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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

老害

作者: HORA

深夜3時。駐車場に息を切らせた若者4名が駆けこんでくる。


「ふ~っ。今日のヤツはあんま手ごたえなかったな。」

「確かにな。抵抗したりとか逃げたりしなかったもんな。

辞めろぉ~!辞めろぉ~!

しか言わなかったし。そこらのペットのオウムでももうちょい(しゃべ)るわw」

「世直し活動も1年も続けてると若干刺激が足りなくなってきますな~」

「世直しってw つまるところホームレス狩りじゃん?」

「世の中の役に立たないホームレスを成敗するって良い事っしょ?俺達はSNSで噂の正義のヒーローだしな。仕方なしにやってんだよ。」

「はははっ。仕方なしってw 先週の逃げ逃げおっさんなんてめちゃくちゃ笑顔で追いかけてたじゃん。」

「殴るとさ、ホームレスによってそれぞれ違う変な声を出すんだよな。ひえっ!とか、ギャッ!とか、おぶ!とか。ぷぷっ!…んで体力なんか無い癖に逃げるから追いかけてから狩るのがマジ楽しいんだよ。お!ゴミ掃除とハンティングも楽しめてコレWin-Winってやつじゃん!」

「いや、狩られる老人はWinじゃないっしょ!」

「市民の憩いの場の公園を占拠して、税金払っても無いホームレスに人権なんてねーよ。そこらの野犬とかゴキなんかと一緒じゃね?老害ってやつ?」

「まぁ、そうだな~。あえて使えるって言えば、就活中の若者が公園の炊き出しとかのホームレスの世話に参加して、ボランティア活動してましたーって企業アピール助けるくらいのもんだろ?」

「確かにホームレスなんて家族からも見捨てられてるからな。死んじまっても誰も悲しまねーか。」

「毎週土曜の夜の飲み会の後にやってるホームレス狩りももう何回目だ?俺らがこんなにやってても捕まってねーってことは警察も興味ねーんだよ。」

「あっはっは!鬼畜だね。その飲み会の(かね)もホームレスのなけなしの金を奪ったものじゃんか。」

「どうせ生きてても老い先短いんだから、未来ある若者に譲って下さいよ~ってね。」


4人の若者は黒塗りでスモークの張られた大きな車の中で先程の、そして最近の彼らの娯楽(・・)であるホームレス狩りについての話をする。事前にホームレスの多くいる公園などの地域を下調べしてある。

ある程度有名になっている彼らに対し

「××市の公園でホームレスがたむろってるので天誅して下さい」

なんて依頼じみたDMすら送られてきている。

特定の地域でのホームレス狩りが続くと捕まるリスクが高まる事から襲撃する地域を毎回変えながら行ってはいるようだ。そして翌週にホームレスを襲撃する予定となる場所ととその近くにある待ち合わせ場所の居酒屋を4人で共有してからの解散となる。いつもの流れである。


彼ら4人の親。社長だったり、一流の企業勤めだったり、彼らは金銭的に何不自由なく、しかもゆとり(・・・)世代で育ってきた。それぞれ幼少から格闘技を習っており体格が良いという共通点もあった。それぞれの学生時代、クラスでは悪い意味で目立つ存在。声や態度が大きく陰キャラと呼ばれるクラスメイトをいじめていた。自身をスクールカーストの上位だと自覚し、大半の同年代や、教師であっても徹底的に見下していた。そんな4人が高校、大学で知り合い共鳴してしまった事が暴走に拍車をかけてしまったと言えるだろう。



その翌週の土曜日の未明



その4人の若者は行方不明となり



1週間後に4人は遺体で発見される事になる



程なくして ある橋の下

ホームレス数人が1つのテントに集まり酒盛りをしながら話をしている。


「人の心を持たない、ろくに働いてもいないチンピラを始末することに罪悪感は無いぞ。ここにいる儂らは皆があのようなクソガキどもに詐欺でお金を騙し取られて家族や家を壊されてしまった集まり。儂らがあの時分の年には国や家族のためにと仕事や様々な活動をしておったのになぁ。

しかし今のガキ共はどうじゃ!?

自身の権利と快楽のための言動しかせずに、両親をはじめ少し離れた年上の先輩達を馬鹿にして全く成長せんやつばかり。そこらの野良犬の方が集団での暮らし方が分かっとるわい。

戦後すぐの頃には戦争なんか百害あって一利無しと考えておったが、規律や家族や愛国への情は大切だったんじゃな。戦争を全く知らない世代はロクでもないやつばかりじゃ。やつらに分からせねばならん!それは儂らの戦争なんじゃ。()人がなっとらん若者を殺()するんじゃ。捕まってもどうせ先なんて無いからのぉ。怖いもんなしじゃ。

とはいえ儂らからDM送ったぐらいじゃしな。たまたまホームレス狩りに遭い、たまたま山の中に逃げ込み、たまたまやつらが害獣用に設置してあったトラバサミに挟まれ、そのまま熊だか野犬だかに食い殺されたって(すじ)じゃろ?

世の中の役に立ってない若者なんぞが死んでも周りはせーせーしてるじゃろ。あんな事ばっかりやってるから(あき)れた親に情報を売られるんじゃ。」


「うんうん。だよな。まぁあのガキどもの財布の中が結構ホクホクだったからこそ酒盛りできてるのだけは大大大感謝だわい。」


「「「違ぇねぇ!」」」

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