人は死んだらどこへ行く?
人間だれしも死んだあとにはどこに行くのかを考えたことがあるだろう。天国、地獄、もしくはその間…………。考え方は人それぞれだが、結局は誰かが確認してきたわけではなく、まったくの頭の中の世界だ。その場所は死んでみないことには知ることのできない。
……つまりそれは死んだ後に得ることのできる唯一の知識だ。
遠藤シン…。彼は教室の窓からグラウンドの様子をうかがいながら考え事をしていた。もうすぐセンター試験が近づいているというのに、授業中に外などみて余裕の様子だ。
それもそのはず、彼は学年、全国でトップクラスの成績をおさめているのだから。
そんな頭の持ち主である彼が考えていること……、それは死んだ先にあるものだった。
放課後家に帰り、シンはいつものように机へと向かい自分のパソコンを開いた。ブログの更新だ。……そしてあるコメントに目をつけた。
今日の午後7時にS局の特番「世界のマイナーミステリー」で、埋葬されたはずの男が帰ってくる。という内容を見つけたよ。チェック済みかな?私は見れないので後日内容を教えて!
投稿:ハナミズキさん 2011年1月13日(木) 13:11
「あと8分か……」
6:52と表示された、机の上にあるデジタル時計を見てつぶやいた。そして、テレビのあるリビングへと向かった。運よく親は出かけていて叱られる心配はない。
そして、6:59に前の番組は終わり、続けて例の番組が始まった。
冒頭の20分は別のミステリーがあり、どれもシンの心を引き込みそうなものばかりだったが、シンはそれどころではなかった。
埋葬のことだけが頭に入り、早く見させろと言わんばかりの顔でテレビ画面をじっと見ていた。
「さ、続いてはこの話に行きましょう。……死んでしまった男、彼は親族の手によって墓地に埋葬されました……。しかし数日後、なんと彼は土から出てきて家まで帰ってきたのです。いったい彼に何が起こったのでしょうか?番組は本人に直撃しました……」
番組のナレーターがそういうと、シンはテレビに飛びついた。そしてある男のストーリーと直撃インタビューの内容が放映された。
「……では土の中にいた時には、どんなところでしたか?」
そう訊ねるのは番組のインタビュワーだった。
「不思議なところだったよ。憶えているのは自分は草原に横に寝そべっていて、そしてのどかなところでしたよ。……何も考えず、何もせず、気が付けば家に帰ってきていたのです」
ある男はそう応え、そして番組は次のミステリーに移った。
シンは愕然とした。予想とははるかに違い、ありがちな応えが出たからだ。もっと具体的に説明しないとそれが真実なのかもわからない。そしてシンは思った。
自分で見てみないことには納得ができない。
そう思った瞬間、彼は部屋へと戻り、スリープ中だったパソコンを立ち上げてブログを開いた。
ハナミズキさん。ご紹介してくれた番組は信頼性が全くありません。なので番組の内容は控えさせていただきます。
ですがこれから実際に僕が死んで確かめてきたいと思います。もしも還ってきたら、詳しい内容を説明しましょう。
それではさようなら……。
作成日時 2011年1月13日(木) 19:46
そうかき終えると、シンは机の中から太さ1㎝、長さ2mほどのロープをとり出した。それをカーテンのレーンにしっかりと括りつけた。その下には椅子を用意してシンがその上に立った。
「みんな、行ってくるよ……」
そうつぶやいたシンはロープに首を吊り、立っていた椅子をけった。
2011年1月13日 19:54
彼の動きは止まった。
彼は還っては来なかった。
だから彼がどこに行ったのかは分からない。天国、地獄、もしくはその間。
もし、彼が還ってきてブログに書いたところで、誰も彼を信じないだろう。
なぜなら、人間は自分が体験したことを優先的に信じるから。
死んだ者はどこえ行くのだろうか?……生きてるうちにその答えが出ることはないだろう。そう、それは死んだあとの話だから…………。