悪夢 前編
鈴木逞⇒主人公。紫苑の兄。
鈴木紫苑⇒逞の妹。
青木郁見⇒友人A(♂)
今の所これだけ。
キーンコーンカーンコーン・・・。
試験の終わりを告げるチャイムが教室に鳴り響いた。
緊張の糸が切れたかのようにグッタリとうな垂れる者もいれば、チャイムと同時に間違いに気付いて喚いている者もいる。
俺は前者でも後者でもない。
テスト問題を見た瞬間にやる気を殺がれ、赤点街道まっしぐらな人間、俗に言う"馬鹿"だ。
どこぞでテストの点を競ってる奴らを見てるとイライラしてくる。
「なぁ逞、今回のテストの合計点、勝負しようぜ」
・・・・・・・・・。
「負けた方がメシ奢りな!」
・・・・・・。
「いつ返ってくるんだろうな~」
「だーうっせぇ!そういうのは他所でやってくんねぇかな?毎回俺が負けてんじゃねぇかよ」
「だから誘ったんだって。俺、金払うの嫌だもん」
同じ理論で俺も嫌です。
「いいからあっち行け。俺はもう帰るから」
「ちぇ、連れねぇの」
はいはい、連れないのは分かってますよ。
試験中に十分眠ったのに、睡魔は活動を休止しない。
早く帰って昼寝でもすっか。
♪
「うわぁぁぁぁ!!」
起床。
背中に嫌な汗をかいている。
「最悪な夢を見てしまった・・・・・・」
要約するとこう。
・強引に魔法少女にされる。
一見ファンタジー且つ5秒で見終わりそうな夢なのだが、俺にとってはきつかった。
だって男の子だもんっ!
「魘されてたらどうしようか・・・」
玄関を確認してみたところ、親の靴は無い。
近隣のおばさま方が、
『あらあら鈴木さん。お宅のお子さんが昼間に発狂してたわよ』
なんて言わない限りは大丈夫だろう。
俺は安心して玄関から自室へ戻ろうとし・・・・・・柱の影から妹が大口を開けて俺を見ている。
何だ?やっぱり発狂してたのか?
恐る恐る近づいてみる。
「よ・・・・・・」
よ?
「寄るな変態!」
「えぇー・・・」
俺が"ぽかん"としている間に紫苑は猛ダッシュで部屋に逃げ込んだ。
何で俺が変態になるんだ?
そりゃ高校生男子、トレジャーの一つや二つなんて常識の範囲内だろ?
一体何が原因で・・・
フサっ。
腰に手を置いた・・・はずだったのだが、何かが邪魔をする。
何これリボン?
ん?ドレス?
気になって鏡を確認しに洗面所へ。
そして俺は紫苑の指した"変態"を目の当たりにすることになる。