第三話 期待と不安と
「だいぶ、設定出来てきたし、今度はアバター作っちゃおっか♪」
あれから数日、みこ先輩も配信があるというのに、『悠希つづり』の設定を一緒に思案してくれていた。
どれくらい話しただろうか。ある程度の『悠希つづり』が出来てきたところで、みこ先輩はそう呟いた。
いよいよvirtualの自分が出来てしまうのか、と物思いに耽っていると、早くこっちにおいで、と部屋の奥へと手招きされた。
そこは、例の配信部屋だった。
「ここで作るんですか?」
「うん!パソコンがここしかないからね」
それもそうだが、なんだか身が引き締まってしまう。
みこ先輩は、相変わらず配信を続けていた。当然わたしも、リスナーとして配信を見続けている。
いつも忙しいのに、それでもリスナーが飽きないよう、いろんな企画を考え配信している姿は、本当に素晴らしいと憧れさえ抱く。
わたしにも、できるかなぁ……
VTuberとしてデビューするのは、当然楽しみではある。やりたいこともたくさんある。
けれどその反面、不安をぬぐい去ることは出来ない。
「えーっと……ここをこうして……はい!『悠希つづり」を組み立ててみて♪」
わたしは、恐る恐る画面を覗いて見る。
見たこともない、設定項目がずらりと並んでいた。
こうして、みこ先輩に教えて貰いながら、『悠希つづり』は完成した。
いや、配信をしていないから、まだ完成とは言えないだろうか。配信をして初めて、『悠希つづり』というvirtualライバーが完成する。今のままでは、未完成だ。
『悠希つづり』というvirtualのアバターは、髪が深い青色をしている。水縹学園virtualライバーとして服は、制服にしてみた。まだ新人なのでこの服から始めてもいいだろうと思う。
「よし!明日さっそく配信してみよっか♪」
「え!?明日!?」
突然の発表に、驚きと同時にふわっと浮き上がった気持ちになった。同時に、不安も押し寄せてくる。
わたしの気持ちは大渋滞を起こしていた。
「わ、わたしに出来ますかね」
「なーに言ってるの?そのためにいっぱい練習してきたんだから、きっと大丈夫だよ!」
頑張れ!と言いながら、みこ先輩は両手を胸の辺りに持ってきて、拳をつくる。
「……わかりました。頑張ります!」
わたしも、右手でガッツポーズをしてみせた。
その後は、みこ先輩と初配信に向けてどんなことに注意すべきか、などのアドバイスを受けた。
そして、明日の配信に胸を躍らせながら、はたまた不安を胸に抱きながら床へとついたが、なかなか眠れるわけもなかった。
翌日、緊張の面持ちで配信へと身を投げ入れていった。
「みなさん初めまして!水縹学園virtual部所属、アニメ枠担当の悠希つづりです!」