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54話

 一瞬あるまさんかとハッとしかけたが、それが明らかに年老いた男の声だったから、まぁ目の前に座るソレだろうと。

「……なんでしょうか、ご老体」

「言ってくれるのう、どうしたい? 黙りこくって、のう?

 あるま、たん」

 ぴくん、と眉が反応。

「あるま、たん……だと……!?」

「はい、あるまたんですっ」

 目をしばたいた、というより我が目を疑った。

 あるまた――さんが、ひーぼんさんに馴れ馴れしくタン付けでその名を呼ばれ、しかしそれに応えるように自分の袖を、手首を曲げて掴んで片足上げてぴょんとかしてた!

 うわ萌えるわ、っていうかあるまたんのキャラわかんねウヒョー。

「うひょ――――――――っ!」

「どうした若造昂ぶって、だが気持ちはわかる! わかるぞ若造――――――――っ!!」

 カオスだった、我ながら、メイド喫茶の真ん中でじいさんと席立って握りこぶしで大声出してアガってるだなんて、本当どうかしてるぜちくしょう!

「あるまたんさんっ!」

「なんでしょう、というか愉しい呼称ですねぇ」

「いえいえ、お美しいのはあるまたんさんですよ本当アハハハハハ」「いやーどうかしてるのう若人ウワハハハハ」

「みなさん楽しそうでなによりです、ねぇレインさん?」

「…………」

 と。

 ふと気づけばレインちゃんはあるまさんの陰に隠れて、半分だけ顔を出してジト目でこちらを睨んでたりしてた。

 それにぼくは心が瞬間冷却され、正気に戻ってそしてひーぼんさんもこちらを気まずげな眼で見てたりしていた、うはーオレ、ハシャいじゃってた? ――じゃって、ましたよねぇ?

「……ひーぼんさん、」

「なんじゃ、若人よ?」

 ていうかひーぼんさん既に着席してゆったり粗茶を飲んでたりしてるし、うわこの辺年季の違いを感じるわ。

「いや、あの……なんでもないです」

 結局空気に流され、ぼくはのそのそと着席するハメになったなんだかすっごく恥ずかしい、キャラに合わない事はしないに限ると猛烈に反省、リアルでorzな状態になるだなんて勘弁この上なかった。

「くろにゃんさま?」

「あ、いやすいません、いきなりハシャいじゃって……レインさんも驚かせて、ゴメンナサイ」

「いえ……突然荒ぶられると、ボクはちょっとビックリしてしまうのデス」

 まだ多少ビクビクしながら、こそこそとレインちゃんはあるまさんの陰から出てきた。それにぼくは儚い苦笑いを浮かべた、なんかさっきから生まれてきてゴメンナサイなことばっかりだなぼく。

「じゃ、じゃあ……いただきますね?」

「ど、どうぞ」

 やや緊張気味の返事を受け取り、ぼくはギガンテスのこんぼうにかぶりつこうとした。

「――――」

 だけど正直、結構困った。なにしろでかい、でか過ぎて、どこからどう攻略しようかと迷うところだったりした。

 ナイフとフォークは?

 まさかの、無かった。

 ――かぶりつけと?

「あ、あの、ある――レインさん?」

「ボクでいいんですか、マスター?」

 やや申し訳なさそうな涙目にぼくはなんだかとてつもなく申し訳ない気分になった、いやそういう意味でじゃ――そういう意味でじゃなかったのデスよ!

「い、いやむしろレインさんが! イイんですはいっ、で、その、こ、これの食べ方って、どうしたらいいんですかね?」

「そ、それは……むしゃぶり、ついて」

「――はい?」

「ただむしゃぶりつけばいいデス、本能のままに」

「…………」

 ワイルドだ、ワイルド過ぎるテイストだった、ここは本当にコンセプト喫茶Hexenhausなのだろうか? ここのコンセプトって、確か傷ついた御主人様を癒すとかなんとかじゃなかったっけ?

「…………」

 見ていた、レインちゃんが。なんだかつぶらな感じの、目を逸らしたくなるほどの透き通った瞳で。

『…………』

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