ、そうそう。言うの忘れてた。

 

 …絶対に自殺なんてしないこと。」


そう言って湊斗は立ち去った。

私は湊斗が出て行ってからも、その場を動かなかった。いや――

――動けなかったのだ。

私は未だに涙を流していることに気が付く。

しかし―――

なぜだろう。私はしばらくの間、心が不思議と温かいような気がした。

悲しいのに、心が温かい。



――悲しい?心が温かい?

ワタシノココロガ?

なんで?もう、私は感情すら…

持ってはいないのに?



翌日、私は湊斗に言われた通りに、体育館倉庫に来ていた。

話ってなんだろう。

彼にはクラスメートたちにはない、何かがあった。

それが善なのか、それとも、悪なのか。

私にはわからない。けど――

(今は彼を信用してみよう。)

そう思った。



私が来て数分後、湊斗がやってきた。

「遅れてごめーん!」

(前言撤回。こんなやつを信用していいのか?)

「なんでそんなにテンション高いのよ…」

「お前が低すぎなんだよ!ほら、ニコーっとね。」

そして、湊斗に頬をつままれる。

無理矢理にでも笑顔にさせたいのだろうけど…

――痛い。

「…力強すぎ。」

「おっと、ごめん、ごめん。」

結局、こいつは何をしたいんだ?

ただ、私をからかいにきただけなのか?

結局、こいつもあのクラスメートたちと…

一緒なのか?

ねえ、と私が質問しようとしたその時。

湊斗が語りだした。



「昨日の最後の質問。まだ、答えてくれてなかったよね。」

「…答えてくれないかな?君の答えを。」


「…私は…このままで…いい。」

「ふーん。」



「じゃあさ、もう1回言ってくれない?

 今度は俺の顔見てさ、大きな声で。」


「だから!私は…」


なぜだろう、私はこのままでいいと思っているのに。

――声が、出ない。

まるで、体が無意識に、固められているような。

結局、今日も答えを出せないのか。

そう思っていると湊斗がまた、言葉を紡ぐ。



「…言えないんだよね。」

「言えないってことはつまり、


 自分に嘘をついてるんじゃないの?」


「自分に嘘ついてるから、言葉が出ないんじゃない?」



「私が自分に噓ついてる?何でそんなこと―――」

私は嘘なんてついていない。

まず、嘘をつける心など…存在しない。

そんなことをして何になる?

結果は変わらない。

だとしたら、何で―――

心がこんなに痛いの?



「ほらね。最後まで言えないじゃん。」

「俺から見たらね、自分の心に逆らってるようにしか見えないよ。」


「俺が転校してきたときの君の目は、まだ綺麗だった。」

「でも今は…何も見ていない。」

「まるで、この世界が穢れているように。」

「あの、いじめだろ?だったら―――」



なぜだろう、そんな他人事のように話をする湊斗を見て。

私はなぜか、怒ってしまった。

私に手を差し伸べしたのに。助けてくれようとしていたのに…

「…に…がわかるの。」「え?」



「あなたに、何がわかるのよ!!!」

「私だってこのままでいいわけがない!」

「もっと、友達を作って、一緒に笑いあって、一緒に楽しみたかった!」

「でも、違った!私は何もしていないのに!去年までは友達だっていたのに!」

「…みんな、私から遠ざかっていく…」

「あなたは、こんな経験ないでしょ!?」

「学校が苦痛、友達と会うのが苦痛、生きていること自体が苦痛なことなんて!!」

「だから、もうほっといてよ…」

「私は、もう、




 死ぬんだから…」

「死んでいい存在なんだから!!!!」



これだけ言えばもう、何も言ってこないだろう。

そう思っていた。

普通の人なら引き下がっていただろう。けど、湊斗は―――



直後、私の頬に痛みが走る。



私は、驚いて湊斗を見る。



「…死んでいいなんて言うなって言ったよな。」

「ふざけんな!死んでもいい人なんているわけがないだろうか!」

「何で、もっと立ち向かおうとしない!いじめから、クラスメートから、


 自分の人生から!!」



「あなたには、私の気持ちなんてわからないでしょうね!」

「いじめをただ見ているだけの、傍観者の分際で!!」



「ああ!確かにわかんねーよ!他にもっといい方法があるのに!

 それをやろうとしないやつの気持ちなんてわかるわけないだろうが!!」



「そんなの、とっくにやってるわよ!自分がどうすればいじめから抜け出せるのか!

 考えたけど、ダメだった!だったら何をすればいいのよ!!」



「じゃあ、俺が助けてやるよ。」


「…は?」

「…今なんて?」


「だーかーら、俺が助けてやるって言ってんの!」


「あんたに、何ができるのよ!」

「人間関係なんてわからない、たかが、転校生のくせに!!」


「はー。何でこう頭が固いんだか。

 あのな!転校生だからこそできることだってあるだろ!」


「なに、それ…」


「まさか、本当にわかってなかったとはね…」

「詳しい説明はあと。とりあえず、ほら。」



湊斗が差し出してきたのは、ハンカチだった。

意味が分からず私は首をかしげる。

それを察したのか湊斗が少し照れくさそうに、言葉を紡ぐ。


「…叶恋、顔ぐちゃぐちゃ。1回拭け。」


私は泣きながら湊斗と討論していたようだ。

ヒートアップしてしまったので気が付かなかったが、湊斗にとっては

(女の子を泣かせてしまった…)

とか、思ってたのだろう。


「…ありがと。」


素直に礼を言ってハンカチを受け取る。

湊斗が手を伸ばしてくる。ハンカチを返してほしいようだ。

けど、何か他人の物を使ってそのまま返すのは申し訳ないと思った。


「…ちょっとだけ借りてていい?洗って返すから。」


「…わかった。」


少し、落ち着いたところで私は心の奥底にあった質問をしてみた。


「ねえ、何で助けてくれるの?こんな私を。」


「そんな、質問答えなきゃいけない?」


「答えて。」


「叶恋を最初に見たときに何かが違った。他の人にはない、何かがあった。

 それがいじめだと気づくのに、そんなにかからなかったけど。

 そんな時何かしたい、助けたいって思ったからかな。」


私はこの言葉を聞いたとき、心の奥底から安心した。

私はこの人を信じていいのだと。一緒にいていいのだと。

でも――


「やっぱり、助けはいらないかな。」


「え?」

「なんで?このままいじめられてもいいのか?」


いや、違う。助けて欲しいのはもちろんだが――

(こんなに優しい人を私のいじめに巻き込ませるわけにはいかない。)

そう、思った。

もちろん、怖い。いじめに1人で立ち向かわなければいけないから。

だけど、1つだけ―――


「…1つだけ約束してもらっていい?」


「…何?」


「―――私の友達になってください。お願いします!」


できるだけ、明るく言った。本当は怖かった。

拒否されるのではないかと。そう思った。

湊斗の答えは―――


「…いいよ。」

「その代わりに、俺の願いを1つだけ聞いて。

 俺の願いは、叶恋をいじめから救うこと。」


「…それを忘れないで。」



その日はそれで別れた。

けど、なぜだろう。1人だというのに心細くない。

心を失うまでは1人のときに恐怖しか感じなかったのに。

そして、私は心が前のように心にあった、氷のような塊が、

なぜか、溶けているように感じた。


それからも、いじめは続いた。

時々、私は湊斗に話を聞いてもらった。

教室では全くしゃべらないので、クラスメートたちも気づいていないようだった。

そのほうがよかった。私は湊斗に迷惑をかけたくなかった。

2日に1度ほど、あの場所で会話をして、笑いあった。

湊斗と一緒にいる時間こそが1番楽しかった。それは、今でも変わらない。

しかし、やがて――――


湊斗と一緒にいても苦痛を感じるようになった。


「…でさ、すっごく面白いの!」

「そうなんだ!おれもやってみようかなー。」


湊斗は私に会うと必ず聞いてくることがある。それは、きっと今日も…

「いじめは大丈夫?無理してない?」

ほら、今日も。

でも、なぜだろう。いつもなら普通に答えられるのに――

今日は答えられなかった。そして―――


「叶恋?どうしたの?」

ほら、やっぱり。心配してくれる。

貴方は優しい。けど、なぜだろう。今日はなぜか、それが辛かった。

そして、私は涙を流す。あなたのやさしさで。


私はあの日以来、初めて泣いた。

理由は簡単だ。


(私と湊斗の立場は違う。

湊斗は明るく普通に生きることができる…

けど、私は――


この傷を一生背負って生きていかなければならない。


やっぱりダメだな、私。

こんなことがあっても、普通に生きていきたいって、思ってしまうなんて。


湊斗に迷惑かけないって決めたのに。)


湊斗が私を気遣う声をかける。でも今は――

聞きたくなかった。


そして、私はすべてを打ち明ける。

湊斗がいてくれてうれしいこと、それと反対に悲しさも積もっていくこと。

そして、いじめに耐え切れなくなってきたことを。


湊斗はその間黙って話を聞いてくれていた。そして、話し終わると、


「…そうか。」


とだけ言ってその場から立ち去ってしまった。


湊斗に嫌われてしまったのかもしれない

そう思った。


(湊斗に嫌われてしまったら、私は…)


そう思うと怖かった。だけど、私は湊斗を信じると。

そう決めたのだ。



次の日、学校に来てみると何かザワザワしていた。

湊斗の席を見てみると、そこにいるはずの湊斗がいなかった。

私は何か不吉なものを感じた。

しかし、そのあともっと驚くべきことがあったのだ。

いつもは、私を見つけるといじめてくるクラスメートがなぜか、来なかった。


私は不思議に思い、帰りに湊斗の家に行ってみた。

湊斗の家は湊斗自身から聞いたことがあった。

しかし、知るのと行くのは別でかなり迷ってしまった。


(えっと…確かここを…)


「何してんの?」

「きゃあ!」


いきなり声をかけられたので思わず声が出てしまった。

よく考えるとこれは湊斗の声。


(なーんだ。驚かさないでよ…)


私は振り向く。そしてそこには、いつもの湊斗――

では、なかった。顔にはあちこちアザがある。それにいつもの元気もない。


「どっ、どうしたのよ。その顔…」

「…お前には関係がない。」


嘘だ。私が昨日泣いてしまって、そして、私は悟った。

今日のいじめ。そして湊斗の傷。


「え、うそでしょ…まさか。」

「クラスメートに何かしたの?」


「…大したことしてねーよ。」


「嘘。じゃあ、なんでそんな怪我してるのよ!」

「理由をちゃんと話して…」


「…叶恋を泣かせた奴らのことが許せなかった。

 言ったよね。俺の願いは叶恋をいじめから、救うことだって。」

「だから、いじめをやめさせた。それだけのこと。」


「じゃあ…その傷は何なのよ!なんで、湊斗が…」

「傷つけられなきゃいけないのよ!」


「殴るなら、俺にやれ。叶恋の分まで。そう言った。どうしても助けたかったから。」


この人はどこまでおせっかいなのだろう。

自分が傷ついてしまうのに、ほっとけばいいのに。

それをしなかった。


「…私のためにやってくれたの?」


「…そうだ。」



「…もうこんなことはしないで。湊斗が傷つくのは私も悲しい。」


「…わかった。」


「あと…ありがと。助けてくれて。」

「どうってことねーよ。」


湊斗は優しい人、とっても、とっても優しい人。

だから、誰かが守らなければいけない。では、その誰かとは?

―――私。

私が湊斗を守って見せる。

そのためには、私が変わらなければ。

もっと学力、体力、美貌、全てにおいてよくなければ。

それには、時間がかかるだろう。たくさんの時間を。

けど、どれだけたってもなって見せる。

湊斗の隣にいるのがふさわしい人に―――――




これが私の過去。

時間はかかった。長い時間が。

けど、今こうして湊斗の隣にいられる。

だからこそ、こんなに幸せを感じられているのだろうと思った。


「明日から、連休~♪」

「湊斗誘ってどっかいこ~!」



「…疲れた。」

なぜか、今日はやる気が出ない。

まあ今日の半分は、っていうかいつも半分は叶恋のせいだ。

でも、今日はそれだけじゃない気がする。


スマートフォンが振動する。誰からだ?

げ…、叶恋…

着信拒否しようかと思ったが一応要件ぐらいは聞いておくか…


「もしもし。」

「もっしもし~!湊斗!?」


問答無用で通話終了。あのテンションの高さは…

どこかに連れて行かれる時だ。

今まで叶恋と出かけていいことがあったことがない。

だから、とっさに恐怖を感じ、切ってしまったのだ。


また、スマートフォンが振動する

はぁ…出ておかないとすねるしな…


「もしもし。」

「ひどいよ~湊斗。何も言わずに切るなんて。」

「…お前のテンションで察した。」

「何を?」

「どこに連れてけばいいんだ?」

「さっすが、湊斗。頭いい~」

「…成績はお前の半分ぐらいだが…」

「んなことはどうでもいいの。

 明日ドリームランド行かない?」

「…部活ある。」

「嘘つくな!あんた帰宅部でしょうが!」

「…ちっ」

「舌打ち!?」

「わーったよ!行けばいいんだろ行けば!」

「…よろしい。」


じゃ、明日の9時に駅で待ってるから。と言って電話を切る。


「明日はデート♪!」

「よーし、がんばるぞ~」



何だったんだ…とりあえず宿題は明日に移動っと。

ホントに何だったんだ…俺の生命半分ぐらい叶恋に吸い取られてるな…

ま…こっちも楽しいんだけどな。

あいつだったらどうだろうか。

俺の昔の友達―――

「…心菜なら。」


「あれ…心菜って誰だ?」

不思議と口走った名前は夜空に消えていった…

第4話いかかがだったでしょうか。

自分ではいい作品だと思っているのですが…

じゃあ、次回――

SOUJI「…叶恋、いないよな。」

   「ふー、落ち着いて次回予告できる。よかった。」


心「あの、SOUJI。私が次回予告してもいいかな?」


SOUJI「心菜じゃん。別にいいけど?」


心「ありがと!じゃあ、やるね。」


SOUJI(叶恋とは天使、悪魔の対応の差だな…)


心「じゃあ、次回テーマパークに行った湊斗たち、

  そこには、私と蓮の姿も。一体どうなってしまうのか?」

心「次回、第5話、夢に集まる人と記憶。

  お楽しみに!」


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