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55話

 そして見ていた、あるまさんがなんだか期待感がこもった瞳で。さらに見ていたひーぼんさんがなんかたンのしそうな目つきでじいさんあんたもなんだかんだで好きもんだよなこんチクショー。

 齧り付いた。

「ふがっ」

「をお?」「わあ」「おっほほほほ!」

 レインちゃん、あるまさん、じいさん、三者の三様による反応を背に、ぼくはガブガブとギガンテスのこんぼうと格闘した。齧り付いた途端に、肉汁が弾け飛んでいた、ぶしゅー、うンまい。肉は思った以上に柔らかく、しかしそれはよくよく考えればあるまさんがスモークした肉だからそれは当然で原始人の肉みたいな見た目に騙されていた、さらにもう一口、うンまい、しっかり下拵えの段階で味付けがなされていたのだろうたくさんの香辛料の旨味に、オリーブオイルっぽい脂分が、ぐんぐん身体に吸収されていく感じだった。

「うはっ、うまっ、うははっ、うまうまっ」

「をぉオ? すごいワイルドですマイマスター!」「わぁ、男らしいですくろにゃんさまっ」「いいのう、若さじゃのうほっほ」

 なんか、賛辞が巻き起こっていた。こちらとしてはただ腹減ってるからネタ飯に喰いついてるだけだったから、複雑だったごめんウソそれなりに嬉しかったです褒められることのない人生送ってきてましたから。

「はぐ、はぐ……ど、どうも」

「美味しいですか? マイマスター」

「あ、はい……美味しい、デス」

 マズい、照れパターンにハマったようだった相手の口癖を真似るキモい習性発動、ここでなんとか魂に負けずに跳ね返したいと思ってはいるが――

「そうですか、それは良かったです」

 ニッコリ笑われて、

「――――」

 ろくすっぽなにも答えられず、顔を伏せてしまうはい所詮ヘタレで現実はこんなもんですチクショー。

 そして、微妙な間が訪れた。

「…………」

 とりあえず、ぼくはむしゃむしゃと肉を貪った。

『…………』

 それをレインちゃんが無表情で、あるまさんが笑顔で見守っていた。ひーぼんさんを見ると、既に紅茶片手で文庫本の世界に入っていた、カオスだ、いや元来喫茶店ってこういうものなのか? スタバくらいにしか行ったことないからわかんね、それも生まれてから2,3回くらいのもんだし。

 ちらっ、とレインちゃんの顔をのぞき見てみた、1秒未満くらい、どっちかっていうと盗み見た。

 と思ったら、ちょうど目が合ってしまった。

『!?』

 同時にお互いビックリして、同時に目を逸らしてしまう。

 なんだこれ? スッゲー恥ずかしい、ただ目が合っただけだっていうのに。これが三次元のおそろしさか?

 こそーっ、とチラ見した。

 なんか、またも向こうもこっちチラ見してた。

『!?』

 再度お互い、目を逸らしてしまった。なんだこれ? いやホント、なんだこれ? メイド喫茶に来て、オレはいったいなにしてるんだろう?

「……あの?」

 顔をあげずに、声をかけた。

「……なんですか?」

 それに多少おどおどした声が返ってくる、え、なに? レインちゃんって無表情無愛想キャラのクーデレじゃなく、コミュ障キャラだったりするのか? さすがはリアル、単純なキャラ設定なんてないってことか。

 ぼくは考え、

「その…………いい天気、ですね」

「曇ってますがマイマスター?」

 はいデフォ本当にありがとうございます、でも他のテンプレを持ってるような器用な奴じゃないんでその辺はご容赦を。

「いや……ぼくにとっては、くもりの方がいい天気だったりするんですよ」

「その辺りの気持ちはわからなくもないデス」

 そして、再びの沈黙だった。なんか、間が持たないというか、でもまぁそんなもんだろうと割り切る事にしよう。

「くろにゃんさま、」

 と思ってたら、しれっと問題のひとに話しかけられていた。

 ぼくは、正直逃げようかとかヘタレかけた。

 だけどなぜか、身体の方がそちらに正面を向けていた。

「あ、はい、なんですかあるまさん?」

「わたしの質問には、答えてくだされないのでしょうか?」

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