護衛騎士の転機(sideジェイズ)
「ではトラコ様、よろしくお願いします」
『はわわぁ、わかったわー。でも大丈夫?』
「大丈夫……ではありませんね」
『はわわぁ……これで少しは気が楽になると良いのだけど』
「ありがとうございます」
トラコ様がベッドに横になった俺の枕元に頭を寄せてくださる。そのまま俺は目を閉じた。
「はわわぁ……ようこそーいらっしゃーい」
ゔッ……
「はわわぁ……!!トラコーどうしましょー」
「はわわぁ……!!リーナと私と一緒だから平気かと思ってたけどダメねぇ!!」
「い、い……え……」
俺は強力な神力の前に平伏していた。これが女神メアリーナ様の神力……。
「そうだわぁ、これでどうかしら?顔を上げてちょうだーい」
メアリーナ様の言葉で身体が勝手に動き俺は顔を上げた。それでも身体の自由が利かない。
「ジェイズなら少ししたら慣れて身体も動くと思うわぁ。ねえ、それにしてもリーナが自分の大人になった姿を見られて安心したわー。だってリーナったら魅惑的なボンキュッボンになるんだって、なれなかったら先祖の私のせいだって言うのよねー。酷いわー」
「はわわぁ。それに関してはノーコメントだったわねー。後で言ってくるかもしれないわー」
「残念だけどリーナがボンキュッボンになる未来はどこにもないのにねー」
「リーナ様は大変美しいです!!」
「あらー動くようになったみたいー」
「良かったわージェイズー」
俺は自由が利くようになった身体でたてひざをつく。
「リーナ様は愛らしく美しい……とても魅力的です」
「ジェイズにとってはリーナがボンキュッボンでもストンでも何でも良いのねー愛だわー」
「愛ねー」
「何でこの愛を勘違いできるのかしらねー」
「本当ねー」
「女神メアリーナ様、どうかお願いします。リーナ様を再転生させるのはどうか止めていただけないでしょうか!!」
俺はリーナ様を失いたくない。神様、女神様、どうかお願いします。俺は必死に頭を下げる。
「んー私も好きで再転生させたいわけじゃないのよー」
「ではっ!!」
「リーナの未来に死相がありすぎるのよー」
「そんなっ……」
「私未来が見えるからーリーナがこの先色々な場面で死んじゃう道があるのよ。未来はいくつもの道があるからーその道にならなくてもまた別の場所で死ぬ可能性があるのよー基本早死になのよー。もちろんそうならない道もあるけれど」
「リーナ様が死ぬ……」
リーナ様を失う……そんなの……そんな未来俺が変えてみせる!!
「お願いします!!未来を教えてください!!俺がリーナ様を失う未来なんて来させません!!」
「ひゃー!!リーナみたいにグラグラしてこないけど突風で飛ばされそうー!!」
「はわわぁ!!メアリーナー!!ジェイズの風の魔法で飛ばされそうねー!!」
「あ!!すみません!!無意識でした、制御できなくなったのは子供の時以来です!!」
俺は慌てて魔法を止める。目を回してしまわれたメアリーナ様とトラコ様に駆け寄る。
「良いのーグラグラされてたらリーナに怒られるところだったからー」
「はわわぁ……それは未来を見なくてもわかるわー」
「申し訳ございません……」
でも他の女に触れるなと嫉妬してくださるリーナ様が想像できて俺は顔を両手で覆う。
「ああ……可愛すぎる」
「はわわぁ……でもねージェイズー未来を見せるのは難しいのよ」
「そ、そうですよね。ただの人間の私にそのようなことが許されるはずが……」
「あーそういうわけじゃないのよ。未来視としてではなくて正夢になりそうな未来を夢で見せてしまうというのはたくさん私に願いを伝えてくれる人にはするのよ。こちらが決める相応の対価を払ってもらわないといけないのだけど。私より偉い神が定めてるの」
「え、そうなのですか?では」
「ただ難しいと言ったのはあなた自身の身が持たないからなの。それでも良いとあなたが強く願うのであれば……」
「身が持たない……」
「リーナが死ぬ未来……必ずジェイズは自らリーナを追ってすぐに自害するの」
メアリーナ様の言葉に俺は納得する。それはそうだ。リーナ様のいない世界で俺が生きる意味などない。
「ジェイズにとっては自分の自害なんて、そう言うわよね」
「はい」
「ジェイズが払う対価はね、これから見せる未来視、リーナが死ぬ直前から自分が死ぬところまでを実体験して見ること。1回2回ではないわ。……数百回」
「はわわぁ!!メアリーナ!!そんな、厳しすぎないー⁉」
「ええ、そうなのよ……。でも我らがビオナ様がこれじゃないと駄目って」
「はわわぁ……そんな……」
リーナ様を失う未来を数百回経験する……。
「やります。お願いします。現実でリーナ様を失うことのないように」
「わかったわ……では今までのジェイズにさよならね」
「は?」
「はわわぁ……メアリーナ、どういうこと?」
「未来を視てからジェイズの性格が変わるのよー」
「はわわぁ!!人格が変わるほどの苦しみがあるのねー!!」
「ええ、でも安心して。リーナはどんなジェイズも受け入れるからー」
「はい。俺のことなんてどうでも良いので。リーナ様が受け入れてくれるのであればなんでも」
「わかったわ。……では行くわね。一斉のーせ」
パチン――――




