番外編
注意
今回の話は、この小説を書くにあたってその過程でうまれたNGシーン集となっております。
本作の執筆が少し詰まっている為、もう少し我慢頂きたとう御座います。
………すいません、あとバトルロワイヤル100%となってますので、ラブとかギャグとかしか興味ないかたは見ないで下さい。
基本的に厨二病の発作だと思って下さい。
…………悪いかバカヤロウ!
テイク1 #11 クロスデイズ 終幕より、ボツシーン
懐かしい日を思い出した。
“忘却の日”のあとで、世界に異能が生まれた日から、少し経った時。
それまで無能力者だった浅間香月は、とある事件をきっかけに、発火能力に目覚めた。
その時、銀次は。
破壊衝動に呑まれた香月と、三日三晩殺し合った。
彼女は辛かった。
親の居ない世界で生きることが、こんなにも悲しいと思ったから。
ただ、一つ。
滅んでしまえば楽になれる。
そう願った。
歪な願いが、彼女に異能を植え付けた。
けど、それでも。
彼女を止めるために戦った銀次は、決して倒れなかった。
針川の山を焼き尽くした凶火は、銀次を殺すことだけは叶わなかった。
普段。香月は本気を出さないけど、確かに、その時彼女は。
ーーー蒼い炎を、使っていたような気が、した。
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「《朽庭の王》」
一体どういうことなのか。
銀次黄金色の光の奔流は。
櫂渚梁の蒼い炎の塊は。
互いに大きなエネルギー体だった。最早その規模は災害となんら変わりはない。
自然界では落雷が大きな被害を生むように、その高エネルギー体の衝突は、少なくとも轟音を、爆発を起こすはずだった。
通常の人間ならば28回は即死しているはずの致命傷が蓄積された銀次のロザリオは、優に山を焼き払う櫂渚梁の炎は、確かにぶつかったはずなのに。
何故だーーーーと銀次は呟き、櫂渚梁は不審そうに目を細めた。
何故だ
あれだけの大技をぶつけて、こんなにも静かなのだーーーと。
そこは、針川の街の最端にある人工浮島。
地震や津波に強いという触れ込みの針川市優先戦闘区域。知っている、だからそこまで逃げて場所を移したのだ。
互いに互いが、なんの異能だーーーと問う。
だが、2人は知らない。
俺たちの異能は、何処へ消えた?
「………………無粋な」
ポツリと櫂渚梁が言った。
血湧き肉躍るこの戦いを邪魔したのは誰だ?
「お、おい櫂なーーーーーー」
ぎ、と言いかけて、ふと止まる。
いや、銀次は自分の意思で黙ったのでは無い。
圧迫感。
それが銀次の体内に入り込んで、言葉を塞いでいた。
体も動かない。ただ、背中からとんでもない寒気が舐めるように血管を這いずっている。
これは覚えがある。
誰かが死んだとき、もしくは、既に死んだ時ーーーー必ず、この感覚に見舞われる。
殺意。指一本動かす事ができないほど圧倒的な殺意だ。
それは、背後から。
ゆっくりと、確実に起きていた。
強大な悪意と共に。
「ーーーーーーあら、無粋なのは貴方の方だと思うのだけど。蒼い炎は毒々しくて好きじゃないの」
直後。
ゾクゾクゾクゾクゾクゾク!!!と、ガラスが身体に突き刺さるような鋭利な感覚が、銀次の身体を蹂躙した。
そこにいたのは、荘厳なまでの漆黒の衣を纏った少女。
銀色の美しい髪と、蘭々と輝く瞳。
リリアネス・フォン・アルベストールが、クレーターの中心地に立っていた。
何故だろうか。
それをみた刹那の間に、銀次の胸中を、とても嫌なイメージが横切った。
彼女は、誰だ?
あの黒いドレスは?
ーーーいや、そもそも。
リリィはあんな話し方をしたか?
彼女は、異能を持っていたか?
「………………忌々しい蝿の王めが………。なぜでてきた………?」
「ふん、私だってオモテに出る気なんかなかったんだけどね。あの子がどうしても殺すって聞かないから」
「………はっ、お前じゃなくたって殺すくらいできるだろうが………。その男になんの価値がある……?」
「それも無粋ね。あの子にとっちゃ敵も味方も変わんないのに、なにを血迷ったんだか」
恐怖で身体を動かすことも出来ない銀次をよそに、話が進んで行く。
テイク2 同シーンより
武藤銀次は、どうしようもない程の死にたがりである。
無論それは周囲の人間が勝手に思っているだけであって、実のところ銀次は誰かの為に死ぬなんてまっぴらだと考えている。
ただ、自らの傷を省みないという点においては、その批評はある意味正しいと言える。
武藤銀次は、とうに死んでいるのだから、もうこれ以上死ぬはずが無い。
馬鹿馬鹿しいほどの勘違いである。
肉体面の死は、彼の精神に大きな欠如を伴ったのである。
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「あああああああああああああああっ!!」
じゃらりと鎖が意思を持ったかのようにうねった。
祝福ーーーその効果は、使用者の受けた傷を、異能の源泉たる生命力に変換する事。
この変換のレートは、銀次固有の限定解除の解除率に比例する。
現時点で50%。つまり、受けた傷の半分が銀次の力となる。28回の致命傷の、半分だ。
対し、櫂渚梁の蒼い炎は純粋に自身の生命力を元としている。
今までの戦闘で使った分を差し引けば、その魔力量は互角と言ったところか。
オン!!と音をたてて銀次が跳ねた。
黄金の光を纏った右ストレートが、的確に蒼い炎の中心点を捉えた。
衝撃波で地面が抉れ、足場が削られて行く。
圧されているのは、櫂渚梁の方。
だが銀次の力は一瞬の爆発力。そう長くは持たない。
故に櫂渚梁は、あえて防御の炎を少なくした。奴がストレートなら、こっちは隙を狙った一撃。
櫂渚梁は思う。
武藤銀次
力尽きた瞬間が貴様の終わりだ。
「……………炎循環」
防御の炎とは別に、櫂渚の右腕に炎が集中する。
黄金の光は、眩しい太陽の如く。
蒼い炎は呑み込む雲の如く。
気の遠くなるような殺意の応酬の境界線上。
「ーーーーーー?」
その中で、
武藤銀次は
櫂渚梁は、
確かに聞いた
感謝の言葉を
謝罪の言葉を
そして
「朽庭の王」
何よりも悲しみのこもった声で。
直後
世界が急変した
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感じたのは、小さな異変。
そして、身体中に砕いたガラスを注ぎ込んだような激痛じみた圧迫感。
ドクン!と音をたてて心臓がはねた。
ナンダ?/うるせえ。
ナゼダ?/知るか。
ウシロダ/なにがある?
オモシロイモノ/それがーーーなんだ?
「ーーーーーーーニゲロ」
猛然と呟く。
同時に銀次は、チカラの向きを変えた。横をすり抜けるようにし、蒼い炎を回避する。
予想外だったのだろうが、櫂渚梁がこちらを見ている。
お前はなにをしているーーー?
そう語っていた。
俺だって知らねえよ、銀次は言う。
2人の異能は、完全に行き場を失った。
その刹那。
おおおおおぉぉぉぉぉぉんん
漆黒の風が、銀次を飲み込んだ。
蒼い炎も、黄金の光も。
地を揺らすような轟音が、大地を揺らした。
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「が、ああ…………!」
武藤銀次は激痛に呻く。
そのすぐ隣で、櫂渚梁が膝をついていた。
互いが互いに隙だらけーーーーだが手を出そうとは思えない。いや、動く事ができない。
櫂渚梁は腹部に大きな傷を、銀次の身体からは右足が膝の下から消し飛び、左腕は肩口からごっそりと千切られたようになくなっていた。続いて、心臓部にはぽっかりと大きな穴が空いていた。
不死の特性があるとはいえ、銀次のほうが重傷。一発一発が即死レベルの致命傷だ。
偶然の事故ではない。明らかに銀次を狙い、櫂渚梁はそのついでに被っただけか。
んだよ、これ
銀次は思う。
これはお前の異能ではないのか、櫂渚梁。
「な、んとか……言えよ。てめえ……」
「…………しゃべるな、武藤銀次……」
銀次の予想に反し、櫂渚梁は軽傷だったらしい。
櫂渚は立つと、すたすたと銀次の元に歩み寄ってきた。
身構えようにも、体が動かない。傷の変換も追いつかない。武藤銀次は役立たずだ。
だが、
「……動くな、武藤銀次……」
櫂渚梁は、なにをするわけでも無かった。
ぽんと千切れた腕と足を放っただけだ。
なにをしているのか、銀次はわからない。
櫂渚梁は、知っていた。
どうでしたでしょうか?
基本的に暇つぶしなんであんまりいろいろ言わないで下さい。ヘコみます。
あと書いてあることもボツ設定ですので、悪しからず。
本編とは全く関係無いです。
マジで関係無いので、本当に別物だと思って下さい。