王女、情報を手に入れる
「あの王様の場合はこのお姉さんとは違ってワインに薬を混ぜて飲ませようとしたの。王様の弟からの依頼で死に至る薬をって言われたんだけど」
「王弟……!?あの方が……」
「そう。だけど私悪い魔女だから私がしたいようにするのよね。王弟に薬を渡した後私は王様に会いに行ったのだけど王様があんまり私のタイプのイケメンだったから王様と取引きしたの」
悪い魔女によると話はこうだ。王弟は悪い魔女に国王暗殺の呪い薬を依頼。悪い魔女はその暗殺するための呪い薬を王弟に渡した後国王の元へ行ったが国王が自分のタイプの男だったため取引をした。
その取引とは、国王は悪い魔女に呪いの進行状況を遅らせる薬に変化させ、2年後に呪いを解くことを約束させ、その対価として国王は悪い魔女にキスをした。悪い魔女の誤算は国王が呪いの薬を口移しで悪い魔女に飲ませたこと。国王の誤算は悪い魔女が王弟に薬を渡した後王弟の負の感情が混じり薬の効果が既に変化していて悪い魔女が簡単に解ける呪いではなくなってしまったこと。
「何故国王は薬を飲んだの?そんな取引をしなくても王弟を捕らえれば良かっただけじゃ」
「息子に対する試練だそうよ。獣人の国は王位継承権を持つ者の中で試練を乗り越えないと国王になれないのだそうね。その試練に挑めるのは人生で一度だけ。王弟は既に敗れているのだけど王弟を支持する国民は多いのですって。だから王弟を排除し王子に王弟派を一掃するという試練を与えるため呪いの薬を飲んだ」
「獣人の国の国王……お馬鹿なのかしら」
「私はキュンとしちゃったわ」
「あ、そう」
「陛下……」
私にはよくわからなかったけどガレンは目を輝かせている。そういえば乙女ゲームの獣人の国の王子を始めとした獣人の攻略対象者は基本無茶苦茶な性格だった。
「というわけで私は王様と運命共同体になってしまったってわけ。悪い魔女は自分のしたいようにするものだけどまだ死にたくないのよね。いい男がいたら一緒に死にたいの。獣人の王様は良いかなと思ったけどやっぱり違ったし。まだ私の理想のいい男がいるはずなのよ」
「ふむ。悪い魔女は恋に生きてるのね」
「そうよ。協力してくれる?」
悪い魔女は自分本意な生き物だけど協力すればマリアローゼを捕まえられるし獣人の国の国王も救える。しかも私の本当の姿も知れる。これが重要だわ。あ、でもボンキュッボンじゃないのか。
「ジェイズ、ボンキュッボンじゃないそうだけど私の本当の姿見たいかしら」
「どのような姿でもお慕いしています」
「ジェイズ!!良いわ悪い魔女、協力するわ」
「交渉成立ね。それにしてもあなた良い悪い魔女になりそうなのに残念だわ」
「悪い魔女にはならないわ」
「そうよね。だって見えるもの。悪い魔女でも未来視はできないのに不思議」
「へ?何が見えるって?」
「ふふ、何でもないわ」
とにかくこれで解決だと思っていたのだけど――――。
「マリアローゼ?私が利用してるって?あらまあ、なんでそんな話になってるのかしら」
「え、違うの?」
情報源のガレンを見ると首を傾げている。
「むしろ利用されてるのは私の方だわ。あの娘勝手に私の弟子だとか自分に何かあったら私が容赦しないだとか吹聴してるのよ」
「弟子じゃないのね?」
「違うわよ」
「じゃあ簡単に捕まえられそうかしら」
「それはどうかしら。私の薬とレシピをいくつかあげてるからおいかけっこするならそう簡単には捕まえられないと思うわよ」
「弟子じゃないんじゃないの!?」
「弟子でなくたって薬もレシピも売るわよ。悪い魔女だってお金がいるのよ。貴族令嬢に大金を渡されたら売るに決まってるじゃない」
世間知らずねとため息をつく悪い魔女。
「リーナ様、マリアローゼが何の薬を持っているかを知ることができれば対策がとれるかと」
「そうね。じゃあ悪い魔女」
「対価がいるわ」
「まだ何もいってないじゃない。それに対価?さっきはそんなこと」
「さっきのは交渉でどっちにも利があるもの。それとこれとは話が別よ」
むー。悪い魔女ってケチなのね。
「いくらいるわけ?」
「そうねー……お金はいくらあっても良いのだけどでも今回は別のもので取引してあげる。あなた」
悪い魔女がそう言ってジェイズを指差す。私は慌ててその指を叩く。
「ダメダメ!!ジェイズは私のものよ!!」
「せっかちねぇ。そこのお兄さんとあなたで私の実験に付き合ってくれれば良いって話よ。マリアローゼを捕まえて時間ができたらゆっくり実験に付き合ってちょうだい」
「断る」
「ジェイズは駄目よ」
ジェイズと私の声が重なる。
「ちなみに良い魔女じゃ作れない心の声が聞こえるようにする薬の最終テストよ。その名も相手の心を丸裸!!イヤン薬」
「やるわ!!」
「リーナ様!?」
ふふふ、これでジェイズがどうしたら私に恋してくれるのかわかるはず。
こうして私たちはマリアローゼに渡った薬とレシピの情報を得たのだった。




