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護衛騎士の愛は重い(sideジェイズ)


 俺が頭を撫でて嬉しそうにはにかむリーナ様、可愛い。


 俺がリーナ様の護衛になったのは14才の頃だった。神官長をしていた親に期待され才能もあった俺は最年少で正騎士になり親の推薦でリーナ様の護衛騎士の役目を拝命した。


 ヤメルト王国の王族は神の末裔でその中で神の力を持つ者が国を統べる。王族はある程度の年齢まで皆瞳の色を布で覆って過ごす。王族は皆銀や白髪なのだが神の力を持つ者は更に瞳の色が白いのだ。何かあって神の力を持つ者が襲われでもすれば国は滅びる。神を敬い畏れる国民は後宮の妃を含めてその慣例に従い自らの子が神の力を持たなくとも目を隠す。


 それなのに愚かな事件が起きた。今から10年前、リーナ様が毒に倒れた。神を冒涜するような民は現れないと思われても神の力を持つ者を失うわけにはいかないと警備は万全、そのはずだったはずが遅延性無味無臭の毒によってリーナ様が生死の境を彷徨うことになった。買収されていたという毒味役はその毒で死に誰に命じられたのかはわからなかった。


 神を冒涜するような民はいない、神官家出身の俺には当然のその考えは正騎士になった際覆った。そこで初めて父がリーナ様の護衛に俺を推薦した理由がわかった。


 子供の俺に知らされていなかったがヤメルト王国は腐敗していた。信心深い妃や役人、騎士はいる。だけどそうでない者の多いこと。あろうことか国王陛下すら宰相の傀儡だと嗤われる始末。神の末裔であり神の力を持つ陛下になんたることだと父に抗議したこともある。


 そんな状況、リーナ様を狙った者を特定することはできなかった。俺は納得できなかったが陛下の神の力は人の感情を色で知ることのみだそうだ。不満を感じている者を見ることはできてリーナ様から遠ざけることはできても反撃する力はない。陛下は幼い頃から母君を人質に取られ反抗する術を持つことを禁じられていたそうだ。


 その腐った国をどうしたら良いか、むしろ見捨てて勝手に滅んでも良いのではないかと思う俺に毒から生還し逞しく成長されたリーナ様が仰った。国を出るからついてきて欲しいと。俺はリーナ様が国を見捨てる選択をしたのだと思っても敬愛するリーナ様についていこうと思った。


 リーナ様が弓矢などを使って戦う術を身に付けることに反対していた。小さく白い可愛らしい手が傷付く度に発狂しそうになるのを抑えながらリーナ様のなさることを見守ってきた俺。リーナ様の敵は全て排除する、そう10年前に決めた俺はリーナ様が自らご自身を傷付けようとすることにハラハラヒヤヒヤする思いだったがリーナ様がレベルが上がったわとよくわからないことを仰って嬉しそうになさるから止めさせることができなかったのだ。


 戦う術を身に付けていたのは国を捨てるためだったのかと納得した俺だったが何だか違うと思ったのは国を出る直前のことだ。


 マリアさまが女神メアリーナ様の元に旅立ったあと、リーナ様は陛下にはっきり伝えたのだ。私の一番の目標はジェイズの奥さんになることですが女王にはなって差し上げますからお父様も心置きなく男神デルダ様の元に旅立ってお母様と再会したら良いですよと。


 俺の奥さん!!あの愛らしく天使のようなリーナ様が俺の奥さんだって。いつも好きだと言ってくれるのは陛下やマリア様やトラコ様に伝えているものと同じ親愛の意味ではなかったのか。俺も好きだと思った。


 リーナ様はどうやら俺が主に対して慕っているだけだと思っているようだがとんでもない。いや、とんでもない感情を抱いているのか。神の末裔であり神の力を持つ神聖な存在リーナ様に対してあるまじき感情だ。はっきり言って抱きたい。……と言ったらプライベートではのほほんとしている陛下が噎せるくらい驚かれた。


 君、巷でド真面目生真面目だと言われてるんだよーリーナもそう思ってるよーと仰られたが俺が気にすべきはリーナ様に変態だと幻滅されないかどうかだけだ。


 10年前の毒の影響かその際神聖力が増幅したことが原因なのか、リーナ様のお姿は10年前のまま。リーナ様は貴族でありがちな年の差結婚を気にされていることがあった。年寄りが後妻に成人前の幼い子供を娶る縁談の話を聞いて最低だ変態だと仰っていたのだ。


 俺にとってはリーナ様は年の差5才で許容範囲だと思っているが見た目はそうではない。リーナ様に蔑まれた目で見られたら生きていけないと陛下ではなくマリア様に懺悔を聞いてもらった。マリア様は荒ぶる俺の感情を歌で静めてくださった。マリア様は神聖力を歌に変えて民に加護を与える歌姫と呼ばれており、平民を中心に慕われていた。


 ところで、そう、リーナ様は女王になると仰ったのだ。つまりそれは国を捨てるわけではないのだ。考えれば国には愚かな者だけではない。陛下やマリア様、リーナ様を敬い慕う者たちを見捨てるはずがないのだ、リーナ様は。


 では一体何故今国を出て行くのか、それをリーナ様に訊ねたのだがリーナ様から答えはまだ聞くことができていない。でも良いのだ。リーナ様は俺の愛らしい天使なのだから。




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