好きな人
「今日も美しい……。」
俺は1人の女の子を目で追っていた。
同じクラスの西野有紗さん。
「だーれ見てんだよ、鼻の下のびてんぞ。」
「う、わぁっ!?」
「なになに〜好きな人〜?」
「ち、ちげーよ! 」
こいつは俺の友達の、笹原大志。
あ、遅くなったけど俺は南雲翼。
「てか翼っち、もうそろ18歳だね。」
「……うん。」
「何だよ、急にしょんぼりしちゃってさ。」
「……いや、何でもない。」
俺らは日本が少し発展したあとの世代に生まれた為、18歳になると国が決めた人と結婚することになる。
要するに18歳になったと同時に結婚は確実となるんだ。
少子高齢化を減らすために行われたそう。
……でも。俺は好きな人がいる。
「……西野さん……」
ちなみに18歳になると国が決めた人と結婚することになるため恋愛は一切禁止。まだ事例がないから、婚約者が決まった後に恋愛をしたらどうなるかとか分からない。
「翼っち好きな人いるなら18歳になる前に告白しちゃいなよ。」
「でも、それでもし仮に向こうも俺のこと好きでいてくれたら……相手に辛い思いさせるだけじゃん……。」
「……翼っち……。」
「でも、伝えるだけ伝えてみるよ。」
「ふぁいと!」
放課後、俺は学校に残っていた。
特に何かをやるわけでもない。ただそこにいた。
「……西野さん……」
机に伏せて小声で名前を呼ぶ。
「はい?」
突然、近くで声がした。
慌てて顔をあげると西野さんがいた。
「ににににににに、西野さんんんんん!?!?!?」
「そうだけど…どうしたの?」
茶色のストレートな髪をなびかせながらこっちへ来た。
「あ、う、そ、その……」
「?」
「……西野さん、俺、実は……」
「有紗ー?まだー?」
廊下で西野さんを呼ぶ声が聞こえた。
「いまいくー! 南雲くんまた来週ね!」
「あ、うん。」
西野さんは急いで教室を出ていった。
……言えなかったなぁ……。
俺の誕生日は来週の火曜日。
それまでに西野さんに伝えなきゃ。この気持ち。
「西野さん、大好き……………」