王女、悪い魔女の薬について考える
「でもそれじゃあマリアローゼを捕まえるのは簡単になったってことね」
「リーナ様、そう簡単にはいかないかもしれません」
「あら、どうして?」
「他人になり代わる薬がありますから」
他人になり代わる薬。それはマリアローゼが悪い魔女にもらったレシピで作る薬。単に少しだけ他人の姿に代わるわけではなく他人の精神と自分の精神が入れ替わって元に戻す薬を飲まないと一生そのままというものだそうだ。
『でもとっても難しい薬よ。今まで話したように私たちが作る薬は小さな感情でも吸い取って別の薬に変化させてしまうの。混じり気なしでただ真っ直ぐ相手に成り代わりたい、今までの身体と人生に何の未練もなくて新しいこの人に成り代わるんだ、それだけを考えてお互いが同意して薬を飲まないと成り代わらない。あの娘が誰に成り代わろうとするかはわからないけど私みたいに熟練の魔女じゃなきゃそう上手くはいかないわ』
悪い魔女はそう言っていた。どうやらよくありそうな無理やり相手の身体を乗っ取るようなものではないらしいけれどそんなことができるなんて恐ろしい薬を作るものだわ。
悪い魔女はこうも言っていた。
『私たちの作る薬はとても繊細よ、ガラス玉のようにね。そして何色にも染まれる小さな赤ん坊のよう。薬を飲んだ時に意図した効果が出たら成功。だからって周りの環境によってその効果を変化させたら失敗ってわけじゃないわ。困ったことになるけどね。小さな赤ん坊だもの。ちょっとしたきっかけで人生が変わるなんて当たり前じゃない。私たち長く生きる魔女たちはそんな考え。最近の若い子は気が短いわよね』
と。話の流れ的に悪い魔女が長生きなのは誰かに成り代わったりとかそういうヤバい薬を飲んでるからだろうと予想できるからやっぱり悪い魔女っていうのはヤバい魔女だなと思った。そして話はこう続いた。
『だけど私昔マールスのお姫様と知り合いになったことがあったのよ。マールスの女神の愛し子は歌に神聖力を込めたりして癒しや浄化を行う。その子は涙に元々神聖力が込められて流れるという子でね。国を守りたいこの人を守りたい救いたい、それだけを想って涙を流していた。神聖力と薬は違うけれど何か通じるものがあって彼女に聞いてみたのよ。褒められたいとか対価を求めたいとか雑念はないのかって。そしたらそんなことは考えてみたことすらないって言われたわ。純粋なのよ、根っからのね。でも彼女は答えた。考えたことはなかったけれど救った先に救った相手の喜ぶ笑顔と感謝の言葉が思い浮かんだからきっと感謝されたいという思いはあるかもしれない。けど救って助かったところが見たい、助けたいということだからやっぱり同じかもしれないわってね』
雑念があっても願いの主軸がブレなければ問題ない、ということみたい。恐らくマリアローゼの成り代わりは上手くいかないだろうけどその代わりどんな効果の薬になるかはわからない。
「とにかくマリアローゼが使う薬は惚れ薬と成り代わりの薬ということね」
「その惚れ薬はまだ完成してないんだな?」
「うん。僕や他の男子生徒に手に入れたくてどうしようもないものがないか聞いてまわっているようだね。焦ってきているのか以前よりわかりやすく聞いていて僕たち以外にも不審に思われてるよ」
「成り代わり……ティティ、そういえばこの前マリアローゼ様に話しかけられてなかった?」
「え?あー、そういえば」
「えー!!ティティ!!悪い魔女に何をされたんだい!!」
ライアンがティティに掴みかかってティティはため息をついてからその手を払いのけた。
「何もされてないですよ。ただ、私は背が高くて体格も良いから女性らしい華奢な身体に憧れませんかと聞かれたから華奢な身体では殿下を守れないから特に憧れることはないと答えただけ」
「ティティ!!守ってくれる!?」
「ええ」
「わー!!ティティはやっぱりかっこいいね!!」
ん?もしかして……。そう思っているとジェイズと目が合った。あら、以心伝心だわ。




