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辺境伯令嬢は思いを馳せる(sideティティ)


 目の前でヘンリが倒れた。私は駆け寄ろうとするリオナを抑え、飛びかかってくる狂暴化した獣に剣の柄を噛ませた後払いのける。そしてライアン様に目を向けると彼はヘンリの容態を見つつ騎士団やホールにいた大臣たちに指示しているところだった。


「ライアン様」

「わかってる。ヘンリを連れて僕は下がるよ」


 元々決めていた作戦を無視し当日になって本人がここに来た時には頭を抱えた。危険とわかっている場所に悪い魔女の狙いであるライアン様本人が来るなんてと言う私にライアン様は私に直接誕生日を祝ってほしくてなんて言ってきた。毎年お祝いをしようとする私を遠ざけているくせに。


「ティティ様っ」


 悠長に考え事をしている場合じゃないな。次々と襲いかかってくる獣たちを払いのけながらリオナを守っているけれどキリがない。


 獣たちに囲まれてライアン様やリオナやヘンリを逃がせない。どうするか、と思っていると――――。


「おーほほほほほ!!戦姫リーナの出番のようね!!」


 リーナが白い虎に乗ってホールに現れた。


「リーナ様?虎?」


 リオナも私も虎に乗る妙に様になっているリーナに戸惑っているとライアン様が言う。


「あれは白い犬だ」

「え、犬?」

「そう、ただの犬だよ!!リーナ嬢!!」


 ライアン様がリーナを呼ぶとリーナと一緒に来ていたカヤとガレンもこちらに気付いて駆け寄ってきてくれた。


「ヘンリ様⁉」


 カヤが倒れているヘンリを見て驚いて駆け寄る。


「カヤ……ヘンリ様がもしかしたら悪い魔女の薬で……」


 ヘンリは尋常じゃないほど苦しみながら倒れた。もしかしたらグラスの中に悪い魔女の薬が入っていたのかもしれない。


「リオナ様!!大丈夫です!!良い魔女の私に任せてください!!」

「ふむ、ヘンリを安全な所に運ばないと駄目ね。トラコちゃんに乗せて行ったら良いわ。トラコちゃん騒がしいし」


 トラコちゃん……?トラ……?


「それは良い。リーナ嬢、ヘンリを運んでもらえるか?」

「もちろん。……ん?良いのよトラコちゃん。え?ジェイズに言い付ける?どうぞ……え、それは駄目!!もうすぐ到着するジェイズに抱きつくなんてトラコちゃん駄目よ!!」


 虎……と話してる?呆気にとらわれる私を尻目にライアン様はヘンリを虎?犬?に乗せる。


「さあ行きなさい!!ここは私とティティに任せてちょうだい!!」


 よくわからないけれどガレンを護衛にしてライアン様とヘンリとリオナとカヤがホールを出れるよう道をつくる。


「それにしても倒れたのはヘンリだけなのね。ライアンも倒れて土下座なのかと思った」


 リーナが呟く。後半は聞き取れなかったけれど。


「悪い魔女の薬は飲む気だったみたいだけどね」

「まあ、チャレンジャーね」

「嫌になるけどね。ラルフ殿が薬を飲んでも悪い魔女を罰せられないしって」


 それを聞いて昔のことを思い出してゾッとした。ライアン様は昔は全然話さない方だったそうだ。ただの辺境伯令嬢だった私が薬を届けに来た時ライアン様はそれを拒んだ。


 お荷物の自分なんて死んだ方がましだと。人に移る病かどうかも分からない中家族と会うことは制限されたまに会う時には救う手立てが見つからないことを謝られたと言う。


『部屋の窓から自分とは関係なく皆が普通に生きていくことを見るのが辛かった。だけど今は未知の病で父が亡くなり国民たちも大勢亡くなっているという。あなたのお陰で病が終息したそうだ。それは王族として感謝している。だけど王族として国民の苦しみを窓越しでただ見ているだけで兄のように国民のために奮闘することもできない。王族として役目を果たせない。私には何も求められていない。そのような私などこのまま死んだ方が――――』


 私は言葉を遮るように薬をライアン様の口に突っ込んだ。辺境伯でも大勢の民たちが死にそれを近くで見ていた私には聞いていられない言葉だったから。


 屈強な父である辺境伯に似ず小心者だった私にしては思いきった行動だったけれどあの時言ったことは我ながらよく言ったと思った。


『私に守らせてください!!私、立派な騎士になって貴方を守ります!!ね、私の護衛対象、それが貴方のお役目です!!』


 なのに何故私は守りたい人に踏みつけて欲しいだの罵って欲しいだの求められているのだろう。さっぱりわからない。


 


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