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王女、謎が解ける


「わあ!!見てジェイズ!!港町は賑やかね!!」

「そうですねリーナ様。私から離れないでくださいね」


 悪い魔女を捕らえるために港町にやって来た。ここは辺境伯領の隣町、セルザータ。賑やかな市場に興奮して走ろうとした私はジェイズに捕まえられる。


「まあ。悪い魔女を捕まえる前に私が捕まってしまったわ。ふふふ」

「悪い魔女も私が捕らえます」

「絶対駄目。ジェイズが捕まえて良いのは私だけよ」

「リーナ様……」

「そこのかっこいいお兄さん。この後一緒に遊びましょう?」


 なんですって!?ジェイズは……ってあら?ジェイズが声をかけられたと思ったら通りを歩いていた男の人を美女がナンパをしていた。


「あっ!!」

「リーナ様、どうされました?」

「あれ、見て。あ、いや!!やっぱり見ちゃだめ!!」


 だってあのナンパ美女は未来視で見た悪い魔女その人なんだもの。


 そう話していると悪い魔女が私たちに気付いてしまってこっちに歩いてくる。


「あらーそこのお兄さんもかっこいいわね」

「駄目ー!!」


 私はジェイズの前に立ち両手を広げる。


「あらまあ小さな姿の大人のお姉さん。お兄さんは彼氏かしら?」

「彼氏!!ふふふん、そう見えるかしら」

「見えるわよー」

「リーナ様、お下がりください」

「はにゃん!?」


 ジェイズに抱き上げられて横に退かされる。私を退かしたジェイズは剣を悪い魔女の首に突き立てる。


「お前、この御方のことを何故知っている」

「あら、警戒されちゃったわ。なんのことかしら。私はこのお姉さんが誰なのかは知らないわよ」

「誰なのかは、だと?」


 キレてるジェイズ、かっこいいわ。


「ふふふ」

「あの、リーナ様、とりあえずジェイズ殿を止めてもらった方が……」

「そ、そうですよリーナ様っ」


 空気になっていたガレンとカヤに言われた私は周りがざわついていることに気付いた。それはそうだ。いきなり市場で剣を出したら騒ぎになるわよね。


「ジェイズ、止めなさい」

「はい」


 とにかく港町で悪い魔女がジェイズに言い寄る未来は回避できたからジェイズを止める。


「ジェイズ、何でいきなり斬りかかるのよ」

「リーナ様」


 ジェイズはしゃがむと私の耳元で囁く。


「あの者はリーナ様が大人だと気付きました」

「そうなの?」

「リーナ様、先程のあの者の言葉を思い出してください」


 そう言われて私は悪い魔女の言葉を思い出す。


『小さな姿の大人のお姉さん。お兄さんは彼氏かしら?』


「彼氏に見えたって!!」

「リーナ様、その前です」


 ジェイズに苦笑いで言われもう一度思い出す。


『小さな姿の大人のお姉さん。お兄さんは彼氏かしら?』


「小さな姿の大人のお姉さん!!」

「そうです」

「え!!彼女には私が大人に見えるってこと!?」

「そのようです」

「なんで!?」

「ですからそれを聞き出そうとしていたのです」

「なるほど!!」


 私は彼女か悪い魔女だとみんなに話してガレンに悪い魔女を捕らえさせ、場所を移動することにした。カヤに案内させて人通りの少ない裏路地に入る。


「こんなにあっさり捕まるなんて。リーナ様、本当にこの人が悪い魔女なのですか?」

「ええ、それは間違いないわ」


 ガレンは絶対に捕らえようとしていた悪い魔女のはずが飄々とした悪い魔女に戸惑っている。


「あなたは獣人ね。獣人の国の王様の呪いのことかしら」


 その言葉にガレンは後ろに飛び跳ねて警戒する。


「何故獣人だと?普通の人間は獣人だと気付くはずはない」

「普通の人間はでしょ?私悪い魔女だもの。ふふふ」

「陛下の呪いを解け」

「んーそれはちょっと難しいわね。少なくとも今すぐは無理」

「どういう意味だ」

「そこのお姉さんと一緒よ」


 私を指差されて首をかしげる。


「獣人の国の王様の呪いもお姉さんにかかってる呪い「ちょっと!!私に呪いがかかってるって!?」まあまあ。とにかく両方とも元々は私が作った呪いの薬だったけどいろんな人のいろんな感情が混じり入ってしまったの」


 どういうこと!?私が成長しないのは呪い?ジェイズを見ると私が冷静になる程ジェイズの顔が青ざめていた。


「リーナ様に呪いが……?申し訳ございませんリーナ様」

「だ、大丈夫よ!!」


 苦し気で膝をついているジェイズに10年前転生した記憶を思い出したあの日のことが思い出される。命をもって償うと言い出したあの日だ。あの日と同じ顔をするジェイズを立ち上がらせる。


「とにかく悪い魔女に話を聞きましょう。私は悪い魔女に呪われた記憶なんてないもの」

「そりゃあなたの前であなたを呪いますなんて言って呪ってなんていないもの」

「じゃあどうやって……?」

「そこの良い魔女さん」

「えっ、私!?」


 急に話を振られたカヤは何故かファイティングポーズをする。


「い、良い魔女の掟により悪い魔女は成敗します!!」

「ひよっこの良い魔女なんかに成敗されるわけないじゃない。そんなことより良い魔女が実験する時には被験者が必要でしょ」

「き、危険な実験は人間相手にしません!!」

「そうでしょう。私も同じよ。危険な実験は魔物相手にするものよね」

「ま、魔物相手!?しませんけど!!」

「あらそう。私は魔物相手に実験するのよ」

「……つまり?」


 話が何となく見えてきたような見えてこないような。


「私が作った呪いの薬を飲ませた魔物がどこかの国で戦った相手に呪いをかけたのよ。その方法はそうね、例えば噛み付かれた時に呪いが移るとか。でも厄介なことにその魔物はその前に他の人間と戦って負の感情を与えられ呪いは複雑に変化している……ま、そんなところね。心当たりは?」

「……あるわね。魔物相手に弓矢の練習をしていて」


 あれは弓矢の練習を始めたばかりの頃魔物に噛み付かれたことがあった。すぐにジェイズが跳んできて手当てをしたから数日ですぐに傷痕すらなくなったのだ。


 ジェイズを見ると再び顔が青ざめていて私は慌ててジェイズを宥める。


「おーほほほほ。長年の謎が解けたわね!!これで呪いが解ければ私はボンキュッボンな美女に大変身!!ジェイズ、方向性がわかったのだから大進歩よ!!呪いを解きましょう!!」

「リーナ様……。はい、絶対に呪いを解きます」

「まあ、残念だけどボンキュッボンな美女にはならないけどねー」

「は!?」


 私は悪い魔女に詰め寄る。


「そういえば何であなた私が大人だってわかるの」

「さっき真実の秘薬を飲んだから。効果は2時間。その間誰かの真実の姿が見れるという薬よ」

「真実の姿……私にかかってる呪いっていったい」

「成長を止める呪いじゃないわ。元々は単なる幻影、他人から見て子供の姿に見える呪いよ。それが本人も子供に見える、感覚や感触も子供のままっていう呪いに変化しているの。だから真実の姿が見えるとあなたは普通の大人のお姉さん」

「ど、どんな姿に……?」

「ふふ、取引しましょう」

「取引?」

「そう。ちょっと困ったことがあってね。協力してくれたら真実の姿を見る薬をあげる。自分で見た方が良いでしょ。それに獣人の国の王様の呪いも解いてあげる」

「どういうことだ。解けないんじゃないのか?」

「解けないんじゃなくて今すぐは無理というだけ。それに私が困ってるのは獣人の国の王様が原因なの。いいえ、彼の呪いを解くこと自体に協力してほしいのよ」


 悪い魔女は悩ましげにため息をつく。


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