表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
55/62

56話

 ビックリした。

 あるまさんが唇を尖らせて、アヒル口だった。

 端的に言えば、拗ねていた。

 ――マジですか?

「あの……あ、あるまさん?」

「答えて、くださらないのでしょうか?」

「い、いや……」

 さらに上目遣いで、ジト目でした。正直目を逸らしたいような衝動に駆られたが――まるで引力でも作用してるかのように、視線を外すことは出来なかった。

 だってぶっ飛ぶほど、可愛いのですもの。

 萌えるのですもの。

 そしてその言葉に抗える術を、ぼくは持ってはいなかった。

「……引き、籠もってました」

「え?」

 あるまさんが、聞き返した。レインちゃんは無表情のままだった、ひーぼんさんは気づけば紅茶片手に頬杖ついてニヤニヤこっちを見てたりしてた。

 ぼくはとりあえず、あるまさんのリクエストに応えなければならない立ち位置のようだった。

 ぼくは二、三喉を鳴らしてから――うまく唾を飲み込めなかったから、

「引き、こもってました……ここ一週間、くらいは」

「そうですか」

 沈黙がくると思ってた、てっきり。

 だけどあっさり流された、まさかのスルースキル発揮だった。肩透かしくらいそうになった、緊張してたからしなかったけど。

「…………へ?」

「ではでは、つまりはリア充してたっていうことなんですねっ」

「…………は?」

「ぶっ!」

 吹き出した音に我ながらすンごい勢いで振り返ると、壁際のソファーで今日オフのメイドさんがくっくっくっ、と口を塞いで笑いをかみ殺していた――なんだこれ?

「えーと……あるまさん?」

「それはそれはめくるめく楽しい時間を過ごされたのでしょう? なんですか? ニコ動ですか? ようつべですか? それともPS系? 任天堂? はたまたパソゲー? もしくは漫画ラノベとかだったのでしょうか?」

「…………」

 唖然とするくらい、目をキラキラしてワクテカだった。すごかった、なんかキャラ崩壊? とか思いかけたが、そういやなんかそういう予兆はあった気がするなーとか遠い目。

 そしてやっぱり後ろでくくくく笑ってるツンデレ系メイドカッコツンデレかどうかは保証しません。

「…………」

 考える、どっちに声かけようかと。

 結論は、やっぱ目の前の輝く瞳をした女性になった。

「……その、」

「どれですかっ?」

 もう、まずはこれに答えなければ到底収まりつかなさそうな雰囲気だった。ぼくは仕方なく、

「……………………ネットサーフィン、です」

「ウィキですか? それとも別の? ニュー速とかまとめサイト多過ぎてチェック厳しいですよねっ? でもたまにヤフーニュースでも面白い記事が――」

「いやあのちょ……」

「どれですか!?」

 気づけば。

 あるまさんは、目の前5センチくらいに迫っていた。

「…………」

 なのに、なんにも喋れなかった。というか引いていた、うわすげぇ、なんか今まで自分がどういう風に見られていたのかわかった気がした、逆に言えばみんなの気持ちもわかったような気がしていた、うーんぼくがこれをやれば確かにキモそうだが、あるまたんに関して言えばそれはとても可愛らしかった、が――

「あ、あるまさん……」

「どれですかっ!?」

「…………」

 ヤヴァい、マジで後ろを見たくなった、愛華ちゃんに助け船をとか。どこまでいってもぼくはヘタレだった。

 なんて答えればいい?

 誰か助けてくれ。

 だけど目線も逸らせない、打つ手がない。

 ぼくは――考えることを、放棄した。

「あるまさん」

「どれで――」

「愛です」

 場が、今度こそ静まり返った。

「…………は?」「え、マスターいまなんて……?」「若人よ、愛とは……?」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ