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39話

 なんだかカッコつけてるみたいで、若干白々しさを感じないでもない。なんかホントに本音かよという気もしていた。けどまぁいずれにせよそういう気持ちも何パーセントかは混じってることは間違いないと思うから、まぁそれでもいいかと思えた。

 でも、そのためにはどうしたいいのかと考えた。ネットで2ちゃんやらメイド喫茶系の情報サイトとかを探してみたが、起きたことのみをニュースとして載せるにとどまり、その後の情報については一切拾えなかった。他にはあと人海戦術いや知り合いが足りねぇよ――

 知り合い。

 そして次の日。大学でいつものように授業を消化したあとぼくは、学食でカレーを食っていた一杯250円。本当にこの値段は学生の味方だよなとしみじみする。でも所帯じみてて、せっかくつい昨夜まで非日常の中に身を投じていたのに台無しだよなとか思ったりもした。彼女もいたことないのに所帯じみもくそもないとは思うのだけれど。

 カチャカチャとスプーンを鳴らしてカレーを口に運んでいると、なんだかぼんやりしてくる。一定のリズムで、同じ動作の繰り返しは。それはある意味日常の積み重ねに似ているような気がした。同じことを繰り返しているうちに、感動すべきすばらしいものが、当たり前のありきたりのものへと変わってしまう。より良いもの、それなりに良いものを低俗で唾棄すべきものに見なしてしまう。それは傲慢か、それとも生物本来の在るべき姿がなのか? なんて哲学的に見えて可もなく不可もない先がないどうでもいい話だったりするのだから不思議だった。

「おう、春樹」

 だから、この場所でこの時間帯にこの男に声を掛けられるという慣れ親しみ過ぎてやや腐り始めている縁にも、なにかしら因果関係を見出すべきだとかいやただ単にぼくが厨ニ病なだけだなうん。

「……あのさ朝成、」

「またメイド喫茶か?」

 ニヤニヤして言うなよなコンチクショーでもまぁこういうもんだよなひとつのことにハマるって三回以上同じネタが続いたらむしろツッコむのが一つのテッパンだよなとか栓無きことを。

「……ああ、そうそうメイド喫茶。だからあのネコミミ先輩に連絡、取れる?」

「おぉ、開き直った男ってのはカッコいいなーおい」

 それってつまり、今のオレはお前と同類っつーこと?

 というわけでいつものように秋葉原集合だった。駅で待つ。というか待つパターンは初めての事だった。なんだかんだでいっつもネコミミ先輩改めハルイチさん先に来てたし、言葉づかいも微妙な敬語だったし、案外人間的には出来てた人かもい知れない方角は明後日のほう向いてたけど。

「んで、いつ頃来る予定なん?」

「一応1時に駅前待ち合わせなんだけどな」

 携帯の待ち受け見ると、時間は1時を17分過ぎていた。気になるレベルではないけど、でも気にしないレベルではないような感じだった。なんだろう? 意外にもメッキーズの活動が忙しかったり――

「い、いやすいま、せん、遅、れ、まし、た……っ!」

「うわお!?」「おう、ハルイチさんお久しゅう」

 いきなり背中から現れ、マジでビビったが朝成は普通だったちくしょうなんか負けたような気分だった。

「ぜっ、ぜっ、ぜっ、ぜっ……!」

「は、ハルイチさん……なんか、その、お疲れ様です」

 なんかすごい息の切れ方で、肩が上下してて、そして着てるワイシャツびっちょりだった。

 そして今日もネコミミ標準装備だった、そのネコミミもびっちょり、勘弁してほしかった。

「い、いやいや黒瀬氏春の字……」

「い、いやちょっ、近寄ん……いやその、な、なんですかね?」

 思わず出かけた本音を抑えて、差し出された手からやんわり逃げて、思わずの苦笑いだった。と、とにかく本題を――!

「そ、それであの……」

「どうしたんだハルイチさんそんなに息を切らして?」

「あ、いやー朝の字、実は最近メッキーズの活動がてんやわんやでして」

 あ、やっぱりかと心の中で思った、が、いや今時分てんやわんやって表現もなかなかのもんだよなと思ったり思わなかったりいやまぁ言葉遣いなんて人それぞれだから別にいいんだけどねうん。

「てんやわんやって……どうしたんですか、最近って?」

「いやそれがピンポイントでセンセーショナルな話題でアレなんですが、なんとHexenhausがですね――!」

「あーなんか出現したとか消え失せたとかニュー速でみたなー」

『…………』

 ぼくとハルイチさん、同時に沈黙。いやまぁそれは周知の事実ではありぼくも思うところではあったけどいきなりカマすとはさすがだな朝成!

「……そうですか、既に羞恥の事実でしたか」

「ハルイチさん? 漢字間違ってますよ?」

「……ならば私としても、もう言うべき言葉は持っていませんね」

「いやいやいやいやそこからでしょ? それについてメッキーズがどういう活動してるかでしょ?」

 ガクガクガク、と遠い目になってしまったハルイチさん両肩を揺さぶる。それにハルイチさんはハッ、と覚醒したようなネタ的な擬音を発し、

「ハッ……そ、そうでした。私こそは、アキバの平和を守るメッキーズの隊長、ハルイチ本名春田一郎……こんなところで気を失っている場合では――!」

「いやいやいやアキバの平和はそんな乱れてないし、ていうか本名言っちゃってますけどいいんですかつーかアレだな結構ハンドルネームと似通ってんな!」

 もうなんだかコンビかってくらいボケツッコミの応酬だった、もうぼくもハルイチさんもキャラ崩壊だった、シリアスな会話もなにもないなって感じだった。

「そ、それで――」

「それでハルイチ氏、結局メッキーズはどうなってるでおじゃる?」


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