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後日談2 オステリアで朝食を

短いので続けて掲載します

 

 ■システィーナの視点



 爽やかな朝の気配。

 路地から見上げる小さな空はうっすらと白い光で包まれて……私は夢見心地でコックリに話しかけた。



「はあ~コックリ~、素敵なミサだったあ~」



 私はもう、私はもう……ただただ感嘆のため息をついていた。

 もう、無数のロウソクの光に包まれたおごそかな大聖堂内に、人々の祈りの声が流れて……皆の心が一つになって、ただただ世界の平和と安寧を祈っていて……。老若男女、様々な人々の祈りの声は、複雑な音階となって私の心と体に響き渡って……



 心を揺り動かされ、体を揺り動かされたの……



 はわあ~素敵だったあ~……。生きている私でさえあれだけ心を動かされたんだから、生を終えて魂だけの存在となったそれらも、きっと魂を揺り動かされていることだろう……



「ふふ、毎朝毎夕やってるよ。まあもっとも夕方は皆忙しいから、人が少なくて規模は小さいけどね」

「そうなんだあ~……」



 コックリと私は、サン・マルゴー広場につながる小路の奥にあるオステリア(食堂)にいて……外に並べられたテーブルに座って、アリアさんを待っている。ミサが終わった後、アリアさんがここで待ってて、って……



 この小路はそびえたつような石造りの建屋と建屋の狭間にある。

 狭い土地を有効活用するために建屋は上に上に高くそびえ、道幅は街の大きさに比べてとても狭くて……迷路のように至る所に小路ができていて……ここはそのうちの一つなのね。石造りの街は独特の圧迫感があって……でも狭いゆえに不思議と人々の結びつきや、距離が近いようにも思える。



 とはいえ、迫ってくるような石造りの建屋と建屋の間の小路に、小さいとはいえテーブルと椅子が何脚も並べられているから……うう~ん通行人の邪魔にならないかしらね……まあ人が二人は並んで歩けるくらいの余地はあるし、そんなに人も通らないし……まあいいか。



 うふふ食堂からは、いい匂いが漂ってくるなあ~。コックリがお腹を押さえながら言った。



「とりあえず、適当に頼んでおこうか。アリアの分まで」

「うん、じゃあこのモーニングセットにしよう」



 注文を取りに来た食堂のおじさんが私を見て目を丸くして固まっていたけれど……まあ、それはいつも通りとして……注文したメニューがテーブルに運ばれてくる頃、広場につながる路地の向こうからアリアさんが小走りにやってきた。



「システィーナさ~ん、お待たせ~!」

「とことん俺は無視かよ……」

「うふふ、アリアさん流の愛情表現よ」



 アリアさんは息せききって、私の隣の席に座る。



「わあ、先に頼んでおいてくれたんだ! さすがシスティーナさん、気が利く~」

「先に頼んでおこうって言ったのは俺だけどな……」

「まあまあコックリ、じゃあみんな揃ったし、せ~の」

「「「 いっただっきまーす 」」」



 爽やかな朝に、外で食べる朝食もなかなか!

 うう~ん、このトマトのスープ、凄く美味しい! 爽やかな酸味が朝に合う! ああソーセージが入ってるから、爽やかだけど凄く複雑な味に仕上がっているのね! ライ麦のパンも噛みごたえあって美味しい!



「システィーナさん、ミサはどうだった?」

「うん! 凄く素敵だったあ~」

「やった! システィーナさんに喜んでもらえると凄くうれしい! 妖精の皆さんも同じ感覚なのかなって心配だったのよ」

「うふふ。世界の平和を祈る想いは、私たち妖精も一緒だもの」

「そうよね! そういえば、妖精ではミサのようなことってやるの?」

「うん、『 精霊界 』と『 精冥界 』に祈りを捧げる儀式は行うわ」



 そう『 精霊界 』は大いなる力を持つ精霊王たちが存在する世界で、人間が信仰する聖霊が存在する『 聖霊界 』に相当する世界で、『 精冥界 』は自然物に宿る魂が生命活動を終えた時に向かう魂の世界だ。自然物とは草木を始め、動物や幻獣などの魂がその世界へ向かう。妖精や妖魔も死ぬとその世界へ向かう。



 人間のみ、死んだ魂が向かう先が異なる。人間は生前の行いが悪かったり生への執着が強いと、穢れた魂の世界『 汚冥界 』へ向かい、まっとうな魂は『 清冥界 』へ向かう。



「精霊界と精冥界への儀式か~。妖精の儀式って、ああ何か神秘的なんだろうな~」

「うふふ、そうねえ~」

「待って! 私の頭の中のイメージがあって……ああ……森の芳醇な水分をたくさん含んだ場所……そう、濃い緑色の苔むした巨大樹の根元で……清々しい空気に包まれた空間なの」

「おお~……」 私は思わず感心した。

「巨大樹の森は少し薄暗くって……天高くうっそうと繁る枝葉から……太陽の光が柔らかい光線となって、苔むした緑の絨毯の上に降り注いでいるの……」

「うふふふふ……」



 ……と、アリアさんと二人で話に花を咲かせていると、私はふと優しい視線に気が付いて……そっちの方を見てみると……コックリがコーヒーを飲みながら……目を細めて私とアリアさんのやり取りを見つめていた。はわあ、ずっと見られてた!? 凄く優しい笑顔で……私は胸が高鳴った。はわわぁ!



 あれ!? 気が付くと私たちの周りのテーブルも人がいて皆が笑顔でこっちを見てるし、ああ厨房の窓から店主のおじさんも笑顔で見てるし、路地を行きかう人たちも笑顔で私たちを見てるし! はわわあ! でもコックリの笑顔が一番優しくてドキドキする!



「何よコックリ! しまらない薄ら笑いして!」 え!? アリアさんにはそう見えるの!?

「悪かったな、しまらない薄ら笑いで!」

「ゴ、ゴメンなさい! コックリ」

「え? 何で?」

「だ、だって……私とアリアさんばかりで話してて……!」

「フフ、かまわないよ」

「そうよ、かまわないわよ!」

「でも……」

「フフ、二人のやり取りが楽しそうで、俺も楽しくなってたから……」

「ホ、ホント?」

「ああ。楽しそうなシスを見てると……俺も嬉しくって……女性同士の時にしか見せない表情もあるんだなって……」

「え? そうだった!?」

「ああ……あ、そうだアリア、今日は非番なんだろ?」

「ええ、そうよ」

「じゃあ、たまには二人でゆっくり遊んで来るといい」



 私とアリアさんは顔を見合わせた。



「いいの!?」 と私。

「いいのって……パートナーとはいえ、絶対に俺といなくちゃダメってわけじゃないし」

「コックリ! たまには良いこというじゃない! 見直したわ!」

「たまにはって……神殿騎士の俺にそこまで言う奴、お前しかいないよ?」

「システィーナさん! じゃあ今日は二人で一緒に遊ぼう! ヴェネリアを案内するわ!」

「うん! お願い! コックリ、ありがとう!」

「ふふ……俺は傭兵隊の詰所に行って剣の鍛練してるからさ」



 わあ、急遽アリアさんと遊ぶことになった!

 ああ、実はアリアさんに聞こうと思っていたことがあったから、ちょうどいい。コックリありがとう。




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