システィーナの恐怖
内容が短いので、21時くらいにまた後程更新します
■システィーナの視点
私はヴェネリアに来てから、心の中に『 恐怖 』があった。
理由もはっきりしない、恐怖だ。
何に対して? 自分に問うた。
何に対して…………?
それが、分かった。
理由が、分かった。
私がヴェネリアの街並みに恐怖を覚えた理由…………。
狂わされた精霊のバランスに恐怖した理由…………。
エリザベールの肖像画を見て、自らの考えに不可解な感覚を得た理由…………。
巨大化したエリザベールを見て、激しい違和感を覚えた理由…………。
すべて…………すべてが、一つの現象に根差していたのだ。
それは人の欲望や渇望に起因するものだった…………。
私の感じたそれ。
それは 『 人の欲望は、人以外の他を巻き込み、変貌させる 』 ことだ。
変貌させる…………他のものを…………。
変える…………。
変えてしまうのだ…………。
人以外の、他を…………。
湿地を街に…………。
精霊の調和を歪に…………。
妖花を妖樹に…………。
人の欲望は、人以外のそれまでの常識を越え、新たな常識へと変える。
人以外の、自然が築き上げてきたものを、根本から変える…………。
人以外の、連面と続く変わらぬものを、変えてしまう…………。
人以外の、世界の均衡を歪め、変えてしまう…………。
そこに、恐怖を感じたのだ。
人にとって善いものは、人以外の他にとって…………どうなのだろうか…………。
人が望み得たものは、人以外の他にとって…………どうなのだろうか…………。




