第1話 俺と渦と学校と
パラレルワールド。
この宇宙に、我々の世界とともに存在しているとされる異世界。
普段、そのいくつもの世界達は、平行線のように、交わることなく影響することなく存在している。
だがある時突然、世界を繋ぐものが現れることがある。それは、物事には始まりがあること、また終わりがあることと同じように、当たり前で、また必然的なことなのである。
学校は…嫌いではない。
両親を亡くした俺に、わずかだが楽しみを与えてくれた場所だ。それに行かせてくれてる叔父にも感謝してる。「楽しい」と思った時もあった気がする。
けど今は「嫌いではない」だ。
何か足りない気がしてならない。一言で言えば「つまらない」だ。もっと広い世界がある。そう思うとどうしても「学校なんて…」ってなる。
そういいながらも今日も登校する。昨日の喧嘩のキズがまだ痛む。「けど相手に比べりゃ…」そう思えば大したことはない。
校門を過ぎる。やっぱりいたいた…。いつもの奴。
「よう!一真!今日もいい曲があるぜ!」
(あ〜 うっせえな) 心で呟きながら通り過ぎる。
「おい!ちょっとまてよ〜。か〜ずま〜!」
しつこくコピーCDを売ろうとするクラスメイトをシカトしてゲタ箱に向かう俺。ほとんどの連中が、俺に気づくと道を開けていく。
自分の靴を掴む。何度もの喧嘩でもうボロボロだ。
ボロ靴は俺に乱暴に履かれ、廊下を進まされる。途中すれ違う教師は誰1人として、止められていない学ランのボタンを注意はしない。
教室の戸を開ける。教室の空気が変わる。これもいつものこと、気にはしない。こうして今日も同じように始まる学校生活。全く楽しみはない。
チャイムが鳴り、始まる授業。これこそが俺の学校観を「嫌い」から「嫌いではない」に変えているものだ。教師は「不良のくせに授業は黙ってきく」という変わった生徒に戸惑いながらも、今日の授業を終わらせる。
放課後。特に何もせず帰り道を歩く。なのに今日も目をつけられ、そして喧嘩。もちろん負ける事はない。それでも達成感なんてものもなく、ただ虚しさを感じる。そんな事を毎日繰り返すだけ…。俺の人生はただそれだけ…。
「グワーン!」
突然謎の音がなった。と同時に空に巨大な黒い渦が現れた。そのブラックホールのような渦は段々と大きくなり、さらに風が吹きはじめた。まわりの落ち葉が、渦に吸い込まれていく。一真は自分が吸い込まれそうになっているのを感じた。何かいやな予感…。そんな事を考えている間に、風が一段と強くなった。危険を感じ、電信柱にしがみつく。
(ヤバい!)
風はさらに強まり、もう電信柱は細い枝ほどにしか頼りにならない、と感じるほどの風になった。喧嘩の疲労から電信柱を掴む力がどんどん弱くなっていく。
(もうだめか!)
限界を感じたその時、突如風はやみ、一真はそのまま地面に叩きつけられた。
「イッテ〜…。」
コンクリートにぶつけた、背中の痛みを感じながら一真が起き上がろうとしたした瞬間、
「ドカッ!!」
第2の衝撃はあまりにも強すぎた。
なんと人が空から落ちてきて、一真はその人の下敷きになっていたのだ!
そして一真の上では中年のおっさんがのびていた…。