王女、思い思われる
「さあ、飲んで」
「はい」
「あっ!!やっぱり待って!!」
「はい」
「スーハー……よし、飲んで良いわ……いや!!待って待って!!」
「いちゃついてるとこ悪いのだけど。あんまりもたもたしてると薬が変化しちゃうから余計なことを考えないで飲んだ方が良いわよ」
「変化するのは困るわ!!」
私たちはレゼブレア王国にあるとある人気のない森林の中にいる。遂に悪い魔女から真実の姿が見れる薬を受け取ってジェイズと私が2人で飲もうとしているところだ。
だけどジェイズの好みの容姿じゃなかったらどうしようとかジェイズから期待はずれみたいな反応されたらどうしようとか思って薬の入ったグラスを持つジェイズの腕を掴んで引き留めているのよ。
『そうだトラコちゃん、泣き虫女神に言って未来視してくれない?ジェイズがどんな反応するか知りたいわ』
『はわわぁ……心配しなくても大丈夫よー』
『そうかしら』
『そうよー。それより悪い魔女が言う通りのんびりしてる方が大変なことになっちゃう未来が待ってるわよってメアリーナが言ってるわよ』
『大変なこと⁉』
『そう、例えばジェイズが悪い魔女とー』
『えー!!その時点で駄目ー!!』
『まだ何も言ってないわよー』
「ジェイズと悪い魔女がナニをしても駄目!!いやー!!ナニってナニー!!ごほんごほん!!」
私は叫んだ直後に咳き込んで手にしていたグラスに入ったものを飲む。
「はにゃ⁉水じゃない!!水じゃないんだった!!ジェイズ!!早く飲んでー!!」
「はい」
私は本来の姿を一番にジェイズに見てほしかった。私が先に飲んでしまうとジェイズの瞳に映る自分の姿が見慣れた子供姿ではなくなってしまう。だからジェイズが先に飲んでその後私が飲んで持ち込んだ姿鏡で自分の本来の姿を見る。そういう段取りだったのよ。
ジェイズが薬を飲んでいる間私は目を閉じつつ髪の毛を解かしたりして身支度を整えてみる。
「しまった!!目を閉じてたらジェイズの反応が見れないじゃない!!……ジェイズ?ねえジェイズ?」
ジェイズから何も反応がなくて私は思わず目を開ける。
「ジェイズ⁉」
目を開けた瞬間ジェイズが膝から崩れ落ちた。
「ジェイズ⁉薬に変な効果が⁉」
顔を手で覆うジェイズが首を横に振る。
「違うの?」
「リーナ様……」
「何?」
「抱いて良いですか?」
「はにゃにゃ⁉い、良いわよ!!」
どんと来い、と私が両手を広げて待っているとジェイズが顔を上げる。その顔は真っ赤で涙目になっていた。
「ど、どうぞ?抱きしめて?」
「……っ!!リーナ様……」
「んっ……」
抱きしめられてない!!いや、抱きしめられているけれど、でも、でも!!
『トラコちゃん!!私キスしてる⁉ジェイズとキスしてるわね⁉』
『はわわぁ……私は空気を読む神獣ー見てないわよー』
慌ててブローチになっているトラコに話しかけたけどそう、ジェイズに抱きしめられながらキスをされているのだ。キスを!!……なぜ⁉この一瞬で惚れてもらえたの⁉すごいわね私の容姿!!
「……リーナ様、すみません」
「い、いいい良いのよ⁉本来の姿はなんか凄いのね!!」
「ええ、凄いです」
「おほほほほ。そうなのね、ものすごいのね」
ジェイズはその場で膝をついて手を合わせて祈りの体勢になってしまう。なぜ⁉
「懺悔します。タガが外れました」
「タガ……?」
「はい。神の末裔で尊ぶべき天使のリーナ様を日頃から性的な目で見てしまうこと自体愚かしいことなのに」
「せいてき……?神聖ってことかしら?」
「日頃から思っている言葉、抱きたいと口にしてしまう始末。言葉の真意もわからない純真無垢なリーナ様に欲を押し付けるようにキスをするだなんて」
「欲……」
「性欲です」
「聖欲?ジェイズは信心深いものね……?」
「……リーナ様」
「何かしら?」
「お願いします。本来の姿に戻ったら一週間私だけにリーナ様の全てをください」
「んん?よくわからないけど良いわよ?何して過ごしましょうか?」
「ナニです」
「へ?」
「一週間ずっと抱かせてください!!」
「ほえっ⁉そ、それって……」
「陛下からは旅の間にお子が生まれたら誕生の儀式を略式でするよう言われていますが生まれること自体は構わないと言われています!!お願いします!!一週間後からは他の人間の目に触れて構わないのでどうか一週間だけでも私だけのリーナ様でいていただけませんか?」
「ジェイズ……待って……」
「そうですよね。いくらなんでも神の末裔で在らせられるリーナ様を自分だけのものにするなど赦されるはずが」
「違うわ!!違うのよ!!」
私はジェイズの言葉を振り返る。
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『はい。神の末裔で尊ぶべき天使のリーナ様を日頃から性的な目で見てしまうこと自体愚かしいことなのに』
『せいてき……?神聖ってことかしら?』
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聖的ではなく性的⁉
――――――――――――――――――
『日頃から思っている言葉、抱きたいと口にしてしまう始末。言葉の真意もわからない純真無垢なリーナ様に欲を押し付けるようにキスをするだなんて』
『欲……』
『性欲です』
――――――――――――――――――
性欲!!ちょっと待って!!日頃から⁉
「日頃から⁉」
「はい?」
「今好きになってくれたんじゃないの⁉」
「はい」
「私たち両思いだったの⁉」
「そうですよ?」
「そうですよじゃないわよ!!ジェイズは私を主として慕っているだけでしょ」
「もちろん主として慕っていますが私は主として慕っているだけではなく常日頃から1人の女性として愛していますよ」
「ジェイズ……!!グスン……何よ、どういうこと?私が勘違いしてるって知ってたわね?何で言わなかったのよ」
嬉しいのに。ジェイズが愛してるって、女として愛してくれてるって知って嬉しいのに素直に喜べないなんて。可愛くない。
涙を流す私の涙をジェイズが指で優しく拭う。
「可愛すぎて」
「可愛い?」
「既にこんなに心底惚れ込んでいるのに俺に惚れられようとする貴女が愛おしくて見ていたくて」
「な、何よそれ……馬鹿」
「それにリーナ様が可愛いアプローチをしてくださる間は俺の自制心が効くので」
「自制心が効かなくなると?」
「抱き潰したくなります。部屋に閉じ込めて誰の目にも触れないで誰とも話さないようにして俺だけを目に入れていただけるようにします」
「まあ」
「……すみません」
「どうして謝るのよ」
「変態だと引かれたくないので」
「大丈夫よ!!変態ってのはライアンみたいなことを言うのよ」
「リーナ様……」
「ん?」
「リーナ様から他の男の名前も聞きたくないのです」
「嫉妬ね!!わかったわ」
「……リーナ様、すみません。もう1つ言わなかった理由があります」
私がそう言うとジェイズは何故か悲しそうな顔をして私に手を差し出す。私は首をかしげながら手を取って立ち上がる。ジェイズは用意していた姿鏡の前に私を立たせる。




