もう1人の西野有紗
次の日、学校に行くと西野さんに避けられた。
見かけると顔を背けて歩いていってしまう。
「……」
同じ名前、同じ誕生日、だけど血液型が違うだけで全くの別人となってしまうのか。
「……はぁ……」
「翼っち!大丈夫?」
大志が心配そうに俺の顔をのぞき込む。
「あぁ、大丈夫さ……」
「嘘つけ。西野さんに避けられてるくせに」
「……うん。」
「来たのか?国からの通知が。」
「うん。西野さんと同姓同名で誕生日も一緒。でも、血液型が違うんだって。」
「辛いな……………」
「あはは……仕方ないよ……」
西野有紗さん……一体どんな子なんだろう。
期待と不安で心が押し潰されそうだった。
その日の放課後、いつも通り大志と帰ろうとしていた。
「ねえ翼っち、門の周り人が集まってない?」
「ほんとだ……なんかあるのかな?」
俺らはそこまで気にせずその場を通ろうとしていた。
「南雲翼〜〜〜!!!」
突然、後ろから声をかけられた。
もちろん聞いたことのない声。
後ろを向くとセーラー服を着て、ツインテールをしている小柄な女の子がいた。
「貴方は……?」
「はじめまして、南雲翼。私はあなたの婚約者の西野有紗よ!」
「あなたが……西野さ……」
「さぁ、行くわよ!」
「行くってどこ……」
俺は婚約者の西野さんに手を引っ張られ車の中にいれられた。
「あの、どこに行くんですか……?」
「いい質問だわ!南雲翼。わたしの家よ!」
「は、はぁ。てか何でフルネーム?」
「じゃあなんて呼べばいいのよ。」
「フルネーム以外……?」
「……南雲……うーん。翼……うーん、微妙。」
「なにそれ」
「貴方はやっぱ南雲翼って呼ぶのが一番ね!」
「わ、わかった。でもさ、俺はなんて呼べばいいの?」
「もちろん"有紗"に決まってるでしょ!」
「いきなり!?」
「もちろんよ。婚約者ですもの。」
「……わ、わかったよ……」
突然のことに頭が追いつかない。
この人は西野さんであるけど、俺の好きな西野さんではない。
西野さんが西野さんじゃない……?
有紗は有紗であって、有紗は有紗じゃない……?
「南雲翼!?どうしたの!?しっかりして!!!」
────意識が遠のくがわかった気がする。