キス
22時にあと10分くらいでなろうとしていた。
「翼……あの……」
「ん?」
「今日は、ありがとう。」
「え、なにが?」
「その……ご馳走になったり……」
「気にしないで!」
有紗さんは顔を少し赤らめた。
「有紗さん?」
「ねぇ、翼。私と、キス、しない?」
「ええっ!?」
「好きな西野さんとはキスしたの?」
「……………ま、まぁ、1度だけ……」
嘘はいけないと思い、素直に答えた。
「……なら、私ともしてくれる?」
「……え!?」
彼女も西野有紗だけど、俺が好きなのは……
「……………ダメ?」
有紗さんが近くにくる。甘い匂いが広がる。
「……っ。」
俺は黙って目をつぶった。それしか出来なかった。
キスしたいわけじゃない。でも、断れない。
「……翼……」
有紗さんの息が顔にあたって感じるくらいの距離まで近付いた。
「……………」
「有紗ちゃーん、お迎え来たわよ〜」
母さんの声が聞こえた。
「迎えきたって……有紗さん……」
「……え、えぇ。」
有紗さんは顔を真っ赤にして俺の部屋を出た。
「じゃあね、翼 」
「うん、じゃあね。」
有紗さんの車がはしりだした。
「有紗ちゃんとキス、したの?」
「……してない……」
「あんなに可愛い子なのにねぇ〜」
母さんと父さんはクスクス笑いながら家の中に入っていった。
結局、さっきはキスしなかった。
寸前までは、来ていたと思う。
「……。」
キスは、本当に好きな人としたい……かな。