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王女、珍しく動揺する


「ねえガレン、少しだけ耳を触っても良いかしら」

「リーナ様!?」


 とある日公爵家に今度は普通にやって来たガレンにそう言うとジェイズが慌てだした。


「リーナ様は獣人がお好きではないのでは?」

「好きじゃないとは言ってないわよ?」

「そんな!!」


 この世の終わりかと言うくらい青ざめるジェイズに私も驚く。


「そんなに……?」

「リーナ様……私は獣人にはなれません……スーパーハイスペック失格です」

「そりゃあ種族は変えられないわ!!全然失格じゃないわよ!!」

「いや、修行すればなんとか……」

「修行してどうにかなるものじゃないわ!!」


 どうしちゃったのかしらジェイズ!!でも国を出てから色んなジェイズの顔を見れて幸せ……いや、だけどジェイズを不幸にしたいわけじゃない。


「ジェイズ!!私は人間が好きだわ!!」

「本当ですか!!」

「ええ、獣人は……ちょっとモフりたかっただけ」

「モフりたいとは?」

「もふもふした生き物を撫で回したいみたいな意味よ」

「……生き物でなければいけませんか?人形とか」

「ぬいぐるみでも良いわね」

「わかりました」

「ジェイズ……?」


 何がわかったのかしら。


「あのー……そろそろ僕の話を聞いてもらえませんか?」


 ガレンが戸惑った顔で声をかけてきてハッとする。


「ふふふん、ガレンをモフるのはやめておくわ。私のジェイズが嫉妬しちゃうもの」

「ええ、そうしていただけると。獣人が異性に触るのは家族か恋人なのです」

「まあ、そうなのね。異性じゃなければ良いの?」

「はい、女性であれば構わないです。我が国にいらした際は僕の妹をぜひ」

「まあ良いの?ちなみに犬種は?」

「ポメラニアンです」

「乗ったわ。ジェイズ、女の子なら良いわよね」

「はい」


 ジェイズが元気になって良かったわ。こうしたことの繰り返しで後にジェイズがキャラ変することになるなんてこの時の私には思いつきもしなかった。


「あのーもう話を進めてよろしいですかね?」

「ええ、よろしくってよ!!」


 今日公爵家に集まるのはガレンの他にティティとカヤだ。ヘンリとベルは用事があって後から来る。ティティとカヤももうすぐ来る。ガレンは皆が集まる前に話したいことがあると言って時間より早めに来たのだ。


「では、先日はあまりお話しできなかったので僕のことを話しておきたかったのです」


 悪い魔女がどこかで見聞きしているかもしれないというから外は止めて客間にいる私たち。ガレンは自分の犬の耳と尻尾を消す。


「これが人間の姿で、そしてこれが犬の姿です」


 ポンっという音と共に小さなパピヨンの姿になった。


「この姿では他の姿の時より嗅覚や聴覚が良くなります。普段から普通の人間よりも嗅覚や聴覚は優れているのですが」


 そしてもう一度耳と尻尾が犬の姿に戻ってソファーに座るガレン。


「獣人は基本的に今の僕のような姿で過ごします。この姿が基本形で、耳と尻尾を消すだけなら少しの力で変化できるのですが犬の姿になる時と戻る時はそれなりの力が必要になります」

「力というのは魔力ということですか?」


 ジェイズが問う。私はこの辺りの話は乙女ゲームの中に出てきたから知っている。


「魔力とは違います。獣人は魔力を持たないのです。ただ力とだけ言います。人間が運動するとお腹が空くのと同じ様に獣人は変化する時にもエネルギーを消費しお腹が空くのです」

「お腹が空いているのかしら。お茶請けのお菓子をどうぞ?」

「ありがとうございます。では失礼して」


 もぐもぐとクッキーを食べるガレンを見ながら私もクッキーを食べる。学園で料理人をしているのは賄いが目的なのかもしれないわね。それを尋ねるとガレンは肯定した。


「それもあります。僕は国の王子からの命で国王を呪った悪い魔女を追ってこの国に辿り着きました。」

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