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後日談3 ベラーノ島へ

本編は終わってるので「完結」にしましたが後日談はまだ3〜4話続きます

 

 ■システィーナの視点



 ああ、陽が強い! ジリジリともう、もう~陽が強い!

 季節は夏から秋に向かってきているとはいえ、日中はまだまだ、陽の光は翳りを見せなくって……ギラギラとした明るい陽光が降り注いできて、私の下に黒い濃い影を作り出す。ああ〜海の向こうには大きな大きな入道雲が、天高くそびえている。



「ああ、暑いわねえ。システィーナさん、大丈夫?」

「うん大丈夫、ありがとう」



 もう、強い陽の光で、周囲が真っ白に見える。まあ元々、ヴェネリア島自体、白を基調にした建屋が多いから特に照り返しが合わさると、もう白一面って感じに……



「早く来ないかしらね~」

「うふふ、あと十分くらいかしらね?」



 私たちは今、ヴェネリア島の中型乗合船トラゲット乗り場に来ている。

 トラゲット乗り場の桟橋は屋根付きの停留所になっているんだけれど、人が多くて私たちは残念ながら屋根部分からちょっとはみ出してて……



「もう、システィーナさんの白い肌が焼けちゃうわ!」

「うふふ大丈夫よ。残念ながら私は赤くなるだけですぐに戻っちゃうの」

「わあ~うらやましい!」

「一長一短かな? コックリみたいに健康的な日焼けとかできないからなぁ……」

「ふふふ、贅沢な悩みねえ~」



 などと話していると、やっとトラゲットが到着した。

 さあ~乗ろう乗ろう! ああ、トラゲットは立ち乗りだから、乗るときにバランスが悪くなって……おっとっと。実は……私のたってのお願いで、アリアさんにある場所へ案内してもらっているんだ~。うふふ、ヴェネリア島に着いた時、コックリと一緒にショーウィンドウを見て……欲しいな~って思ったモノをアリアさんに話してみたら、「じゃあ本場の島へ行こう! ヴェネリア本島のショーウィンドウは少なすぎよ!」ということで、わざわざ『 本場の島 』へ行こうと言ってくれたの。



 私たち二人を乗せたトラゲットは、ドンブラコッコ~ドンブラコッコ……

 ああやっぱり波が穏やかだから、立ち乗りでもそんなに怖くないわ。でも、ちょうど乗客の真ん中あたりでしかもギュウギュウ詰めだし、陽射しも熱いから、ああ~汗が……



「ああ~、システィーナさんから樹木のいい香りがする~。ああ~癒される~」

「え? そう? それなら嬉しいな」

「あらこの香り、お嬢さんなのね? その香水どこで買ったの? ホント凄くいい香り! 樹木の香りなの?」

「まあ、私も欲しいわ! どこのお店? この島じゃ取り扱ってない?」



 と、トラゲットに乗り合わせた女性たちが狭いながらも口々に話しかけてきて……あの、あの申し訳ございません、香水じゃなくて……その……体臭なんです……



「システィーナさん、ホラここからヴェネリア本島を見て」

「わあ~、凄い~」



 乗客の隙間からだけれど……海上の船から見るヴェネリア本島はもう、もう凄い! 狭い路地から見るのと離れた海から見るのでは、全然違う! 何て豪奢な街なんだろう! ゴシック調の高い建屋がひしめくようにそびえたっていて、街全体が工芸作品みたい……! 夏の陽射しに白い建屋が輝いて見えるわ!



 初めて見たときは、あまりにも凄すぎて、あまりにも自然を変えすぎて……

 自然の摂理が変わりすぎて、怖さを感じていたけれど……



 うふふ……コックリに……

 変わらない君が好きって……うふふ……変わらない君が大好きって……

 うふふふふ……



「どうしたのー、システィーナさん」

「え? え?」

「顔がとろけてるわよー」

「え? ええ?」 顔をブニブニ! とけてる!?

「コックリと……良いことがあったんでしょう?」

「あああの、あの……その……」 ああ~、汗が~!

「宴の時かしら……?」

「あああの、あの、あの……」 はわわわ!

「二人で途中退席してたけれど……」

「そそそ、そのその……」 はわわわわ!

「バルコニーでキスしてたもんね~!」

「はわあああああ!」



 なななっ!? 何でっ!? 見てたの!? ええ!? 何で!?



「あの後、システィーナさん感激のあまり倒れちゃったでしょ? コックリが抱っこして連れてきたからもう皆ビックリよ~」

「えええ!?」



 そ、そうだった~! 私、キスされてからの記憶がなくって……

 そう、起きたらいつの間にか、会場となった局舎内のベッドの上に横たえられていて……アリアさんがベッド横の椅子で眠りこけてたのは……そそそ、そうだったんだ……! ええ~!? 皆知ってるの!?



「ふふふ、大丈夫よ。コックリが、『 無理して疲れてしまったようで 』って言ってたから……まあ、私は本当のことを聞いたけどね!」

「うう~」



 私は真っ赤になった顔を隠すために、ストールを顔中にグルグル巻きにした。アリアさんはそんな私をニヤーって……もう、もう、からかわないで!



「ふふふ、ああシスティーナさん! ほら、見えて来たわ!」

「え? あ! はわあぁ~!!」



 アリアさんが指差す方向を見て私はビックリした!



 トラゲットが進んでいく先に島があって……

 その島には二階建て三階建てくらいの小さな家々が犇めくように建っているんだけれど……

 はわわ! 何あれ!?



「何あれ!?」

「ふふふ!」



 もうホント! ビックリ!

 だって! だってだって!



 家々が、凄いカラフルなんだもの!



「ふふ、ビックリしたでしょ?」

「ええ! もうビックリ! 何でこんなにカラフルなの!?」



 そうなの!

 目的地の島に建てられた家々が! もう、もう~凄いカラフルな色に塗り分けられていて!



 赤い家!

 青い家!

 黄色い家!

 緑の家!

 水色の家!

 ああ、一階と二階で色が違う家もある!



 凄い何てカラフルなの!?

 はあ~、見事に隣と同じ色じゃないわ! ええ、何この島!



「ふふ、ここは漁師の島『 ベラーノ島 』よ」

「漁師の島!?」



 アリアさんが言うには、この島は漁師の島で……

 こんなに家々がカラフルなのは、自分の家の位置を分かりやすくするためなんだって! なぜ分かりやすくするのか……というと、海に囲まれたこの島は早朝など霧がとても多くって、漁に出てから帰ろうとすると、霧やモヤで見えなくなってしまうらしい。だから霧の中でも自分の家が分かりやすいように、カラフルにしてあるんだそう。



 はあ~、この色彩感覚に、もうビックリ!

 ああでもよく見ると、窓枠やドア枠がどの家々も白で統一されていて……それが赤い壁や青い壁に映えて……顔みたいにも見えるから、何だか可愛い! 漁師っぽくない!



 というか……!



「え!? でも漁師の島に……私の欲しいものがあるの?」

「ふふふ、あるわよ~」



 アリアさんはイジワルそうに笑った。ああ~なんだかコックリっぽい! やっぱり兄妹なんだなあ……



 トラゲットが桟橋に到着すると、私たちはベラーノ島に上陸した。うふふ~私はもうカラフルな、陽気な町並みにウキウキして、トラゲットからピョンっと飛び降りてしまって……ああ子供っぽいことをしてしまったと思ったら、アリアさんもピョンと飛び降りてた!



 桟橋の先にはちょっとした広場があって……

 ああ、観光客相手の露店がたくさん出ているわ。わあ、凄い観光客の数! 色々な民族衣装の人々がいる! 雨風をしのぐ程度のちょっとした露店に、ガラス細工とか装飾品とか、フルーツとかも売ってて、観光客で賑わってる! 活気があるわ〜



「さあシスティーナさん、お目当てのお店はこっちよ~」



 アリアさんはそういうと、露店にも観光客にも目もくれず、私の手をとって歩いていく。犇めくようにいる観光客に当たらずにスイスイ~っと。はわあ~、コックリに似合いそうなブレスレットを扱ってる露店がある! ああ~見たいな~!



「ふふふ、システィーナさんの用事が済んだらね」



 は~い、了解です。

 観光客の間を縫って歩くと、いつのまにか建屋と建屋に挟まれた細い路地に入っていた。建屋の壁には白い枠の窓がついていて、緑豊かな鉢植えが飾られてる! いいね! ちょっと悪いけれど窓の中を覗いてみたら……テーブルに向かって絵を描いている子供がいたわ。うふふ。



 この小路……今朝食事した食堂のあった小路くらいで……壁と壁の間は五人も大人が並べばとおせんぼ出来るかも! 狭いけれど結構人通りが多いわ、先の方まで人がいるし……でもヴェネリア本島と違って、建屋の高さが二~三階しかないから、閉塞感はないし、何より色とりどりで可愛くてもう……



 路地を抜けると、ああ~左から右に、小運河が先の方まで続いている! その小運河の岸壁には、何本もの杭が出ていて、何漕ものボートがくくりつけられてる!



「わあ~、カラフルな色が水面に反射して……綺麗……」

「ふふふ」



 そうなの~、小運河に面して、見渡す限りにカラフルな家々が並んでいるから、もう水面に反射して……はあ〜綺麗。カラフルな家々をよく見ると赤は赤でも、朱色に近い赤や茶色に近い赤とか微妙に違うのね。ああ〜あと、壁は赤でも鎧戸や扉が青とか、壁は黄色でも鎧戸が緑色とか……うう〜ん、家々の表情が違う!



「さあこっちよ」



 小運河に沿うように左右に道が分かれていて……道なりに進んでいく。ここも細い道だから、本当にこっちかな? と思ったけれど、観光客もそっちに向かっているし……



「すべての家がカラフルだけど、皆漁師なの?」

「ううん。ふふ実は観光客のために、普通の家の人もカラフルに塗ってるみたいよ」

「そうだよね〜」



 ああ、運河の先の方に大きなアーチの橋があって……観光客がいっぱい渡ってる! 向こう側に何かがあるのね!



「ふふふ、今からあまり向こう側を見ないでね。アーチ橋の上から見た方がビックリするから」

「そうなんだ! 分かったわ!」



 期待を胸になるべく向こう側を見ないように見ないように路地を歩いて……橋の目の前に着くと……ああ、アーチが高すぎて向こう岸が見えないわ。



「じゃあ行きましょう!」

「ええ!」



 さあ私たちもアーチ状の橋を登って……



 アーチが一番高い場所に到達すると……



 私は感嘆のため息をついていた……!




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