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王女、壁ドンと初嫉妬に喜ぶ


「おいグラシア!!またリリアを虐めたそうだな」

「だから私ではありませんと申し上げています」

「煩い!!リリアに謝れ!!」

「あらあら、お二人とも冷静になりませんと話し合いもできませんわよ」

「誰だお前!!」

「あらまあ、今日挨拶をしたではありませんの。私訳ありのリーナと申します。訳あって身分を明かせません」

「ごほんごほん!!リーナさん、授業のことでお話があります」

「まあジェイズじゃなかった、先生。先生のためならいつでも馳せ参じますわ」


 空き教室に入った私をジェイズが壁際に追いやる。


「あら、これは壁ドンってやつだわ。ふふふ」

「リーナ様……」

「なぁにジェイズ」

「なぁにではありません。何故王子に話しかけるのですか」

「へ?間に入っただけで王子に話しかけてはいないわ」

「王子がリーナ様を認識したではありませんか」

「潜入してるんだから別におかしくないわ。クラスメイトなんだし話さない方がおかしくない?」

「一般生徒は王子と口を利くことはありません」

「んーそうかしら」

「王子以外にも男と話してはいけませんよ」

「えー!!」

「私以外の男と親しくなりたいのですか?」

「いや、違うけども」

「では良いですね」

「もう……初嫉妬ね。ふふふ、嬉しい」


 嫉妬するジェイズも好きだわ。ちなみに私たちは無事に学園に潜入した。私は生徒として、そしてジェイズは教師として。


「……それで、初日から何をされているのです」

「何をって。魅了された王子が悪役令嬢と争っていたので親切に声をかけてあげただけよ」

「なんでそのようなことを」

「だって一方的なんだもの。全然話を聞かないのよあの王子。教室内でもヒロインといちゃいちゃしてふんぞり返ったりしちゃって」

「それにおかしな名乗りかたも。まさか教室でもされてないですよね」

「もちろんしたわよ」

「リーナ様……。あなたはレイジア国の地方貴族グランディア子爵家の養子のリーナ・グランディア様なのですって言いましたよね。身分は明かして良いのですよ」

「あら、そうだったわ」


 リーナ・グランディアね。どうせ姓が変わるならレビエアが良かったわ。ジェイズ・レビエアと結婚してリーナ・レビエア。むふふ。でも女王になる私にジェイズが婿入りするからレビエアは名乗れないのよね。


「はあ……」

「せっかく決めた格好いい決まり文句だから使いたくて」

「格好いいですか?」

「ええ。それにしてもジェイズ。この学園の男たちときたらどうなっているのかしら。ほとんどあのリリアってヒロインの魅了にかかって鼻の下を伸ばしてるのよ。これじゃ私が本来の姿でいても誰も気にしないわ」

「だからって眼鏡を外してはいけませんよ」


 今の私は茶髪に茶色の眼鏡、髪型はお下げ。ザ・地味女子スタイルだ。空き教室にあった机の上に座ってジェイズの話を聞くことにした。


「わかってるわよ。それで、教師側はどうなの?」

「教師側も一部リリアという女の魅了にかかっていますね」

「うーん、王家を乗っ取ろうとしていると聞いたから学園中を魅了にかけるとは思わなかったわ。何故かしら」

「リリアという女ですが、魅了を制御できていないのかもしれません」

「そうなの?」

「どうやらリリアは光魔法を持っているようですが魅了は光魔法によるものではないようです」

「え、そうなの?」

「裏に魔女がいるという話でしたね。闇魔法で魅了をしているのかもしれません」

「闇魔法でできるものなの?」


 私のジェイズってほんと物知りなのよね。


「わかりませんが神聖力を持つ者は影響を受けていないようなので」

「神聖力って闇魔法を払い除けるの?闇魔法ってあまり使い手がいないから聞いたことがないわね」

「神聖力は魔物に使えば浄化、人に使えば治癒や守護の力になります。治癒や守護というのはできないこともありますが神聖力の多さによってできないができるに変わる、不可能なことは死人を生き返らせることくらいだと云われています」


 確か私が10才で毒を飲まされた時だって父と母は神聖力を使ったのだが効かなかった。それが女神メアリーナが死ぬはずだった私を生かすため私の神聖力を増幅させたのだ。


 それが人には過ぎるほど膨大な力だったため私の成長は止まったそう。あの一時のみ神聖力を増やしただけで解毒した後は元の神聖力量に戻したからしばらく経てば成長もするだろうという話だった。それなのに、それなのに10年経っても成長しないのだ。女神にも理由はわからないと言われてしまい非常に困っている。


「闇魔法は毒や呪術を使う魔法です。他人の精神を呪術で操っている可能性もあります。それなら神聖力が影響していてもおかしくありません」

「そう。初日でそこまで推理するなんてさすがジェイズね。すごいわ!!」

「魅了魔法ではないかもしれませんが事象としては魅了されているのでしょうから引き続き魅了と呼ぶことにしましょう」

「そうね。教室ではリリアは3人の男子と一緒にいるの」


 リリアをヒロインとした乙女ゲームの攻略対象は王子、宰相の子息、騎士団長の子息、商人の子息だ。ありきたりだが仕方がない。このシリーズのウリはあらゆる性格のイケメンと恋愛できることでなんといっても絵が綺麗だった。


 とにかくこの4人中3人が同じ2年生で同じクラスなのだ。商人の息子は1年生、国王の隠し子も1年生だ。


「3人の男子の馬鹿っぽいこと。リリアが授業についていけないって泣けば教え方が下手な教師が悪いって慰めるのよ。アホすぎでしょ」

「王子は元々馬鹿だと評判です。他の2人はそこそこまともと聞いていたのですが」

「あと悪役令嬢のグラシアだけど、なんだか思ってたのと違うのよね。確かにキレやすくて高飛車な感じではあるんだけど私が知ってるグラシアは王子のことを好きで嫉妬に狂ってるはずなの」

「愛想を尽かせたのでは?」

「うーん……そうなのかしら。トラコちゃん何か知ってる?」


 ブローチになって私の制服の胸元についていたトラコが白虎の姿に戻る。


『はわわわぁ。メアリーナが言ってた通りーこの世界はゲームの中ではないからリーナが関わっていなくても人の性格が違っていたりするのよー』

「なるほどね。ってことはグラシアは本当にリリアを虐めてはいないのかもしれないわ。グラシアと仲良くなって事情を聞いてみましょう」

「リーナ様、大丈夫ですか?」

「任せてちょうだい」


 ジェイズもトラコも不安そうな目で見るけど心配しなくても大丈夫よ。安心して私に任せてちょうだい。



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