昔語り
今日は待ちに待った花嫁との顔合わせの日だ。
最初の結婚からだいぶ月日は経ち、他国との交流も増え、白い髪と青い目を持つ者も珍しくなくなってきた。
十歳になったら花嫁候補に会いに行くと決めているのだが、会うまで気が気ではない。
もしかしら既に好きな人が出来ているかもしれないからだ。
(それはそれで仕方ない。彼女の人生は彼女の物だ)
そうは考えつつも、実際にその場面に出くわしたら発狂するだろう。
なので会うまではいつも緊張と不安に押しつぶされそうであった。
どうか自分を好きになってほしい、そんな願いが心を占める。
そうして何人かの花嫁候補に会ったのだが、すぐに妻はレイシスであるとわかった。
「ルージュベリーみたい……」
その言葉に嬉しくなり、思わず泣きそうになった。
彼女はいつも変わらない。記憶がなくなっても、いつも同じ事を言ってくれる。
「あなたの目って、ルージュベリーみたいね」
今でこそ国中で見かけられる果物だが、昔はほんのわずかしかなかった。
やせ細った土地に貧しい暮らし。
そんな中彼女はちっぽけな自分の為に少ない食料を分けてくれ、守ってくれた。
だから今度は自分が守るのだと、何度生まれ変わっても彼女のもとを訪れている。
もう二度と悲しく苦しい目に合わせないようにと。