表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/7

宙空ヲ転回ス

 落ちていた。

 足元に広がる五月晴れの青空と、頭上に広がる深く青い海。曖昧に伸びる水平線も、当たり前に青く遠く。燃料切れの飛空機から振り落とされてしまった僕は、どうしようもなく真っ逆様に。

 ただ、落ちていた。

 風を切る音が耳を抜け、身体の中を駆け巡る。助かりようのない状況。遙か頭上の海面を見上げ、身体が持たないだろうと悟り。

 母さん。僕は、もうすぐ、あなたの側にいくことになりそうです。

 父さん。僕は、もう一度、あなたに会って話がしたかったです。

 制服の裾がはためく。音を上げ、恐怖を掻き立てる。手足の震えが止まらない。

 何故、こんなことになったのだろう。

 考えても仕方のない疑問が頭をぎる。せめてもの悪足掻きに空を掴んでみたが、当然、手の内には何もなく。

 助かりたい。生きたい。少なくとも、母さんの仇を討つまでは。

「……母さん」

 思いつき、形見である黒い石の首飾りに手を添えた。不思議と震えが治まる。安らぎが広がっていく。恐怖を鎮めるよう、ゆっくりと、それを握り締めた。

 僕は願う。せめて命だけでも助かるようにと、僕は願う。

 海面は、もう直ぐに迫っている。僕は目を固く瞑り、只管ひたすらに願う。

 助けて下さい、と。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ